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ジャーナリズムは犯罪じゃない~総選挙が近づくビルマ(ミャンマー)で強まる報道への圧力~

2015年08月02日 15時00分 JST | 更新 2016年07月30日 18時12分 JST

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逮捕されたユニティー新聞社の記者 ©private

ビルマ(ミャンマー)で5年ぶりとなる総選挙が、11月8日(日)に実施されることになった。この間、かの国では軍政から民政へ移行が進み、テインセイン政権が誕生した。アウンサンスーチー氏を含む多くの政治囚が釈放され、海外企業の進出も進んでいる。今やビルマ語ができる人材は引く手あまただという。

だが、同国の人権状況はいまも脆さをはらんでいる。総選挙が迫る中、メディアへの締め付けや嫌がらせが強化されつつあるのだ。

■□■ 報道規制は緩和されたのか ■□■

テインセイン政権のもとでは、報道規制も緩和が進められた。出版物の事前検閲は撤廃され、拘禁されていた記者が釈放された。現在はいくつかの民間の新聞社や放送局があり、政府に批判的なものも含め、メディア業界は活気づいている。

こうした改革は国際社会から歓迎され、今やビルマは投資のための「アジア最後のフロンティア」だと注目を集めている。しかし、軍政時代の厳しい規制はある程度緩くなったものの、真の出版・報道の自由にはほど遠い状況にある。

■□■ 再び増えた逮捕、投獄 ■□■

そんな中で実施される11月の総選挙だが、実は今、報道の自由が再び脅かされている。2014年に入り、メディア関係者の投獄が一気に増えたのである。政府は刑法の曖昧な定義を利用し、2015年7月時点で少なくとも10人の記者、メディア関係者が投獄されている。彼らは報道に携わる者として当たり前の仕事をしただけだが、有罪判決を受け、中には長期の刑を言い渡されたものもいる。

象徴的な事件は、ユニティー新聞社の編集長や記者など5人の逮捕であった。同新聞社は、マグウェ地域の工場で化学兵器を製造していると報道したため、2014年1月31日と翌日にかけて逮捕され、国家機密法に違反したとして起訴、同年7月に重労働を含む懲役刑を言い渡された。

この事件は、他のメディア関係者を震撼させた。これは政府の警告であり、政府が好まない記事を出せば同じ目に遭いかねないという恐怖が再び植えつけられたと、多くのメディア関係者はアムネスティの調査員に語っている。

また、同年10月、ビ・ミッドディ・サン紙の編集者ら5人が、刑法に基づいて2年の禁錮刑となった。彼らはアウンサンスーチー氏と少数民族の指導者が暫定政権構成メンバーに任命されたと報道しただけで、逮捕され、有罪判決を受けたのである。

■□■ デモを取材しただけで逮捕? ■□■

ユニティー新聞社の従業員5人が懲役10年の判決を受けた2日後、多くの記者が「報道を殺すな」と書かれたTシャツを着て、テインセイン大統領が出席しているイベント会場の外でサイレント・デモを行った。その直後、政府は50人以上の記者を告訴すると発表した。国際社会から非難の声があがったため実際には告訴されなかったが、この手の政府による脅しや嫌がらせも増えている。例えば2015年3月には立て続けに、労働ストや学生デモを取材していた記者やカメラマンが5人も逮捕された。彼らは数時間から3日間勾留された後に起訴もされずに釈放されており、当局による嫌がらせだと考えられる。

こうした「嫌がらせ逮捕」に加え、当局による記者の監視が軍政時代と変わらずに続いている。政府関係者が毎日のように記者を尾行し、写真を撮り、何を取材しているか探っているのだ。こうした日常的な監視も記者を不安にさせ、自らの取材活動を自主規制させてしまうことにつながっている。それこそ当局の狙い通りと言えるだろう。

報道を含む表現の自由は、社会のあらゆる人びとが多様な情報を受け取り、知る権利のために欠かせないものであり、その他の人権を実現するために不可欠な礎である。だからこそ、その国の人権状況を計る重要なバロメーターと見なされている。テインセイン政権が報道の自由を規制することは、ビルマのあらゆる人権状況にいまだに大きな欠陥があることを端的に示している。

総選挙まであと5カ月あまり。アムネスティは、ビルマにおいて自由なメディア活動が保障されるよう注意深く見守っていく。

(アムネスティ・インターナショナル日本)

※ ビルマの国名表記について

1989年、同国の軍政は、国名の英語表記を「ビルマ(Burma)」から「ミャンマー (Myanmar)」に変更しました。しかし、正当なプロセスをふみ樹立された政権で ないことは明らかであり、また一方的な国名表記の変更に対する国民の反発も強 くあります。そのため、同国の民主化を求める人びとや欧米の一部の国々、マスメディアな どは、「ビルマ」という表記を使い続けています。 こうした事情を踏まえ、アムネスティ日本は、国名を「ビルマ」または 「ビルマ(ミャンマー)」と表記しています。

▽ ビルマ(ミャンマー) 人権をめぐる2014年の動き(アムネスティ・レポートより)

http://www.amnesty.or.jp/human-rights/region/asia/myanmar/details.html

▽ ビルマ:最新の報告書を読む(PDF)

ビジネス優先?ビルマの銅山における企業の犯罪と人権侵害

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