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高畑裕太が「容疑者」となってからふつふつとわきあがる心の奥の何か

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俳優・高畑裕太が「容疑者」となり早数日。私の心はざわざわとざわついている。

私もそうした性犯罪の被害者の1人だからだ。便宜上、ブログ上や人に話す時はセクハラという言葉を使っているけれど、実際に私が遭った被害、裁判を起こした内容は「準強制わいせつ罪」だ。

あらゆる憶測が飛び交う。容疑者本人でない母親の高畑淳子さんに対して下世話な質問が投げかけられる。恐らく、被害者の女性も今頃たっぷりとセカンドレイプを味わっているだろう。吐き気がする。

正直、気分が悪いのでニュースはあまり見ないようにしている。けれど、この方のブログだけ拝見した。

高畑淳子の会見: むだにびっくり

共感することが多すぎて、心が震えた。

実は、このブログを始めてから一度、裁判関係の記録を文章にまとめて公開しようと思ったことがある。もう何年も前のことだし、ふと思い出してもそんなに苦しいと思わなくなってきたし、もう大丈夫だろうと思っていた。前例がないと言われた裁判、ネットに流れて誰かの何かの役に立てばと思った。

浅はかだった。

裁判資料の文字が目から吸い込まれるように強烈に脳に入ってきて、私はものすごいフラッシュバックを起こした。泣き、のた打ち回り、吐いた。

私が今、普通に生活できているのは、もう加害者とも裁判とも関係のない人生を送れているから。ただそれだけだった。当時の資料を見たら、自分でもショックなぐらい、何も忘れていなかった。

私がこれからも、こうした情報に触れる度に苦しむだろうと痛感した。今回の高畑容疑者の事件も、本当に気持ち悪い。吐き気がする。

被害者は、一生こうした苦しみを味わい続けるんだ。加害者は払えるだけのお金払って終わり、なんて、許されていいんだろうか。それが嫌で、私は民事だけではなく刑事裁判も行い、加害者に「前科」という傷を付けてやった。せめてもの復讐だった。

「訴えられたら向こうの人生狂っちゃう」

この言葉も耳にタコができるほど聞かされたのだけれど、この発言をする奴は正気なのか? と、思う。

こっちはもうとっくに狂ってる。男性という性に対しての信用の失墜、思い出す度に込み上げる吐き気、足音への恐怖、付きまとうフラッシュバック。まともに生活なんかできやしない。

私の場合、加害者が特徴的な柄のシャツを着ていたので、洋服店でその柄を見る度に吐き気が込み上げた。自由に出歩くこともできない。電車でも、いつ痴漢に遭うのか気が気ではない。

これだけでも充分に苦しいのに、周りからは「被害者の責任」を追及される。

「あなただって男を誘うような恰好をしていたんでしょう?」

「油断しているからそうなるのよ」

「どうしてそんな大袈裟に騒ぐの?」

「本当に怖いと思っているならどうしてヒールの靴を穿くの?逃げられないよ?」

うるさい、黙れ。としか言えない。今となっては。

ただ当時は、こうした私を責める声が怖くて怖くて、本当に自分が悪かったのではないかと気が狂いそうになった。何度も死のうと思った。直属の上司だけが、私の味方をしてくれていた。私のために怒ってくれた。そのおかげで、私は今息ができている。

ただ、その上司に良くしてもらったことがきっかけで色んなところから嫉妬を買い、関係ないところで責められたり、「かわいいって得ですね」なんて嫌味を言われたりした。私はPTSDに加えてパニック障害やら躁鬱やら精神障害を大量に患い、毎日薬を流し込みながらそれでも何とか生きていた。

心療内科の医師には「普通だったらとっくに会社を辞めてる。よく耐えているわね」と褒められた。けれど、褒められることではない。私は私がようやく掴んだ夢の端っこを、どうしても手放したくなかっただけだ。

「例え慰謝料が50万とれても30万は裁判費用で消えるから裁判なんてあなたにとってなんの価値もないよ」

そんなことはない。慰謝料が取れる=勝訴している。勝訴すれば裁判費用は全部向こう持ち。弁護士のくせにそんなことも知らないの?こっちが何も知らないと思って適当なこと言いやがって。と、思う。

