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女32歳、越境する。新聞記者を辞めて、ハフポストの広告担当へ。

2017年07月14日 19時24分 JST | 更新 2017年07月14日 22時32分 JST

30代は難しい。

キャリアを重ね、転職を決意する人も多い。新事業を興し、社長や事業責任者を務める同世代もいる。すでにバイアウトして次のフェーズに進んでいる人も。一方、大企業においては、さすがにもう新人とは呼ばれないが、往々にしてまだ「若手」。責任ある立場になるには、もっと時間が必要だ。大企業からベンチャーへ。日本企業から外資系へ。知人の思い切った転身を聞くにつれ、焦燥感が募る。

プライベートでは最愛の人と出会い、結婚する人。別離を選ぶ人。産休中、育児中の人。家族の病気や介護、死に直面し、苦しみや悲しみを抱える人。マイホームを建てる人、マンションやアパートを買う人、賃貸の方が得だと言う人。選択肢は多く、一つひとつの選択が、重い。

大学卒業以来、新聞社に勤めてきた。世の中の変化を日々感じ、記録していく仕事は忙しいけど、刺激的だ。電車で新聞を開いている人は少なくなった一方、ウェブで多くの方に新聞社のコンテンツが届くのは、嬉しい。

結婚はしたが、籍を入れない事実婚。子どもはいない。同じ新聞記者として、今を無心に追いかける夫には敵わないなあと思う。父も母もガンで亡くなり、誰よりも私の仕事を応援してくれた祖父も他界した。最近体の無理がきかなくなってきた。徹夜はもうできない。小さなケガが治りにくくなった。

飲み会も好きだが、自宅で下手なりに料理を作り、器やグラスにこだわってお酒を飲むのが楽しくなってきた。青臭いこだわりは減って、少しずつ諦めながら、柔軟に、笑いながら、前向きにやっている。

多様な生き方、働き方、暮らし方に触れ、大いに刺激を受けつつ、動揺する。隣の芝生は青い。目の前のことにがむしゃらに取り組んできた20代とは、何かが違う。自分に問いかける。私は変わるべきなのか。

「こんなことを言うと変だと思うかもしれないけど」

と前置きして、同僚が言った。

「私はまだ、自分が何者かになれる気がするんだよね」

うん。彼女なら、きっとなれる。

だが、何者かって、何なんだ。私たちは、いつ、どんなアクションを起こせばいいのか。目の前に、どんな選択肢があると言うのか。

いつの時代の30代も大変だったのだろうし、30代だけが難しい訳ではないのだろう。年代、立場、業界を問わず、あらゆる選択に対し、100%「正解」と言えない時代がここにある。

私たちが20代だった数年前まで、長時間労働がポジティブな文脈で語られることはよくあった。ジェンダーや性的少数者に関するニュースは今ほど一般的ではなかったように思う。記事自体の内容に加え、SNS上で「誰が」「どんなコメントをつけて」その記事をシェアしているかが、読者にとって重要な意味を持つようになった。

写真とハッシュタグでストーリーを紡ぐInstagramの表現方法は新しい。名作映画や過去のテレビ番組がオンデマンド・定額制で見放題になり、スマホ上でのユーザーの時間の奪い合いがより激化した。Amazonでは本だけでなく日用品もボタン一つで注文できるようになり、気づけばほぼ毎日、ヤマトの配達員の方と顔を合わせている。

新しいテクノロジーや考え方が世を席巻しているようで、伝統的な価値観や手法に対するリスペクトは確かに残る。オールドとニューが入り混じる、面白い時代。

マスメディアは同時にウェブメディアも展開しているし、SNS発信にも力を入れている。Yahoo! JAPANは登場から20年以上も経ち、今やウェブ界のトラディショナルなマスメディアと言える。新興メディアが発信したコンテンツを、トラディショナルメディアが後追いすることも少なくない。

発信手段を持つ誰もがジャーナリストとなった今、著名な筆者の記事より、匿名のつぶやきが胸を打つことがある。ジャーナリズムは往々にして広告モデルで成り立っているし、広告は近年特に、ジャーナリスティックなメッセージを発している。大企業はベンチャー企業のアイデアとスピード感を求めていて、ベンチャー企業の一部は大企業を凌駕する影響力を持つ。

トラディショナルメディアとニューメディア。

ジャーナリズムと広告。

大企業とベンチャー企業。

こんなにフラットで流動的で柔軟な時代、まずは壁の向こうに行ってみないと、見えない景色があるのではないか。そもそも壁なんてないのかもしれない。正解なんてわからないし、求めてもいないけど、とにかくじっとしていられなくなった。

