BLOG

ルミネ会長のインタビュー記事が投げかけた、ファッション産業についての3つの問い。

変わる消費者と変わらない業界。このままでいいの?🤔

2017年08月23日 16時30分 JST | 更新 2017年08月23日 17時16分 JST
grinvalds via Getty Images
Different clothes on the rack

ファッションビルを運営する「ルミネ」の新井良亮(あらい・よしあき)会長がハフポストのインタビューに応じた。

バーゲンで人生を無駄にしない ルミネ会長の "理想の買い物"レベルが高すぎる

ZOZOで服が買える時代、リアル店舗のルミネに行く意味あるの?

元新聞記者としては、ルミネの会長がハフポストの、ルミネ世代のエディターのインタビューを受けたことに驚いた。私がマスメディアの流通担当の記者だったら「やられた」と思うかもしれない。しかもエディターは一消費者として、かなり正直な疑問をぶつけている。リアルで、怖いもの知らずで、面白い。

このインタビュー記事を通じて、エディターから現在のファッション業界について、3つの問いが投げかけられていると思う。

  1. チャネルの話。ウェブやアプリで数タップで服が買える時代に、店舗に行って服を買う理由とは。
  2. 価格設定の話。ファストファッションで一週間分のトップスを揃えられる値段で、なぜルミネで一着のブラウスを買うのか。
  3. セールの話。なぜ発売から一定期間経つと、同じ新品の服が半額になってしまうのか。

ぐだぐだと思いを巡らす。答えは出ない。

1、チャネルの話。

10年前、大学生だった。服は当然買いに行くもので、セールの時期になるとどこの店が何日から何%オフになるかチェックして、少しでも安くたくさんの服を手に入れるため複数の商業施設をはしごしていたのが懐かしい。ルミネは駅直結ですごく便利だ。ルミネができた当時は、街中から駅ナカへ、買い物客の導線がガラッと変わったのだろうと思う。

就職してからは平日の営業時間内に服を買いに行くことが難しくなり、休日には家でぐうたら。シャワーを浴びて化粧をして髪を整えて、剥がれたネイルを塗り直して服を見に行くのが面倒になってしまった。サイズが合わなかったり、素材や色のイメージが違ったりして返品することになるリスクを承知しながらも、ファッションサイトやアプリでポチッとやってしまう。ZOZOTOWN、ELLEオンライン、ZARA、H&M、ユニクロ、GU。靴はLOCONDO、下着は日用品と一緒にアマゾンのカートに放り込む。店で買うのと同じものが、概ねネットでも買える。

一方でここ2、3年、私は「服を買うために出かける」というアクションにかなりのエンターテイメント性を感じるようになってきた。実店舗に行かないと買えないブランドもある。そろそろ新作が並んでいるだろうか。ネットで見られないからこそ見に行きたい。どんな服に出会えるかわからないし、気に入った服に出会えず空振りに終わるかもしれない。

店舗のデザインやレイアウトに季節を感じたり、試着室の鏡に映る醜い体にダイエットを決意したり、その数十分後には買い物疲れを理由にアイスを食べていたり。服を買いに来たはずなのに、なぜか食器や枕を買って帰ったり。ラグジュアリーブランドの服の値札を見てすごすごと引き下がり、ファストファッションの服をたくさん買ってしまって後悔したり。自分の行動に説明がつかないことも多い。

朝、クローゼットの服の中から、なんとなくリアル店舗で買った服に手を伸ばす。結果として、リアルで選び抜いた服と同じものがネットで簡単に買えることはよくある。しかし足を運んで触れてみて買った服には、ネットで買った服以上に購入時のストーリーが刻まれているものだ。

ファッション雑誌「VOGUE」主催のイベント「VOGUE FASHON'S NIGHT OUT」を毎年楽しみにしている。表参道が人でいっぱいになる。普段はクローズしている時間帯に店が開いていることにわくわく。店内でドリンクやノベルティをもらえたり、普段会えないデザイナーさんに会えたり、ライブがあったり。財布の紐が緩むゆるむ。

今やネットで服を買うのは日常で、商業施設で服を買うという経験は非日常なのかもしれない。せっかくなら思いきり楽しみたい。商業施設で、買ったばかりの服をプロがスタイリングしてくれて、インスタ用の素敵な写真を撮ってくれるサービスが有料でもあれば、もっとたくさんの人をリアルに引っ張り出せるのでは。甘いでしょうか。

2、価格設定の話。

衣服は必需品である一方、嗜好品にも奢侈品にもなり得る。安く済ませようと思えば、ファストファッションで全身3000円以内で揃う一方、1回のクリーニング代に3000円以上かかる高級な服もある。高級なものはとことん高い。アウターだと車が買えるほどの値段のものもある。そういえば、服に対する感覚は、車にも通じるところがあると思う。交通手段として欠かせない地域も多く、必需品である一方、メーカーや車種、スペックにこだわればこだわるほど贅沢品にもなる。