私の場合、法テラスで裁判費用を借りて、もし敗訴すればそれから5000円ずつ返済していく予定だった。が、勝訴したので、1円の返済もしていない。

弁護士がとても良い人だったので、何年もかかった裁判にも関わらず相談費用を1円も取られなかった。最後に、慰謝料の内の2割を成功報酬として渡した。それだけで終わった。

私は私を救ってくれる人に巡り合う運に恵まれている。こんな利益度外視で協力してくれる弁護士なんて、そうは出会えない。だから私が支払ったお金がこれだけで済んだということはわかっている。けれど、50万円のうち30万円が取られるなんてどんな悪徳弁護士だよ、と思う。

大体、こういう「お金にしか戦う価値がない」という考え方自体おかしい。

戦うことに価値がある。自分の尊厳を守ることに価値がある。勝訴して、これ以上セカンドレイプに遭わないようにすることに価値がある。

この世界の価値はお金だけでできてるわけじゃねぇんだよ。と、思う。

こうした事件に遭った後で男性と付き合うとなると

「あんな事件があったのに男と付き合うなんて正気?」

「本当は大して悲しくないんじゃないの?お金が欲しかっただけなんじゃないの?」

とか、言われる。

このブログを始めた当初も

「セクハラされて辛かったとか書いてるけど結婚してるじゃん」

みたいなことをわざわざブログに書いている人がいた。どうでもいいので相手にしなかったけど。

男は全員同じか? 女は全員同じか?

人はそれぞれ性別以外に人間性を持っている。女はバカにするべきと思っている男もいれば、女を大事にするべきと思っている男もいる。

一部の出来事だけを持ち上げて「だから男は」なんて性別を罵ることは、おかしい。男だって女だってそれ以外だって、どんな性を持った人だって素晴らしい人間性を持っている人はいる。性犯罪に遭ってかけてしまった色眼鏡を通してでもわかるぐらい輝かしい人間性を持っている人はこの世に存在している。

私は生まれ持った強い運のおかげで、「この人を守るべき」と思ってくれる男性に出会えただけの話。

一番腹が立ったのは「裁判でまた2度も3度もつらい体験を話さなきゃいけないんだよ? いやでしょ?」というもの。「たいしたことねえだろ」って思ってるのを全身から出しておいて、都合が悪いところだけ「つらいでしょ?」と脅す。

私はこれを弁護士からではなく、検察庁で言われた。刑事裁判も行なったから。

辛いからなんだって言うんだ。黙っていたら辛くなくなるとでも言いたいのか。

黙っていても黙っていなくても辛いんだったら叫ぶよ。叫んだ方がずっとラクだ。「黙ってるってことは自分にも非があると思ってるんでしょ?」なんてなめたことぬかされるぐらいだったら泣きながらでも大声で叫んでやろう。

と、言うと、こんな風に言われた。

「たかが体を触られた程度でこんなに騒いで、あなたに何か得があるんですか?」

私はブチギレた。

「検察庁の人間がそんなんだから自殺者数が減らないんじゃないですか! 加害者大国とか言われるんじゃないですか!」

叫んだら、場は静まりかえった。「わかりました。それでは後日」と言われた。

後日、刑事事件として訴えることを受理された通知が来た。ただ、裁判当日になって担当検事がその時の検事と違う人になったことを聞かされた。「付き合ってられっか」と思われたのだろう。

当日裁判に立った検事は、私の意に沿う真っ直ぐとした意見を持っている人だった。まるで私の気持ちを代弁してくれるかのような声が、法廷に響き渡った。あの時、叫んで良かった。

意見陳述もした。人々の前に立って、今自分がどれだけ苦しいか、書いてきた文書を読み上げた。一行目の「私は」を声に出した瞬間に涙がこぼれた。そのまま読み続けた。場は静まり返った。

