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32歳の童貞のおっさんだけど、今年風俗に行ってきたんでした(1)

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今年もあっという間に1年たって、気づいたら12月も半ばを過ぎていた。基本的に引きこもり気質な上に、よりにもよってフリーライターなんてやっているもんだから、下手をすると1ヶ月やそこら、ほとんどまともにしゃべらないなんてすらある僕だが、ありがたいことにこの時期になるとボチボチと忘年会へのお誘いが来る。

ただ、仕事関係で会う人はまぁいいのだけれど、学生時代からの友人なんかと久々に会う忘年会となると、どうしても何かひとネタ、場を盛り上げるような話を持っていかざるを得ない。別になくてもいいんだけど、かといって今年の仕事がどうだったなんてこと、さすがに友だち同士で長々話すようなことではない。どうせなら、プライベートで何があったみたいな話をしたいし、結局そうなるのだ。

僕は今年で32歳になったのだが、この世代は一般的には比較的話題に事欠かない。まずその年結婚した人や子どもが生まれた人が多い。結婚してない人も「そろそろかな」なんて話が出てくる。もう子どもがいる人は、日一日と成長していく子どもの話で盛り上がる。逆にいうと、おおむねこの世代のプライベートといったら、そういう家族の話になっていくのだ。

ところが、彼女いない歴32年であるところの僕はというと、そういう話にてんで縁がない。恋愛花盛りの学生時代から恐るべき童貞として仲間内にその名を轟かしてきた僕は、たいてい年末には「今年は誰にフラれた」なんてネタを仕込んでいくのが通例だったわけだが、まぁ、この年になるとそもそもフラれることすら難しい。今年なんて独身の女性に会った回数が数えるほどしかないのだから、当然といえば当然だ。

なので、今年は忘年会の"お土産"をどうすべきだろう、なんてことをしばらく考えていた。まぁ、今年も平常進行で「童貞歴32年を超えました」なんて話をするしかないかな、と思っていたところで、唐突に思い出したのだ。

そういえば、今年風俗行ったんだった、と。

三十路の独身男が風俗行った話なんて、普通は酒の肴にもならないのだが、こと僕に関してはそうでもない。面白いかどうかはともかくとして、年末の隠し球としてしばらく場を盛り上げる程度の話題にはなる。世の中的にいったって、32歳で初めて生で(母親以外の)おっぱい見たような男の感想なんて、そうそう聞く機会はないだろうから、レアといえばレアだ。

我ながらなんでこんな大ネタをほとんど誰にもいわずに、自分でも忘れかけてしまっていたか不思議だったのだが、まぁ、これには理由がある。

「彼女ができました」っていう話なら、まぁ、別に誰に話したって「おめでとう」で済む話なのだが、さすがにこの年でも「風俗行ってきました」となると、話す相手を選ばざるをえない。聞いて「マジでwwwwww」と爆笑してくれるような間柄の人でないと、いわれても何といっていいかわからないからだ。だからたとえば、誰かの結婚式とかで級友に会っても、男女問わずいろんな人がいる場でそんな報告するわけにはいかない。かといって、個別で呼び出して話すような類いのものでもない。Facebookに書き込むような話題でもない。「いいね!」、めっちゃ付きそうだけど、その分失うものも多そうだし。

そんなわけで、「まぁ、そのうち」と思っているうちに、あんまり報告する機会がないまま、自分でもすっかり忘れてしまっていたのだ。

じゃあ、なんでそんな知り合い間でも扱いづらいような話を、わざわざワールドワイドウェブで全世界に向かって書こうとしているのか、という話なのだけど、大げさな言い方をすると、責任を取らなきゃいけないんじゃないかという気持ちがあったからだ。

僕がライターになった間接的なきっかけは、2000年前後にあったテキストサイトブームだった。今でいうとブログみたいなものだけど、当時はHTMLの手打ちでたくさんの人が日記めいたものを書いていた。ただ、そこで書かれるのは今のブログのように「何を食べました」みたいな内容ではなく、全身全霊で笑いを取りにいくようなタイプのものが中心で、「ReadMe!JAPAN」というサイトを中心に(というか象徴として)界隈をつくっていた。その中には「童貞系」と呼ばれるジャンルがあり、古くは「アジア系」、その後は「aco」といったサイトが牽引役となり、今につながる非モテ系の笑いを取っていた。その中のひとりが僕だった。

今のネットでは、非モテは免罪符的なポジションになり、むしろ「リア充」と呼ばれることを恐れるという不思議な状況が生まれているが、当時はまだ素直な状況だった。大学生にもなって童貞なんていうのはストレートにダサかったし、リア充のほうが当たり前に"偉かった"。だからこそ、ひがみ混じりに「モテてー!」と叫ぶ童貞系テキストサイトは新鮮だったし、おもしろみがあった。それが、いつの間にか、体感的にいえば、2004年の「電車男」ブームのあたりから逆転していった。「リアルではガチで引かれるけど、ネットではでかい顔ができる」だったはずの非モテ系は、徐々に「ネットでは非モテにあらずんば人にあらず」になっていき、やがて「リア充と呼ばれるよりもカジュアルに非モテを名乗った方が当たり障りがなくていい」に定着していった。

非モテ系テキストサイトブームのど真ん中で育った僕は、いわば非モテブームの第一世代だという自負がある。その自負を持って、いびつな承認欲求と自意識のなかで、こじれていく「非モテ系」の10年を見守ってきた。

そういう僕がポンと風俗に行ってきたっていうのは、たいした話ではない。それを仲間内だけでちょっと話して、あとは墓場まで持っていったってもちろんかまわない。だけど、このこじれてしまった非モテ論壇に今、何らかの形で返しておくのが、非モテブーム第一世代としての責任なんじゃないか、みたいなことを、まぁ何とも偉そうに思ったのだ。

とはいえ、すでに書いたように何かとデリケートな話題で、この年になってしまうと社会人生活にもギクシャクとした陰を落としかねないので、最初ははてなの匿名ダイアリー(いわゆる増田)にでも匿名で書けばいいかとも思った。

けど、つまんないな、と思ったのだ。それなりに思い入れのある文章を書くのに、仮に何らかの反響があってもそれに当事者として返事もできないのはつまらないという、小さな承認欲求ゆえに、というのももちろんある。だけど、同時にそれってライターとしてどうなのよ、というのもあった。ジャーナリストみたいなタイプならともかく、僕はどちらかといえば、多少なり自分自身を切り売りしてものを書くようなタイプのライターだ。マンガが専門ではあるけど、その物語を自分のフィルターを通して語るというようなところが、割と僕の本分だから。

そういう自分の切り売りをするような人間が、「これについては切り売りできない」なんてつまんないことをいっちゃダメだよな、と思ったのだ。

なので、面白いか面白くないかはこうして書いている今も、自分ではよくわからないのだけど、とりあえず吐き出すだけ吐き出してみようと思うのだ。つまんないポエムだといわれるのも多少覚悟の上だけど、ポエムじゃないところに着地すればいいと思う。だから、もし少しでも興味を持ってくれたなら、この少々長い僕の話におつきあい願いたい。そんで、僕の個人的な知り合いで「風俗行ったんだってwwwww」と笑い飛ばせない人は、まぁ、見なかったことにでもしてくれればと思う。

【次回記事】32歳の童貞のおっさんだけど、今年風俗に行ってきたんでした(2) ※次回記事に行く前に、ひとまず動物の画像集をお楽しみください

なぜか写っちゃった動物たち125連発
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