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「エジプト革命」から5年 自由への希望はどこへ

2016年02月29日 22時52分 JST | 更新 2017年02月28日 19時12分 JST

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ムバラク政権が倒れ、歓喜に沸く市民(2011年2月12日・タハリール広場)© PEDRO UGARTE/AFP/Getty Images

5年前の1月25日、大規模な反政府デモがエジプト各地で起こった。デモは18日間続き、ついには、ムバラク政権を退陣に追い込んだ。

政府批判を徹底して弾圧してきた独裁政権が倒れ、自由に声を上げることができるようになったと、市民は喜びに沸いた。しかしその希望は長くは続かなかった。新たに選ばれた大統領は、政変後の不安定な治安情勢と経済停滞に対する策を打ち出せず、むしろ権力保持に腐心し、市民の期待は裏切られた。その不満はやがて、新たな反政府運動に膨れ上がる。大統領辞任を求める大規模なデモが各地で起こり、ついに軍が事態収拾に乗り出した。

こうして新政権はわずか1年で幕を下ろした。

軍が政権を掌握し議会が停止してから、内閣と大統領が立法機能を果たすという異常事態が続いていた。その間、抗議規制法、テロ対策法などの表現・集会・結社の自由を制限する法律が次々と大統領署名によって成立した。今年1月、昨年の選挙を受けてようやく議会が復活したが、大統領支持者が圧倒的多数を占め、ムバラク時代の政権幹部や官僚、治安機関出身者も多くいる。

■ 再び警察国家に

今日、NGO権利と自由を求めるエジブト人委員会代表のアーメドさんは逃亡中の身である。1月9日、ひいきのコーヒー店に警官らが踏み込んできたが、危機一髪で逃れた。アーメドさんの団体は、強制失踪者数が急増していることを指摘した。去年1年間だけで何百人もが治安部隊に連れ去られた、と。

身の危険を感じながら活動しているのは彼だけではない。この数週間の間で、治安部隊はデモに関わった活動家や政府の政策に批判的なジャーナリストを一斉検挙している。

ムバラク政権が崩壊して5年、エジプトは再び警察国家に戻っている。あらゆるところに出没する国家治安部隊の力は、いまも強力だ。

人権活動家たちの前には大きな壁が立ちはだかる。資金を没収され、多くが国外渡航を禁止されたり、捜査を受けたりしている。秘密警察はどこにでもいる。彼らは電話を盗聴し、ソーシャルメディアの投稿を監視し、路地をうろついて目を光らせる。

あちこちで起きる「テロ」らしき行為。だが摘発できない。そのため、当局の網は全土にまで広げられた。しかし下手な「テロ」対策の成果は、非暴力の活動家を捕まえただけで、武装グループは網をかいくぐった。

エジプト内務省によると、これまでに数万人、昨年だけで12,000人弱が逮捕された。その結果、刑務所や警察署などの拘禁施設は満杯状態である。犯罪者や拘束者らは、すし詰めの監房に入れられ、コンクリートの冷たい床の上で充分な食べ物や薬や衣類もなく過ごしている。昨年12月には、何百人といる被告が法廷に入りきらずに、注目事件の裁判が延期された。

刑事司法制度は、完全に麻痺している。マムード・フセインさんは、「拷問のない国家」と書かれたTシャツと「1月25日革命」と書かれたスカーフを身に着けていたという理由で、起訴も裁判もないまま2年近くも勾留されている。

被拘禁者に対する拷問などの虐待もまん延している。国家治安警察は、激しい暴行や電気ショックを与え、長時間の無理な姿勢を強要し、あげくは性的暴力にも及んでいる。

■ 「テロとの戦い」は免罪符ではない

治安警察が市民を街や職場、自宅から連れ去る一方で、政府は「テロとの戦い」と治安の名の下で、人権を奪い去るのに余念がない。

現在、アメリカとEUは、紛争で混乱する同地域の安定のための重要な存在として、エジプトの治安部隊を見るようになっている。シリアとリビアの混乱拡大を防ぎ、「イスラム国」を自称する武力勢力から守る防波堤だという見方だ。

ジョン・ケリー米国国務長官は「過激派とテロリストに対する共闘」と口にし、英国は「過激主義とテロと戦う上で、エジプトは重要な戦略パートナーだ」と述べた。

しかし、治安当局は非暴力の活動家と、殺害を目的とする集団を区別できない、あるいは区別しようとしない。諜報機関は、刑務所に収容しきれないほどに多数の活動家、政治家、反体制派、人権擁護活動家、ジャーナリストらを投獄している。

一方、武装グループは、何度も当局の網をかいくぐっている。2011年以降、何百もの治安部隊員を殺害し、市民、法律家、外国人を襲っている。

治安部隊や軍は、武装グループを法の下の裁く機会を逃し、一方、軍事法廷では不当な裁判を行っている。襲撃事件の実行犯として、犯行当時拘束中の人間を死刑に処した例もあった。

安定と治安を約束するエジプト政府に、国際社会は惑わされてはならない。拷問、過剰な武力、恣意的拘束、強制失踪など、反対する者すべてを封殺する「治安」国家を、重要な戦略パートナーとみるべきではない。

国際社会が過激主義とテロと戦うために地域の連帯を求めるならば、エジプトに武器の供与、軍事支援の強化などという短絡的な提案ではなく、治安機関と司法の真の改革を求める圧力を強めるべきである。

(アムネスティ・インターナショナル日本)

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2014年1月、当時18歳だったマムード・モハメド・アームド・フセインさんは「拷問のない国のために」というロゴ入りのTシャツを着ていたことを理由に、逮捕されました。エジプト警察によるひどい拷問で、「禁じられた活動団体への所属」、「武器の不法所持」罪などウソの自白を強要され、今も刑務所の中で裁判を待っています。

エジプトの法律は、裁判もなしに、勾留できる期間を最大で2年と定めています。法律で許されている期限がとっくに過ぎているにも関わらず、当局は拘束のさらなる延長を決定しました。

今すぐツイッターで、マムードさんの釈放をエジプト大統領に要請してください。(以下例文)

.@AlsisiOfficial ‪#‎FreeMahmoud‬ jailed for wearing a T-shirt! ‪#‎stoptorture‬

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