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「自分にやさしく相手に厳しい」の失敗

2013年05月16日 23時24分 JST | 更新 2013年07月16日 18時12分 JST

アベノミクスによる株価の大幅な上昇を追い風に、安倍政権が高い支持率を維持しています。それとは対照的に、かつて政権を担った民主党の惨状は目を覆わんばかりです。

先日も、前復興大臣が7月の参議院選挙を見据えて民主党を離党しました。現職の閣僚が次々と落選した総選挙を見て、このままでは再選は困難だと判断したのでしょう。

参議院は任期が6年で解散もないので、いちど落選するとよくても3年、同じ選挙区に改選期の異なる同僚議員がいれば6年の浪人生活を覚悟しなければなりません。人生の残り時間が有限であることを考えれば、再選のためになりふり構わなくなるのも当たり前です。

私は政治にはさして関心はないのですが、たまたま知り合いが政治家になったので、2009年夏の政権交代直後の民主党のパーティを覗きにいったことがあります。当時、鳩山政権の支持率は70%を超えていて、事業仕分けが国民的な注目を集めていました。次々と登壇する大物議員も、広い会場を埋める新人議員たちも、「日本を変える」という高揚感に包まれていました。それからまだ3年半しか経っていないことを思えば、まさに隔世の感です。

当時の民主党は、自民党に代わり得る責任政党として"歴史的な政権交代"を実現した以上、過去は全否定されなければならないと考えていました。とりわけ彼らの敵対心は高い支持率を誇った小泉政権に向けられ、「官邸主導」も「規制緩和」もネオリベの蔑称のもとに一蹴され、すべてをスクラップして統治構造をいちからつくり直す構想が声高に語られました。

ところが具体的な政策や数字を掲げたマニフェストを「国民との契約」としたために身動きがとれなくなり、「ばらまき」や「うそつき」の批判を浴びることになります。とりわけ、「予算を組み替えれば財源はいくらでも出てくる」といっていたのに、手のひらを返したように消費税増税に突き進んだことが致命傷になりました。

民主党政権の3年半は、かんたんにいえば、相手を口汚く罵っていた奴が、「だったらお前がやってみろよ」といわれて責任者になったら、けっきょくなにひとつマトモにはできなかった、という話です。人間関係において、これほど信用を失墜させる行動はありません。

複雑な利害のからむ政治の世界では、自分がつねに正しく相手がすべて間違っている、などということはありません。しかし民主党は、勧善懲悪の時代劇のような善悪二元論に立って、自民党時代の改革をすべて反故にし、官僚組織を敵に回し、統治の崩壊を引き起こしてしまったのです。

さらにいえば、私たち凡百の人間に「歴史を変える」ことなどできるわけもありません。しかし民主党の議員のなかには、エリート意識とヒーロー願望から自分を坂本龍馬になぞらえるひとが溢れていました。こうした傲慢さもまた、有権者から忌避されることになった理由でしょう。

もっとも、この失敗は民主党だけのものではありません。世の中には、自分を"絶対善"として他人を批判し、全否定することが正義だと思っているひとがいくらでもいるからです。

相手に投げつけた言葉は、いずれ自分に返ってくる。こころしておきたいものです。

(この記事は『週刊プレイボーイ』4月15日発売号に掲載された記事の転載です)