この裁判の後、加害者の母が私の元へ来た。加害者の母とは言え、彼女は悪くない。そう思って、私は彼女の話を聞くために振り返った。

「うちの息子も反省して立ち直っているんだから、あなたも早く裁判なんてやめて立ち直って」

目の前が真っ白になった。こいつは何を言っているんだろう? と思った。

反論しようとした時にはすでに母親は遠くにいた。叫ぶ私に対して「はいはい。はいはい」と言ってぺこぺこしながら歩いて行った。

その母を止めることなく前をつかつかと歩いていく加害者は、恐らく何も反省していないんだろうな、と思った。

二度と加害者家族が私に近付かないように、次の裁判にはその時の母親の様子を弁論に加え、「このような態度を見るからに反省していない」と主張した。二度と誰も話しかけてこなかった。

被害者は弁護士から「相手はちゃんと働いてる人なんだ」「酔っていただけなんだ」「このことが公になったら、加害者の人生は終わってしまう」とか言われる。

まるで自分が被害を訴えることで今度は自分が加害者かのようなことにすり替えられてしまう。

こうしたことも実際に言われた。だからなんだ? こちとらとっくに被害受けてるんだぞ、と思う。私はそんなに善人ではないので、当時から割とこう思っていた。それでも、全く心が揺るがないわけではなかった。

こうしたことを言ってくる加害者弁護士に対して、私を担当する弁護士はこう言ってくれた。

「あなたを否定する人はたくさんいる。だから何を言われても自分が正しいと思う気持ちを忘れないで」

この言葉のおかげで私は裁判に勝てたようなものだ。良心を揺らがされても何を言われても「悪役に徹してやる」ぐらいの気持ちでいた。そうして勝訴という法の下の正義を勝ち取った。

「加害者は当時酒に酔っており」はもう常套句。

更には「加害者は反省からうつになり、見ていただいてわかるようにこんなに太ってしまいました」と言われた。

確かに筋肉質な体が驚くほど肥満体型になっていた。しかし、デブになったから許せって? バカなの? としか言えない。

唯一、あまりにも見た目が変わってくれていたおかげで、私は加害者本人の姿を見てもフラッシュバックを起こさなかったことだけは感謝しておこう。倒れることなく、最後まで裁判をやり切ることができた。

軽いフラッシュバックを起こしたついでに書き殴っておこうと思って書いたけれど、思った以上に支離滅裂な文章になってしまった。

私は戦い抜くことができたけれど、そうでない人たちはどれだけいるんだろうと考えると切ない気持ちになる。


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二次被害はまだ終わらない
感情的被害は主観的な物で誰に決められるものでもない

▼弁護士費用についての補足

弁護士費用についてです。

「弁護士費用についてちょっと違うんじゃない?」というコメントをいくつかいただきましたが、はっきり言います。よくわかりません。

弁護士費用のくだりは私の経験を通した私の主観で、しかも勢いで書きました。ツイッターで流れている識者の方のコメントの方が正しいでしょう。

法テラスに支払うべきお金は全て弁護士が段取りしてくれました。なので、何にいくらかかったのかわかりません。あの頃のお金に関しての記憶、すっ飛んでいます。

言われてみたら「法テラスはこういうシステムなのでこうしましょう」みたいな説明をされたような記憶が薄らありますが、私は頷くだけで後は全部やってもらえました。書類に貼る収入印紙のお金は払いました。初めて請求されたお金がそれだったので、すごく覚えています。と、補足しておきます。

「1円もお金を払っていないことを気にしています」と伝えた時に、「成功報酬2割もらうから大丈夫」と言われたことだけは覚えているのですが、もしかしたら2割と法テラス分のお金が引かれていたのかもしれないですね。お金に関しては本当にどうでもよくて全部任せていたので。うろ覚えです。

ただ、慰謝料は50万円以上でしたが、30万円も持って行かれていませんでした。それだけは覚えています。

ブログに書かれていた「50万中30万円持って行かれて徒労だよ」みたいな脅しのような言葉に腹が立って勢いで自分の経験を基に書きました。

もし混乱させてしまったのならごめんなさい。

弁護士費用は私のブログを参考にしないで弁護士や法テラスに相談して実際の費用を確認してください。

(2016年8月27日「底辺ネットライターが思うこと」より転載)