洗濯しやすく、アイロン掛けも不要なポリエステル素材のシンプルなトップス。例えば、アバウトな感覚では、GUで1000円、ユニクロで2000円、H&Mで3000円、ZARAで6000円。ルミネだと店舗で幅があるが、1万円を超えるブランドも少なくない。百貨店には数万円のものもある。えいやっと1万円のブラウスを買うときもあれば、3000円の買い物に躊躇するときも。この服、外食だとランチ何回分、ディナー何回分、と計算してしまうこともある。財布の具合と気分に左右される。一貫性はない。

私の目は節穴なので、服に明確な値段の違いを見出すのは難しい。素材の違い?デザイン?カッティング?縫製? 一見しただけでは、高い服か安い服かがわからないのだ。車はまだわかりやすい。メーカーのマークは必ず入っているし、車種や年式、走行距離、修理の有無、仕様で大体の価格感がわかる。

服もブランドロゴが大きく入っていればさすがに高級なものだとわかる。ロゴが入っていなくても、コム・デ・ギャルソンの丸襟のジャケットやサルエルパンツは一見してそれとわかるし、背中の上の方に斜線の縫い目が4つ入っていれば、ああ、素敵、と思う。どこのブランドかがわかってから、やっとその価値を理解した気になる私。浅薄で現金だなと思う。

私にとって、服は自分のコンプレックスやマイナスを覆い隠す鎧であり、低い自己評価にゲタを履かせてくれる存在でもある。無理をしてでもブランドがわかりやすい服を着て、虚勢を張りたくなる時もある。

本当のものづくりの価値がわかる人にルミネに通っていただきたいと、常々考えています。

新井会長の言葉に背筋が伸びる。価格に見合った価値がわかるような人間になりたい。できれば......。

3、セールの話。

いいものはちゃんと相応のお金を出して買う価値があると思う反面、消費者として、できるだけ安く手に入れたいという気持ちもある。新品の服なのに、なぜ時期が来たら安くなるのだろう。数ヶ月間売れなかったからと言って、新車がいきなり半額になったりはしないのに。

ファッションへの関心が薄くなった訳ではないのに、私は年をとるにつれて、確実にトレンドを追いかけなくなってきている。今年も夏が終わろうとしているが、オフショルダーも袖コンシャスも着ないままだ。ファッション誌で「定番」という言葉が増えてきたように思う。長く着られそうなデザインのしっかりした服を選び、シーズンが終わったらしっかりクリーニングして、翌年また袖を通すのを楽しみにする。

クリアランスセールで売り切って、半年ごとにごっそり商品を入れ替えるというのは、果たしてこれからの消費トレンドに合っているサイクルなのだろうか。

同じ時期に同じ服が半額になっている店と、定価で売っている店があれば、消費者の足は半額の店に向く。それは当然のことなんだと思う。ネットショッピングでは年がら年中セールをしているショップもあれば、フラッシュセールのように安くなるブランドが毎日入れ替わるサービスも出てきた。リアルでも、アウトレットは年中安い。訪日外国人が季節関係なく、ツアーを組んでアウトレットにやってくる。

もはや、商業施設同士で夏と冬のセール時期を合わせる必要はないんじゃないかと思う。

ファッションにジェンダーレスの波が来ている。極端ですが、そろそろトレンドレスでもいいのではないでしょうか。

いいものを長く大事に着られるなら、定価で買っても惜しくないし、そういう服は消費財じゃなくて財産なのだから、セールで安くならないでほしい。トレンドを否定するというのはファッション産業を否定することになるのかもしれないが、一消費者の勝手な願いです。

     *

インタビューでは、広告の話も出ていた。なぜルミネの広告は商品を訴求するのではなく、敢えて女性の心をぐわんと揺らす言葉を投げかけてくるのだろう。新井会長の言葉に、その答えを見出す。

劇的に変化していく世の中において、自分自身でしっかりとした人生観をもっていて欲しいのです。20代で「自分は何をして生きていくのだろうか」と、30代で「自分には何ができるのだろうか」と、しっかり問うことのできる人ですね。

広告で消費者の人生観を問うていたのですね。20代と30代、求められている問いが違うことにしびれる。ファッションというひとつの身近な切り口を通じて考える。30代、私には何ができるのだろうか。

     *

ハフポストのサイトが新しくなりました。トップページのロゴの下に並ぶカテゴリーに、今のハフポスト日本版編集部が考えた、リアルなイシューが並んでいます。編集部で議論を重ねながら、自分たちの言葉でジャンルを定義していました。そのひとつ「これからの経済」は、神の目線で経済的事象を語るのではなく、20~40代を中心とした編集部のリアルな目線を大事にしていきます。これからも一層、ご愛読いただけますと幸いです。