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太陽光発電の推進は、ドイツを見習え!

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 わが国の再生可能エネルギー推進派の人たちは、つねづね「ドイツを見習え」と言う。まったくそのとおりだ。日本も太陽光発電の本場、ドイツを見習って太陽光発電施設の整備を進めていかなければならない。

 「ドイツは太陽光発電を推進してきた国として有名だ。しかし、太陽光発電事業が周辺自然環境に与える影響に対する規制は厳しいのだ。例えば、施設建設に当たって森林等の伐採を行えば、その6倍の植林を行わないといけない。
 
 今回のプロジェクトでは、乾いた荒れ地を30ha造成して活用したので、その3倍の90haの同じように荒れた土地を別の場所で確保し、それを25年間にわたって管理することが義務付けられた。もともとこの地に生息していた動物(こうもり、トカゲ、タカ)の保護も規制で求められており、人工的な巣を作っているが、これらに非常にお金がかかっている。
 
 将来の解体については、事業主が国に供託金を支払っており、もし当該事業者が倒産した場合は国が変わりに廃止作業を行う仕組みとなっている。モジュールなどのリサイクルについては、事業主が決めることになっている。」

 これは、今年2月、欧州最大の太陽光発電基地の一つであるノイハルデンベルグ空港ソーラーパークに私が行ったときに、その事業責任者から聞いた言葉だ。
 さすがドイツである。私はドイツのエネルギー政策の矛盾を指摘することはよくあるが、こうした自然環境との兼ね合いを考えながら開発を進めていく姿勢には学ぶところが多い。特に、森はドイツ人にとっては聖なる意味を持つから、なおさらなのだろう。

 振り返って、日本ではどうか。次の写真を見てほしい。山梨県北杜市の例だ。ドイツのような規制がない日本では、こうした開発による森林の喪失は永遠のものである。単に景観だけの問題だけではなく、傾斜地の森林が無くなれば、その真下や横に建っている住居は、土砂崩れなどの危険にさらされることになる。

 また、生態系への影響の可能性という意味では、特にこの北杜市場合、同市が誇る国蝶のオオムラサキの生息にもどのような問題が起こるか、アセスメントのようなものはいっさい実施されていない。こうしたゆるゆるの規制の中で、太陽光発電事業者は開発し放題なのだ。

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 メガソーラーばかりが話題となるが、実はこうした狭い場所での開発、それも50kw未満の出力であれば、建築基準法の工作物でもなければ、電気工作物としての厳しい規制はかからない。それをいいことに、物理的な実体上は大規模な太陽光発電施設の建設事業であるにもかかわらず、「分譲」だと銘打って50kw未満に区分けして投資家に売り込んでいる例は数限りなくある。

 その結果、下の写真のように小さい電柱(50kwごとに分けるためのもの)と大きな電柱が重畳的に立ち並ぶことになり、住民や観光客は大自然の中で異様な光景を目にすることになるのだ。純粋経済的な意味でも投資効率が悪く、無駄な投資が発生していることになる。

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 投資家に分譲して金融的利益を稼ごうとするだけの事業者は、そもそも発電事業をちゃんとやろうと考えているとは思えない。将来、パネルの不具合や施設の自然被害や老朽化で発電量が落ちたり、壊れて発電しなくなったりするといった事態が頻発し、配当を約束された人たちから「話が違う!」と騒ぎになる可能性は高いのではないだろうか。

 そもそも、エネルギー政策として太陽光発電を推進するからには、それが長期安定的な発電(それこそが「電源」)につながるように、事業者にメンテナンスや発電管理体制の確保など、電力事業者にとっては当然の規律が求められるのだ。

 もちろん、それは解体時の処理責任も含まれるものである。途中段階での退出(倒産や事業売却)のせいで解体の費用が不足しないよう、事前に事業者から供託金的なものを拠出させておく仕組みが必要だ。こうした小規模事業者は、ましてや最適なリサイクルの方法など考えてもいないだろうから、場合によっては放置や不法投棄に終わる危険性も高い。
 
 さらに問題は、施工の手抜きや危険な施設建設による災害が起こった際の責任だ。下の写真をご覧いただきたい。そもそもこうした小規模の開発現場には、事業者の名称や所在地が掲示されてもいない。

 例えば盛り土が崩れる、台風や水害でパネルが壊れる(有害金属が流れ出す)、支柱そのものが破損して公道に倒れこんでしまう、雑草よけのシートのせいで大雨の際に、雨水が土に浸透せずにそのまま大量に流れてしまうなど、何か重大な災害が起こった時に、誰が責任を取ってくれるのか。

 今のゆるゆるの規制下では、その「誰に」言っていけばいいのかということさえ不明確なのだ。市町村が第一義的に責任を取ってくれるかといえば、例えば北杜市などは国の指導がない、法的規制がないなどと言って、そうした問題への対応に消極的だと住民から不満の声が出ている。

 少なくとも、事業者の名称と連絡先は掲示させるべきだし、国もその情報があるならば市町村に流して、国と市町村で連携をとって災害に対応する体制を取ってもらわなければ、周辺住民としては心配が尽きないだろう。

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 ただ、日本全体を見渡せば、周辺住民からこうした不満が出てこないケースもある。それは、これまでほとんど無価値だった土地が、固定価格買取制度のおかげで急に配当を生むようになったことで利益を享受しているのも、その地域の住民であることが多いという事情があるからだ。

 実は、ドイツでも、風力発電に反対する(低周波音や野鳥保護などの理由)人が多い中で、その導入を可能にしてきたのがいわゆる「市民ファンド」である。日本では、これをドイツは民主的に再エネを進めたという主張の根拠に挙げる人も多いが、実は風力発電導入の利益が入る市民に、反対派の市民の説得するインセンティブが生まれたというだけのことである。
 ドイツのヘンドリックス環境大臣が、昨年の温暖化国際会議COP20のサイドイベントで、まさにそのような趣旨の発言をしていたのを聞いて、私は目を丸くした。

 何もだからといって、太陽光の開発をやめろと主張しているわけではない。むしろこうした「乱開発」が横行することや無責任な事業者が多数参入することによって、再生可能エネルギーの一般受容性が失われていくことを懸念しているのだ。

 具体的な政策提案としては、次のような項目が挙げられる。

1)50kw未満の太陽光発電設備を、建築基準法上の「工作物」とする
2)同設備を電気事業法上の「電気工作物」規制にかける
3)生態系への悪影響について、環境アセスメントを課する
4)事業者の名称、連絡先、所在地などの情報開示と情報掲示を義務付ける
5)市町村において、開発プロセスについての住民説明を義務付ける
6)景観法、景観条例を適用する
7)廃棄物になった際には、一般廃棄物か産業廃棄物か、どちらに当たるのかを明確にし、その処理責任を明示するとともに、費用の負担についてもあらかじめ事業者に責任を持たせる

 もちろん、こうした政策を実施するにはさらに詰めるべき点はある。だが、今はそのチャンスだ。現在行われようとしている固定価格買取制度の見直しのプロセスで、上記のような点についても同時に検討していくべきだと強調しておきたい。

 まさに、今こそドイツを見習え、である。

 
 

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