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高校内カフェって知ってますか?:"ぴっかりカフェ"にみる貧困の連鎖を予防する3つの機能

2015年02月27日 17時55分 JST | 更新 2015年04月28日 18時12分 JST
opus/a.collectionRF via Getty Images
Two female student reading in library

高校内カフェって知ってますか?

高校内カフェは、私の知る限り神奈川で2カ所、大阪で6カ所、中退や進路未決定で卒業するリスクの高い高校生たちを予防的に支援する取組みとして行われているものです。私が理事をつとめるNPO法人パノラマ(申請中)は神奈川県立田奈高校と協働し、「ぴっかりカフェ」という高校内カフェを運営しています。先日神奈川新聞にもとりあげていただきました。(田奈高「図書室カフェ」 悩み、不安に寄り添う (2015年2月4日掲載)

具体的には高校内でカフェを開き、その中で高校生の悩みや不安に応える地域の相談員と高校生が出会って支援をしていくものです。特に、貧困家庭の生徒や将来的な生活困窮リスクを抱える生徒の支援が主眼となっているものです。

高校は貧困の連鎖を止める最後の防波堤

日本では現在98%超の若者が高校に進学します*1。しかし、年間50000人以上の若者が中退し*2、68000人以上が進路未決定で卒業していきます*3。中退したり、(その後大学に進学する浪人生を除けば)進路未決定で卒業した若者がその後正規雇用につくことは困難で、少なからぬ人が経済的に困窮していることが想像されますが、学校を離れてしまうと困難やリスクを抱えた若者がいったいどこにいるのか、社会から見えなくなってしまいます。そうすると、就労や生活について必要な支援をすることが極めて困難になります。

一方、高校中退の背景には育った家庭の貧困が指摘されており、「貧困家庭で育った子どもが、中退により安定した職につけず次の貧困に陥る」という形で貧困の連鎖が顕在化するのが高校を離れる時になります*4。また、私は高校生の中でも女子生徒を支援することが多いのですが、貧困家庭の若者たちは結婚や出産が早く、早ければ高校在学中に妊娠・出産を経験します。そこから産まれた子どもはまた貧困ということになり、次の世代への貧困の連鎖が始まります。

つまり、高校段階でいかに中退を防ぎ、より良い状態で卒業するか、また将来に困った時には必要な支援にたどり着ける準備状態を作れるか、ということが貧困の連鎖を防ぐためのほとんど最後の防波堤になります。私は"ぴっかりカフェ"の実践から「高校内カフェ」はこの貧困の連鎖の防波堤の一翼として、主に3つの機能を担っていると感じています。

機能1:サービスを届ける「アウトリーチ」

アウトリーチとは「必要な人に必要な情報やサービスを届けること」です。高校生が貧困状態にあって困っていたり、家庭や進路について悩んでいても、自分から公的機関の窓口に相談にくることはまずありません。相談機関の情報を持っていないのが普通ですし、その窓口でどんな大人が出てくるか分からないからです。

高校内カフェは「それなら高校生のいるところに支援者が行っちゃおう」「カフェでふれあう中で自然にこんな大人だって知ってもらおう」という取組みです。つまり、情報と心理的なハードルをクリアしてもらい高校生たちに必要なサービスを届けるアウトリーチの機能を持っています。単に行くだけでなく日常的に出会うことが大切です。「相談の専門家が来ました」という改まった形ではアウトリーチ機能が限定されてしまいます*5

貧困状態にある人は、社会生活に必要なお金やものが不足しているばかりでなく、それらを補うサービスに関する情報も不足しがちです。それに対して、多くの公的サービス(社会保障)は自分で情報を得て、窓口に行って、申込や申請をして初めて利用できます(中には生活保護のように申請しようとしても、なかなかさせてもらえないことすらあります)*6。家庭でのサポートが充分でない子どもたちや若者たちは、こうしたサービスが届きにくいけれど、最も必要としている人たちです。高校内カフェが重要な取組みなのは、サービスをこちらから届けるアウトリーチ機能を持つ点なのです。

機能2:地域の人的・公的リソースの集まる「プラットフォーム」

ぴっかりカフェのスタッフは、カフェと言う空間で日常会話をしながら、自然に高校生たちの悩みや不安をきいていきます。しかし、カフェのスタッフ(つまり、相談員でもあるのですが)が何でもできるわけではありません。重要なのはこのカフェが地域の人的・公的資源の集まる「プラットフォーム」の機能をもつことです。高校内カフェに地域の必要な資源が集まってきたり、必要な地域の資源につながっていたりすることです。

昨年制定された国の「子供の貧困対策に関する大綱」では、学校を子供の貧困対策のプラットフォームと位置付けると書かれています。つまり、学校教育による学力保障や学費負担の軽減だけでなく、学校から子どもを福祉的支援につなげ、総合的に対策を推進するというのです。非常に重要な施策ですし、高校内カフェと共通する機能です。しかし、高校生にとっては福祉的支援だけでなく、就労支援も重要ですし、福祉的支援だけではなく地域の信頼できるいざとなったら頼れる大人とつながっておくことも大切でしょう。ぴっかりカフェは、こうしたさまざまな資源が集まるプラットフォームになりつつあります。

機能3:生育環境を補う「文化のシャワー」

カフェでコーヒーを飲みながら過ごす。文化的な一時だと思いませんか。おしゃべりをしながら過ごすのも良いですが、それがブックカフェで本を読みながら過ごす時間であればなおのこと。

高校内カフェの中でも、ぴっかりカフェの顕著な特徴は学校図書館で行われているということです。貧困家庭で育った子どもたちは文化的環境に乏しく、それが学力やその後の就労の力にも影響していきます。学校図書館でカフェを開くことで、文化に触れ「文化のシャワー」を浴びる機会にもなります。

こうした機能を持つ高校内カフェ。貧困家庭の子どもたちからお金を取る訳にもいかず、財政基盤は不十分ですが、重要な取組みです。ぜひ全国に広がっていって欲しいと思っています。

【引用元・関連先リンク】

*1 平成26年度文部科学省学校基本調査より

*2 平成25年度文部科学省「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」より

*3 平成26年度文部科学省学校基本調査の高等学校卒業者の進路「大学等進学者」「専修学校(専門課程)進学者」「専修学校(一般課程)等入学者」「公共職業能力開発施設等入学者」「就職者」「一時的な仕事に就いた者」に続く「左記以外の者」の人数について高等学校(全日制課程・定時制課程)の47,661人と高等学校(通信制課程)の20,846人を合わせた人数。

*4 高校中退と貧困については例えば埼玉県の高校教員であった青砥恭氏の「ドキュメント高校中退--いま、貧困がうまれる場所」 (ちくま新書)などが詳しいです。Web上ではイケダハヤトさんが読書録を書かれています(まだ東京で消耗してるの?(本)青砥恭「ドキュメント 高校中退 いま、貧困がうまれる場所」

*5 出張相談の限界と日常交流型の相談の可能性については拙著「高校生の潜在的ニーズを顕在化させる学校図書館での交流相談 : 普通科課題集中校における実践的フィールドワーク」をご参照ください。

*6 公的支援が必要な人に届いていない現状については拙記事「発見の遅れは誰のせい? "厚木男児遺棄事件"にみる行政サービスの問題点|ウートピ」や「児童虐待にもつながる「飛び込み出産」はなぜ起こるのか? "隠れ妊婦"を救済する制度とその課題|ウートピ」もご参照ください。