ワーホリで見つけよう!あなただけの「タグ」〜台湾ワーホリから中国・深センでドローン事業を立ち上げた川ノ上和文さん〜

これからワーホリに挑戦する方必見!
川ノ上 和文

xyZing.innovation(翼彩創新科技(深圳)有限公司)CEOの川ノ上和文さんが、寿命100年時代のキャリアを高める"戦略的ワーホリ論"について語る連載の第9回。

最終回となる今回は、これからワーホリに挑戦する方必見! ワーホリを単なる"休暇"で終わらせないための心構えについて伺います。その後の海外キャリアにつなげるためには「自分がやりたいこと」だけでは不十分?

「ワーホリまでの1年計画」を立てよう

AOL

- これからワーホリを目指す場合は、まずはどんな準備から始めたらよいでしょうか?

川ノ上:現地の言語が全くできない状態からワーホリプランを作るのであれば、1年くらいの準備期間をもつと良いのではないでしょうか。

もし私が今から中国語や英語圏以外の国に行くとしても、行く前にある程度の言語スキルを身につけておきたいので、十分な準備期間を取るだろうなと思います。

ただ1年という期間は思っている以上に短いようで長いですから、準備期間中のカギになるのは「モチベーション管理」ですね。

その時にやってみてほしいのが、第3弾でご紹介したように「現地で言語を使うシーンをイメージする」こと。

そうすると現地へ行く理由がどんどん明確になっていきますし、その国でやりたいこともたくさんイメージできるようになります。

もし「ワーホリには挑戦してみたいけれど行き先を決められない」という人がいたら、「"自分との対話"の後で行き先を決める」のも一つの方法だと思います。

-なるほど、自分に合う意外な場所を見つけられるかもしれませんよね。

川ノ上:はい。アブローダーズのWebサイトや、ワーホリをテーマにしたこの連載を読んでいる方々は、もともと"海外で活躍すること"に興味を持っているはずですよね。しかも旅行にとどまらず「現地で何かしてみたい」と考えている。

そういう思いをもった上で、ワーホリという仕組みを活用するなら、やはり「自分との対話(第7回で紹介)」が欠かせません。

まず、どうして自分は海外に出たいのか、どんなことをしてみたいと思っているのか等、海外に興味をもったきっかけを自分の中で探してみて、頭に浮かんできたキーワードを捕まえてみるんです。

ある人は誰かにもらった言葉が、またある人は「映画で見たシーンが良かったから」というきっかけだったかもしれない。

自分が海外に関心を持った原体験を思い出すためにも、まずはじっくり紐解いて行くような気持ちで、自分を客観的に深掘りしてみると良いと思います。

そうして海外でできること・やってみたいことが少しずつ言語化できてきたら、次に現在日本とワーホリ協定を結ぶ19カ国(2017年9月現在)をざっと眺めてみてください。

きっと「あ、この国いいかも」と反応するところがあると思います。

そうしたら今度は「どんなところに反応したのかな?」「その国の特徴はなんだろう?」とさらに詳しく調べながら、ワーホリへ行く理由と紐づけていけばいいんです。

-感覚を研ぎ澄まして自分自身を観察する感じですね。とても楽しそうです。

川ノ上:自分の"関心の根源"というのは、どこかで立ち止まって考えてみないと、意外と見えてこないものです。

そのままだと流れていってしまいますし、普段生活する中ではなかなか見えてこないですからね。

あなたはワーホリ先に「何を持っていけるか」

川ノ上 和文

-川ノ上さんのように、"自分の志向"と"その後のキャリア"を結びつけていくためにはどんなことを心がけたらいいでしょう?

川ノ上:先ほどの「自分が何をやりたいか」を少し発展させて、「自分がその国に何を持っていけるか」を考えてみると良いと思います。

そもそもワーホリをはじめ各種ビザという形で外国人の滞在を許可するのは、「現地にない価値」を持ち込んでくれることを期待しているから。

現地の人たちが知りたい情報や知識、実務的な技能を持つ人材としてポジションづくりができると、海外キャリアはより一層築きやすくなります。

「自分が持っていけるもの」を考える時には、大きく分けて"日本人として"と"個人として"、この2つの視点で考えてみると良いと思います。

まず海外経験のある方はお分かりいただけると思いますが、日本を離れて新しい環境に身を置くと、"日本人であること"を意識させられる機会がすごく増えます。

日本にいる時には"日本人であること"が当たり前すぎて、意識する機会があまりにも少ないだけなのですが。

なので渡航前には、現地で日本がどんなふうに見えているのかをあらかじめリサーチしておくと良いですよ。

良くも悪くも「日本という環境は特殊なんだ」と知ることが大切です。

第8回でも取り上げた「異文化理解力」にあるように、コミュニケーションはもちろん、ある言動に対する感じ方や考え方まで異なることがよくあります。

日本の環境で育った自分の価値観や考え方をまず自身が理解し、それらが現地ではどう働く可能性があるかについても、イメージも持っておくといいでしょうね。

-「現地から日本がどう見えているか」は盲点かもしれません。

川ノ上:そうなんです。大半の人はまず「国名 観光」のように「日本から見たワーホリ先」について検索しますよね。私もこれは欠かせないと思います。

でもぜひ調べてほしいのが「現地で日本はどうやって紹介されているか」です。

なぜなら、現地目線で見た日本を知ると"日本人として"の独自性を出すときにとても役立つから。現地語ができる人は現地語で調べられるとなお良いですよ。

例えば「日本の観光情報」、ここには意外な発見が詰まっています。私の場合は「台湾における大阪の人気」でした。

台湾で日本旅行が人気だということは知っていたのですが、少し掘り下げてインバウンド産業のデータを調べて行くと、東京に比べ大阪のほうがリピート率が高いことが分かったんです。

