ロシア:NGOは「国家の敵」か

ロシアの人権NGO「メモリアル」に法務省から1通の通知が届いた。「ロシア政府を転覆し政治体制を変えるよう呼びかけており、ロシア連邦憲法の秩序を損なう内容を発見した」と書かれていた。

モスクワにある人権NGO「メモリアル」の事務所。壁の落書きは、「外国エージェントは米国がお好き」と書かれている。©AFP/Getty Images

ロシアの人権NGO「メモリアル」に法務省から1通の通知が届いた。11月9日付の通知には、メモリアルの公式サイトを調べた結果、「ロシア政府を転覆し政治体制を変えるよう呼びかけており、ロシア連邦憲法の秩序を損なう内容を発見した」と書かれていた。

この通知は、メモリアルにとって壊滅的な結末をもたらしかねない手続きが始まったことを意味している。

法律上、メモリアルには、通知の内容に対する異議申し立てを行う猶予が15日間ある。しかし、この件はすでに連邦検察に回され、手続きが開始されている。今やメモリアルの職員たちは、行政法違反の罰金を課されるのか、刑法の嫌疑で起訴されるのか、最悪の場合は事務所閉鎖になるのか、連邦検察の判断を待つしかない状況だ。

同団体の閉鎖はロシア市民社会にとって著しい損失となるだけでなく、表現の自由にとっても大打撃だ。プーチン政権が復活した2012年以降、同国の表現の自由の権利は風前の灯である。

メモリアルの活動目的は、過去のロシアでの重大な人権侵害を忘却しないようにすること、同時に、現在進行形の人権侵害に向き合うことである。

この動きに対し欧州評議会は、「最も尊敬すべき、よく知られた団体の1つである」メモリアルへの支援を素早く表明した。

メモリアルは、ロシア法務省を怒らせるような何をしたというのか? おそらく、団体の機関誌で、ウクライナ東部における紛争へのロシアの関与を武力侵略として批判し、2012年5月にモスクワのボロトナヤ広場で反プーチン政権のデモに参加した人びとに対するでっち上げの嫌疑と起訴を批判したことが理由だろう。

メモリアルへの弾圧は、政権批判を封じ込めるためのNGOに対する一連の攻撃の1つだ。ロシア政府は2012年に「外国エージェント法」を成立させ、国外から助成金を受けているNGOはすべて「外国機関として活動する組織」として登録することを義務付けた。法律上、「外国エージェント」と判断されるにはその組織が「政治活動」をしていることが要件だが、その定義があいまいで当局によって都合よく解釈され、その結果、海外から助成金を受けているNGOはすべて政治活動に関わっていると見なされるのが実態だ。

登録しないと多額の罰金を課され、場合によってはスタッフが最高2年の禁錮刑を言い渡される危険すらある。2014年4月、ロシア憲法裁判所は「外国エージェント」という用語は否定的な意味合いを含んでおらず、したがってNGOの権利を侵していないと判断した。実際には、「外国エージェント」はロシアの人びとにとって冷戦時代の「諜報活動」を強く連想させる言葉である。

ほとんどのNGOが「外国エージェント」として登録されることを拒否したため、2014年5月に同法はさらに改悪された。団体側の同意なしに、法務省の判断のみで「外国エージェント」に登録することができるようになったのである。メモリアルは同意なしにリストに加えられた、最初の5団体の1つであった。その改悪以来、法務省はこれまでに101団体を「外国エージェント」として登録している。

2015年5月、ロシア当局は「好ましくない団体」に関する法を成立させ、NGOが海外から助成を受ける手続きを妨害し始めた。「外国エージェント法」の目的がNGOの信用と名前を貶めることとするなら、新法はより直接的に資金源を断つために作られたといえる。

「好ましくない団体」に関する新法によって、検察当局は、特定の外国の団体が国家の「憲法的秩序」に脅威をもたらしていると独自に判断することができ、事実上、その団体によるロシアでのいかなる活動も、あるいはその団体とのいかなる協力も禁止することができる。いったん決定が公になれば、当該団体との協力や支援は違法行為となり、多額の罰金を払うことになる。こうした「違反」を繰り返した場合、禁錮刑を含む刑事罰を受けるおそれもある。

今年7月、米国のナショナル・エンドーメント・フォー・デモクラシー(NED)が新法の悪影響を初めて被った。NEDは何年にもわたって、ロシアの最前線で活動する人権NGOや市民活動家に助成してきた。20を超えるNGOがこの数年、NEDの助成金プログラムによって支えられていたのである。

今月起こった当局によるメモリアルへの圧力は、ロシア政府がさらに弾圧の手を強め、かつてないほど徹底的に市民社会を圧迫する意図があることを明らかに示唆している。

メモリアルのアレクサンダー・チュルカソワ理事長は、「法務省からの通知によってロシアは、ソビエト体制とその批判者が闘っていたあの時代に引き戻された」とコメントしている。

今や政府の方針について議論することや批判することは、何であっても許さない、というわけだ。

平和的な方法による批判をこのような手段で抑え込むことは、個人やNGOが社会や政策に貢献する機会をも奪うことだ。それはロシアにとって大きな損失となろう。

By ヘザー・マクギル(アムネスティ・インターナショナル調査員)

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