女32歳。越境してみよう、と思った。

   *

このたび、8年間勤務した朝日新聞社を退社し、7月1日に、ハフポスト日本版を運営するザ・ハフィントン・ポスト・ジャパン株式会社に入社しました。

ネイティブ広告、ブランドコンテンツを担当するパートナースタジオを統括するチーフ・クリエイティブ・エディターに就任しました。

簡単に言うと、新聞社の経済部記者から、ハフポスト日本版というウェブメディアの広告記事の制作統括に転身します。

ハフポストというメディアは人の生き方や心、社会に潜む問題や新たな価値観、これまでになかった切り口を発掘し、言語化し、世に問うてきた稀有なメディアだと思っています。編集部に加え、ブロガーのみなさまの存在も強力な支えになっています。

マスと言えるほどのリーチがありながら、ニュースの大小を問わず、立場や所属や肩書きを越えて、皆が言いたいことをどんどんアップしていく。ニュースコンテンツと個人のブログが対等に並ぶ、フラットな言論空間。

ハフポスト日本版の企画「#ladiesbeopen」は、これまで日本ではあまり大きなニュースとして取り上げられなかった、女性の体の話に徹底的に焦点を当てています。目に見えないイシューを言語化し、これまでにない、新たなニュースカテゴリーとしてご提案する力があります。

私自身も「女31歳。生まれてこのかた、一度も生理がない。」というブログを書かせていただきました。たくさんの反響を頂戴し、長年の葛藤から救われたような思いがあります。

「ひとりで過ごす」という選択肢を前向きに発信する新企画「#だからひとりが好き」のように、ネガをポジに変えていく。そんな推進力もあります。

「報道とは、メディアとは、こうあるべきだ」という既成概念を壊し、越境を厭わない。これからを生きる世代にこそ勧めたい、力強いメディアです。私はハフポスト日本版を、ビジネス面で支える仕事をしたいと思いました。

編集部による記事や、様々な視点からのブログが全文無料で読める。そんなウェブメディアを維持するための主な収入源は、クライアントのみなさまからいただく広告費です。主に広告枠に掲載するバナー広告と、ネイティブ広告です。コンテンツマーケティング全盛のいま、ネイティブ広告枠に掲載する記事体広告、スポンサードコンテンツは、成長が期待される分野でもあります。

クライアントのみなさまのご要望にしっかりお応えしながら、ハフポスト読者の皆様にとってもニュースやブログに匹敵するような魅力的なコンテンツを提供していきたい。「広告枠だけでなく、スポンサードコンテンツの中身をいかにネイティブにするか」。これが私達の命題です。

6月、世界最大級の広告・クリエイティビティの祭典「カンヌライオンズ」に行ってきました。最も歴史ある、フィルム部門のグランプリを獲得したこの作品に、トレンドが凝縮されているように感じました。英国のテレビ局「Channel 4」がパラリンピックに向けて制作した動画です。

障がいという言葉のネガティビティをぶっ飛ばし、人間の可能性を超越する「Superhumans」という表現。ジャーナリスティックなメッセージを感じました。広告も偉大なジャーナリズムの担い手なのだと、改めて感じました。

ハフポストの強みは、「愛をもって多様な価値観を肯定し、多様な選択肢を紹介すること」。そして「人の心を揺さぶる」、「前向きな議論を生み出す」ことだと私は思っています。

もっともっと多くの選択肢を皆様にお伝えしたい。多様な選択肢の中から何かを選び抜くお手伝いをしたい。

「若者の○○離れが進んでいる」と書くのは簡単です。ただ、離れている理由だけではなく、あえてその選択肢を選んでいる人の声もご紹介したい。無数の選択肢の中から何かを能動的に選ぶことは、豊かなことだと思うからです。

コンテンツに、もっと固有名詞をたくさん出していきたい。社名やブランド名、サービス名、個人名など、もっと具体的な選択肢をお示ししたい。消費者が普段の生活ではあまり意識することがないBtoB企業の皆様のストーリーやメッセージも、しっかりお伝えしていきたいです。

大ヒット、増収増益なら、どうしてうまくいっているのか、シェアさせてください。課題があれば、どうすれば解決していけるか、みんなで前向きに考えられるようなコンテンツを展開していきたいです。

編集部では竹下隆一郎編集長のもと、政治、国際、社会などのほか「明るい経済ニュース」を強化していく方針とのことです。ハフポスト日本版の手探りを、さらなる進化を、楽しみにしていただけますと幸いです。