理由を考えてみると、大阪は行くたびに違う魅力が味わえるからじゃないかなと。

大阪が誇るコンテンツといえばおばちゃんを始めとした「人」ですから(笑)、同じ場所に行ったとしても出会う人が変われば、まったく新しい旅行体験ができる。

文化が生き物であることを肌で感じられる点で、大阪に価値を感じる人が多いのでないかと思ったんです。

実際に、台湾にいた頃には「大阪弁講座」を開いたこともあります。

現地で開催されていた日本語・中国語の言語交流サークルに参加した時に「大阪出身です」と言ったら、「大阪文化は人気がありそうだから大阪弁講座をやってよ!」と言われて。

これは、日本人であることに加えて大阪出身という私個人の特徴が、現地の意外なニーズにうまくマッチした例だと思います。

-"日本人として"に"個人として"が掛け合わさると、唯一の強みが見つかるんですね。

川ノ上:はい。分かりやすいイメージでいうと「自分にキーワードのタグをつける」感じでしょうか。

ワーホリに限らず海外でやりたいことを実際にやってみたとして、その活動がWeb上で紹介されたらどんなキーワードで検索されるかをイメージしてみるんです。

例えば「国名 分野」で検索してトップ圏内に表示されるようなポジションがとれたなら、その領域において独自性ある活動をしていることの証明になりますからね。

リアルでの活動をネット上でも発信していけば、自分の活動に興味を持ってくれる人との接点を増やすことができます。

私の場合は、「深セン ドローン」でウェブ検索すると1ページ目に表示されるようになりました。

当初は日本語で書かれた関連情報が少なかったこともあって上位圏内にいたのですが、「深セン ドローン」が注目され始めて、次第に検索ボリュームが増えていったので、その分野で動いている人物としての認知度が徐々にできてきたと思います。

それに合わせて、私が発信する情報から私自身に興味を持っていただく機会も増えました。

私は深センという街が非常に刺激のある面白い場所だと思っているので、今後も「深セン ◯◯◯」はドローンに限らず発掘していくつもりです。EndFragment

狙い目は新たなワーホリ協定締結国?

川ノ上 和文

※深セン地下鉄構内の広告「新境地を抱きしめよう」

-もし今あらためてワーホリにチャレンジできるとしたら、どの国に行ってみたいですか?

川ノ上:2016~2017年にかけてワーホリ協定が結ばれたスロバキア・オーストリア・ハンガリー等の東欧諸国や、南米初のワーホリ協定国・アルゼンチンは気になるところですね。

きっとこうした国々でワーホリを体験した日本人はまだ少ないでしょうから、こうした国々をワーホリ先として考えていくのは良いんじゃないかなと思います。

試しにスロバキアのワーホリ情報をウェブ検索してみましたが、体験記のようなものは本当に少ないです。こういう状況は逆にチャンスですよね。

「情報が無い=自分が発信できる領域が多い」ということなので。

そういう優位性にスポットを当ててまずはワーホリ先を決めてしまって、後から「自分のポジションをどう作って行くか」をイメージするのも良いと思います。

東欧諸国やアルゼンチンにも大学の日本語科や日本語サークルがあるかもしれませんし、そうした場で自分はどんなことができそうか、ぜひイメージしてもらいたいなと思います。

-川ノ上さんご自身の今後のプランは?

川ノ上:あと数年は深センが面白いだろうと思うので、開拓の余地がある間はここにいようと思っています。

長期的なプランについては、ざっくりと「こういうふうにしたいな」という思いはありますが、実際のところきっちり決めているわけではありません。

「計画は変化に追いつかない」ですから(笑)。今取り組んでいることがいつ、どこで繋がるかはまだ私にも分かりません。

でも一瞬一瞬の変化をしっかりキャッチして進んでいければ、良いタイミングで人やイベントに出会って、一気に動き出すと思います。

今の状況も、3年後くらいに振り返ってみたら「ちゃんとつながってるな」って思うんでしょうね。

まずは深センという地で事業の基盤を作ること、その事業を深センの成長とともに大きくしていくこと。

そのために深センをよく知り、信頼できる現地ネットワークを開拓し、常に行動しタイミングを逃さないようにしたいきたいと思います。

私の取組は、まだまだ実験段階で試行錯誤しながら日々進んでいます。変化の早い深センという都市と一緒に、走りながら考えていきたいと思います。

このコラムをご覧になって「深セン」に興味を持たれた方は是非一度訪れてみてください。もちろん私の深センへの道を繋いでくれた「台湾ワーホリ」もオススメです!

Ambassadorのプロフィール

川ノ上 和文/Kazufumi Kawanoue [endif]

xyZing.innovation(翼彩創新科技(深圳)有限公司)CEO [endif]

大阪出身、中国・深セン在住。xyZing.innovation(エクサイジング イノベーション )CEO/総経理。深センを軸としたアジアxMICE(Meetings,Incentives, Conferences,Events)の事業開発をてがける。高校卒業後、東洋医学に関心を持ち北京留学。その後留学支援会社での講座企画、上海での日系整体院勤務、東京での中国語教育事業立上げ、台湾ワーキングホリデーを利用した市場調査業務に従事。新興国や途上国における都市成長やテクノロジーの社会浸透、人間の思考や創造力の開発に関心が高い。現在、ドローン活用の思考枠を拡げるための場として深センでアジアドローンフォーラムの開催準備中。

注目記事