リオ五輪~治安が心配? 実は治安部隊が殺人を犯している

罪のない子どもが、警察や治安部隊に突然撃ち殺される事件が起きている。リオ五輪の開催が決定してから、警察や治安部隊は市民を2,500人以上殺害したという。

2015年4月のある夕方のことだった。リオデジャネイロのファベーラ(貧民街)で、エドワルド(10歳)は自宅の玄関前に座りいつものように1人で遊んでいた。母親が夕食の支度をしている間、姉と遊ぼうと姉の帰宅を待っていたのだ。

突然その日常が、大きな音と共に終わってしまった。エドワルドは母親に助けを求めて叫び、それを聞いた母親はすぐに家を出て、何が起きたかを悟った。そこには軍の治安部隊に囲まれて死にゆく息子の姿があった。駆け寄ろうとした母親に対し、治安部隊の一人は近づくと撃つと脅してきた。

数分後、近所の人たちが集まってきて治安部隊から母親を守り、他の子どもも撃たれないようにした。その後、警察の殺人課の捜査でエドワルドを撃った銃は治安部隊の隊員が所持していたものだったことが判明したが、正当防衛だとの隊員の主張により裁判はまだ継続している。

このような罪のない子どもが、警察や治安部隊に突然撃ち殺される事件が起きている。リオ五輪の開催が決定してから、警察や治安部隊は市民を2,500人以上殺害したという。FIFAワールドカップが開催された2014年、同じように警察はファベーラに集結して、怪しいと感じた市民に対して警告すらせず発砲している。

映画『シティ・オブ・ゴッド』の舞台とされたファベーラは、麻薬売買やそれを仕切る組織の抗争で危険極まりない場所と言われている。

警察はリオ五輪の開催を機会に、治安の改善を徹底させようとファベーラへ多くの警察や軍の治安部隊を送り込んだ。オリンピックが無事開催されるためにと言えば外聞はよいだろう。しかし、真実はオリンピックを口実に、警察は市民を狙い撃ちして殺害しているのだ。

地方からリオへ出稼ぎにきて、貧困から抜け出せない人たちがいる。仕事がなく収入がなければファベーラに住むしかない。貧困にあえぐ人たちは、私たちと同じ市民だ。政府の支援が少ないだけでなく、警察までもが味方にならないとすると、誰を頼ったらよいのだろうか。

オリンピック開催中はテロなどを警戒してますます警備を強めるだろう。オリンピック憲章によれば、オリンピズムは「肉体と意志と精神のすべての資質を高め、バランスよく結合させる生き方の哲学」とされる。

この、オリンピズムは「スポーツを文化、 教育と融合させ、生き方の創造を探求するもの」であって、「その生き方は努力する喜び、 良い模範であることの教育的価値、 社会的な責任、さらに普遍的で根本的な倫理規範の尊重を基盤とする。」という。

オリンピック開催地で、オリンピックのためにといって警察が市民を殺害することは、このオリンピズム精神に真っ向から反する。

率先してリオ五輪で市民の命を守るよう、オリンピック委員会はブラジル政府へ働きかけるべきである。

(アムネスティ・インターナショナル日本)

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▽ 署名:ブラジル警察はフェアプレーを!

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