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女性管理職の割合が上昇しない不都合な理由

2014年09月29日 00時28分 JST | 更新 2014年09月29日 00時28分 JST
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安倍政権は2030年までに、管理職など指導的な地位に就く女性の割合を30%にするという目標を掲げています。ところが厚生労働省の調査によれば、企業の課長職以上に占める女性の割合が2013年度は6.6%と、11年度に比べて0.2ポイント下がってしまいました。こんなことでは、「男女平等」など夢のまた夢です。

日本企業の管理職はなぜ男性ばかりなのか。かつては、「女性は短大卒が多いからだ」とされていましたが、90年代半ばから短大の4年生大学への鞍替えが相次ぎ、男女の教育格差は大幅に縮まりました。それにもかかわらず、女性管理職の比率は一向に増えません。

さらに驚くべきことに、日本の会社では、大卒女子よりも高卒男子の方が管理職になる比率がはるかに高いという現実があります。日本企業では高卒でも40代のうちに6割以上が課長職以上になり、その比率は大卒の男性とほとんど変わりません。それに対して大卒の女性が管理職になる割合は40台半ばでも20%超で、それ以降はほとんど上昇しないのです。

欧米では昇進・昇格の基準は学歴・資格・経験など客観的に評価可能なものでなければならず、年齢や性別、人種や宗教で判断すれば差別として重大な社会問題になります。この"世界標準"からすると、日本はいまだに性別で労働者を差別する前近代的な身分制社会、ということになります。

しかしこのように批判されても、サラリーマンの多くは釈然としないでしょう。なぜなら、高卒の男性が大卒の女性より管理職に早くなれるのには"正当な理由"があるからです。

日本企業における"公正"な昇進・昇格の基準とはいったいなんでしょう。

経済学者の研究によれば、男女格差の要因として「週49時間以上働いているか」を加えると、日本企業の行動をきわめてうまく説明できます。さらに女性が長時間労働した場合、昇進率が大きく伸びることもわかっています。日本の会社は性差別というよりも、労働時間によって管理職への登用を決めているのです。

しかし、労働時間を会社への貢献度として評価するのは、子どもを育てながら働いている女性にとってきわめて理不尽な制度です。中高年の男性は専業主婦に家庭のことをすべて任せているからこそ、深夜まで残業(サービス残業)できるのです。

この問題を解決するひとつの方法は、東南アジアなどから大量に移民を受け入れ、気軽に家政婦を雇えるようにすることです。香港やシンガポールでは一般家庭にも住み込みの家政婦(阿媽)がおり、夫婦共働きを可能にしています。

これが日本の文化に合わないとしたら、あとは男性の労働時間を女性並みに短くするしかありません。そのためにはサービス残業に厳罰を課し、経営者に「残業させたら損だ」と思わせるのが効果的です。さらには、配偶者控除や(年金・健康保険料が免除される)第3号被保険者など、専業主婦を優遇する制度はすべて廃止すべきです。

大学の文系学部が女子学生ばかりになったように、平均的な知能は男性より女性の方が高いとされています。知識産業で男女の競争条件を完全に平等にすれば、女性管理職の割合は5割を超えることになるでしょう。

これが、素晴らしい日本の未来であることは間違いありません――競争にさらされる中高年のサラリーマンを除けば、ですが。

参考:山口一男「女性の活躍推進へ 企業の間接差別、法規制を」

(日経新聞「経済教室」2014年8月29日)

週刊プレイボーイ』2014年9月22日発売号

(2014年9月29日「橘玲 公式サイト」より転載)