ペンケースがスマホの充電器に! 福島県で東日本大震災を経験したデザイナーが考案 クラウドファンディングで開発費調達

「どんなにいいものでないと使ってもらえないと意味がない。自分が実際に欲しいものを作った」
「reimee」の開発に取り組んでいる菅井麻絢さん
「reimee」の開発に取り組んでいる菅井麻絢さん
Asahi

普段は眼鏡やペンのケースとして使い、非常時にはスマートフォン(スマホ)の充電器に早変わり。そんな防災グッズを東北出身のデザイナーが考案した。東日本大震災のときに電話が使えず、「生きた心地がしなかった」ことが発想の原点だという。開発の資金調達のため、クラウドファンディングで支援を募っている。

「june」の名前でデザイナーとして活動している菅井麻絢さん(28)は7年前に東日本大震災が発生したとき、福島県の中通りにいた。友人の家に行く途中の車の中。電話はつながらず、友人や家族の安否は分からない。周囲ではビルが1棟崩れてしまうような大きな被害が出ており、しばらくは動けないまま、不安な状態が続いた。

東日本大震災発生翌日の朝日新聞朝刊1面
東日本大震災発生翌日の朝日新聞朝刊1面
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同じころ、太平洋沿岸の地域が津波に襲われた。その中の一つだった仙台市宮城野区は、菅井さんが中学まで住んでいた場所。後に報道で甚大な被害を知った菅井さんは、地震による被害はもちろん、その後の津波でなくなった人が多かったことに大きな衝撃を受けたという。

「もし自分が動けなくなった場所が違っていたら、そのまま死んでいたかもしれない」

防災を考えるなら、何よりも情報が大事――。菅井さんが今回クラウドファンディングをしている「reimee」(レイミー)は、こうした実感からたどりついた防災グッズだ。

普段は箱として使い、緊急時にはケースを展開してソーラーパネルとして、スマホなどの充電ができる。大災害のとき、電話回線に比べるとインターネットのほうがつながりやすい。スマホさえ使える状態なら、避難に必要な情報を集めたり、SNSなどを介して家族や知人と連絡をとったりすることができる。

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充電に使うケーブルやバッテリーは2個ずつあり、2人同時に使うことも可能だ。パネルを内側にすることでデザイン性を高めた。「どんなにいいものでないと使ってもらえないと意味がない。自分が実際に欲しいものを作った」と説明する。

あの日の恐怖を忘れることはないが、時の経過とともに防災の意識が薄れてしまうことも感じている。

「自然災害は防げなくても、1人1人の行動で被害の拡大は防げるはず。あの場にいなかった人も、家族や知り合いの安否が分かるまでは不安に思ったはず。その気持ちを忘れないでほしい」

reimee」の開発費を集めるためのクラウドファンディングは2月26日まで。プロジェクトの詳細は、https://a-port.asahi.com/projects/reimee/。(伊勢剛)

「あなたの日常に防災をプラスする」をテーマに、A-portとWonderFLYが協力してアイデア防災グッズ8件のクラウドファンディングを実施中。A-portの特設ページは、https://a-port.asahi.com/partners/wonderfly/

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