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既得権を守るために「日本人はバカだ」という

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楽天の三木谷浩史社長が、医薬品のネット販売規制に抗議して、政府の産業競争力会議の民間議員を辞任すると表明しました(慰留され11月18日に撤回)。この会議はアベノミクスの三本目の矢である成長戦略の要とされていましたが、その象徴的存在だった三木谷氏に三行半を突きつけられたことで、安倍政権の規制緩和への本気度が問われています。

楽天の子会社などが原告となった行政訴訟では、医薬品のネット販売を禁止した厚労省令を、最高裁が「薬事法の趣旨に適合せず違法で無効」と判断しました。これでようやく自由化が進むかと思えば、厚労省は薬事法を改正して一部の市販薬のネット販売を禁止するほか、処方薬については対面での販売を法律で義務づけるといいだしました。これでは三木谷氏が激怒するのも当たり前です。

厚労省は、ネット販売を禁止する五つの市販薬は「劇薬」で、医師が処方箋を出して薬剤師が提供する処方薬については「ネットでは安全が保証できない」と説明しています。

一見するともっともらしい理屈ですが、規制について考える場合は二つの視点が大事です。ひとつは「その規制は誰の利益を守っているのか」ということ。もうひとつは、「規制に科学的な根拠があるのか」ということです。

患者のなかには、身体が不自由で薬局まで行くことができないひともいます。病名を知られるのが嫌で、薬を買うのを躊躇しているひともいるでしょう。処方薬のネット販売が解禁されれば、こうした患者の利便性が大きく向上することは間違いありません。

厚労省や薬剤師の業界団体は「ネット販売は危険だ」と繰り返しますが、対面販売の強制によって不利益を被っているひとたちの存在についてはいっさい口にしません。また一部の市販薬への規制では、そもそも「劇薬」が町の薬局で誰でも買えること自体がおかしいのですが、これについての説明もありません。

規制緩和をめぐる議論でいつも不思議に思うのは、なんの根拠も示さずに情緒に訴える主張がいまだにまかり通っていることです。

アメリカやイギリス、ドイツなどでは薬のネット販売が解禁されています。もし厚労省や薬剤師の団体がいうように処方薬のネット販売が患者の安全を脅かすのなら、これらの国ではトラブルが頻発し、消費者団体などがネット販売の禁止を求めているはずですが、そのような動きはありません。日本ではニセ薬の問題ばかりが取り上げられますが、「薬を処方してもらうためだけに病院に出向く手間がなくなり、医療費の削減にもつながっている」と評価されてもいます。

前回、マリファナや売春の自由化について書きましたが、冷戦が終わって自由経済の中で生きていくほかないとわかってから、さまざまな国が効率的な制度を模索して社会実験を行なっています。だとしたらもっとも費用対効果の高い政策立案とは、他の国でうまくいっている政策を取り入れて改良していくことです。

既得権にしがみつくひとたちは「日本の事情」ばかりを強調しますが、欧米で成功したことが日本できないというのは、「日本人はバカだから規制が必要だ」といっているのと同じです。薬局の利益を守るためだけにこういう「自虐的」な主張が横行するのは、そろそろ終わりにしたいものです。

(※ 『週刊プレイボーイ』2013年11月25日発売号に掲載された記事の転載です)

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