2018春季生活闘争方針決定に向けてー討議ポイント

2018春季生活闘争の意義とは?
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「継続」は停滞ではない 新しい連合運動で前進を

「基本構想」の提起を受け、職場や地域で、2018春季生活闘争の方針決定に向けた議論が行われる。 そのポイントは何か。相原事務局長に聞いた。

賃上げの重要性を再確認しよう

─2018春季生活闘争の意義とは?

連合は、基本構想で、月例賃金にこだわり、すべての労働者の「底上げ・底支え」「格差是正」の取り組みを継続していくことを提起した。「継続」とは、2017闘争と同様の取り組みを行えばよいということではない。停滞に陥ることなく、新しい運動を展開していこうという意味だ。そのために、賃上げの重要性を再確認することから、議論を始めてほしい。社会を構成する働く者全員で経済を支えていくには、業種、企業規模、雇用形態、男性・女性にかかわらず、月例賃金は然るべき水準が必要。そして、格差の放置は働く者全体に悪影響を及ぼす。将来にわたって賃金が上がっていくことを前提とした仕組みをつくっていかなければ、社会保障も地域サービスも成り立たない。賃金引き上げは、個人の家計を支えると同時に、経済や社会を発展させる重要なエネルギーだ。従って「賃上げはコスト増。国際競争力を弱める」との一面的な見方ではなく、今の日本に必要な「社会的合意を定着」させていく必要がある。それは、「賃金は上がっていく」という将来への確かな見通しだ。

今、働く人たちの賃金・労働条件は十分な水準と言える状況ではなく、さまざまな格差を生んでいる。そうした現実を直視し、状況を変えるために、すべての労働者の「底上げ・底支え」「格差是正」を掲げ、賃上げを実現していくことが、2018春季生活闘争の最大の意義だ。

チェーンでつながるのは「プライス」だけではない

─取り組みのポイントは?

1つは、「大手追従・大手準拠などの構造を転換する運動」だ。これは、春季生活闘争を通して、経済・社会の構造を転換しようというスケールの大きな運動だ。一歩一歩着実に進めていく必要がある。

「取引の適正化の推進」は、この間の構成組織、地方連合会の努力が実を結び、社会的機運を高めてこれた。それをもう一段進めたい。ポイントは2つ。1つは、プラットフォームづくりだ。取引の適正化は、特定の産業や地域、特定の労使が取り組むだけでは自ずと限界がある。ナショナルセンター連合として、この取り組みに、より多くの関係者が参加できるプラットフォームをつくり、社会的認知から公正さの実践・実効のフェーズに移行していきたい。

もう一つは、「働き方」のつながりに目を向けることだ。取引の適正化を通じて、「サプライチェーン」「バリューチェーン」の重要性も定着してきたが、チェーンでつながっているのは、なにも取引条件としての「プライス」だけではない。働き方でも労働者はつながっている。自分たちの働き方の見直し、長時間労働の是正を通じ、自分の職場だけでなく企業を超えて、仲間の働き方の改善につなげたい。職場の風土改革やマネジメントのあり方なども不可避の課題だ。政府が進める「働き方改革」を否定しないが、取引を通じてつながりあう私たちが、どうすればお互いの働き方をより良いものにできるか考え行動することは、まさに労働運動ならではのアプローチだと思う。

2018闘争では、「サプライチェーン全体で生み出した付加価値の適正分配」を、取引だけでなく、働き方も含めた概念に進化させ、新しい連合運動として展開していきたい。

均等待遇実現を労使交渉のど真ん中に

─非正規共闘の見直しについては?

連合は、2006春季生活闘争でパート共闘会議を設置し、それを非正規共闘へとステップアップさせて、非正規労働者の処遇改善に取り組んできた。「非正規の問題ここにあり」と社会に知らしめる役割を果たしてきた意義は大きい。ただ一方で、個別労使や産業労使の取り組みの中に、非正規問題を落とし込んで処遇改善をはかることが追いついていないという反省はないか。この間、非正規共闘が果たした役割は十分認識しつつ、労使の協議・交渉のテーブルにより自然体で非正規問題の改善を組み込む重要性を課題提起したところだ。

今後、有期雇用労働者の無期転換や正社員化の取り組みを通して、職場には多様な雇用形態が生まれる。産業労使、個別労使においては、その処遇改善に向け職場の実態に即した、より濃密な話し合いが求められる。ならば、個別労使交渉において、非正規問題をど真ん中に置いて処遇改善を求めるのはごく自然なこと。これまでの取り組みを後退、希薄化させるものではなく、非正規の問題によりいっそう光を当てていくバージョンアップの提案と受け止めてほしい。

労使が協議・交渉の結果に責任を負う

─マスコミの「官製春闘」という言葉に対しては?

私たちは、政府に要求書を出し、政府から回答を得るわけではない。春季生活闘争において、労使は真摯に交渉に臨み、徹底的な話し合いによって解決点・合意点を見出している。私が考える労使自治とは、労使の関係に誰も立ち入らせないという縄張り意識ではなく、その協議・交渉の過程にもその結果にも労使がすべての責任を負うということ。他に責任を求めることは一切ない。政府に望むのは、将来不安の払拭など賃上げがより生きる環境づくりに尽きる。

また、「長時間労働を是正したら残業代が減って消費が冷え込む」と心配する見方もある。だからと言って、長時間労働の是正を止めるとの選択はなく、むしろ「残業代に頼らざるを得ない賃金実態、家計実態」がより浮き彫りになり、「月例賃金へのこだわり」という連合のメッセージが重みを増す。積極的に発信していかなければならない。

「生産性が上がらなければ、時短も賃上げもできない」という主張も突破していく必要がある。生産性運動は単なる能率向上運動ではないし、そのスキルを競うものでもない。人間は古来から、昨日よりも今日、今日よりも明日と、わずかな工夫を積み重ね、より良いものを追求してきた。まさしく人間の労働の本質であり、歴史を動かす成長や豊かさの源泉でもある。2018闘争を通じて、生産性をめぐる誤った認識に警鐘を鳴らし、生産性三原則の正しい理解と実践を広げることも、重要な課題になるだろう。

若手の組合役員を労使交渉の場に

─職場や地域の組合役員に向けたメッセージを。

2018春季生活闘争の団体交渉や労使協議では、男女を問わず若手の組合役員の積極登用、活躍の場を重視したい。日々の職場の息づかいや変化を肌身で感じる職場リーダーの発信を活かせないか。次代を担うフレッシュな仲間がリアルな労使関係を学ぶ機会だ。

2018闘争は、2017闘争の取り組みに全力を挙げた結果の上に構築される。そして、2018闘争に私たちが全力を傾けた結果が2019闘争につながっていく。そう考えれば、一瞬たりとも気は抜けない。これからの安心や豊かさをつくっていく責任が、この2018闘争には宿っている。全力投球で臨もう!

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