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ソニー創業者・盛田昭夫氏の絶版本「学歴無用論」を復刻へ 伝説の技術者・木原信敏氏の長女が企画

ベストセラーとなった本だが、現在は単行本・文庫とも絶版になっている。

2017年08月29日 17時33分 JST | 更新 2017年08月30日 12時37分 JST

ソニー創業者の故・盛田昭夫さんが著した「学歴無用論」(1966年)。日本企業の年功序列や学歴偏重を批判し、ベストセラーとなった本だが、現在は単行本・文庫とも絶版になっている。

この本を復刊させようと、FieldArchive代表の木原智美さん(44)=東京都=がクラウドファンディングの「A-port」で支援を募っている。

朝日新聞

「学歴無用論」の復刊に取り組む木原智美さん

木原さんは、技術者としてソニーを創業期から支えた故・木原信敏さんの長女。

「小さな一企業を世界に名を連ねる会社にした立役者が、自分の言葉でその過程をリアルに書いている。過去の懐かしいお話ではなく、今生きている話。『ソニーみたいな会社を作りたい』と考えるような現代の起業家にこそ読んでほしい」

2015年から取り組んでいる「名著復刊プロジェクト」の一環で、今回が2冊目。プロジェクトのきっかけになった1冊目は、信敏さんが書いた「ソニー技術の秘密」(1997年)だった。

信敏さんは日本初のテープレコーダーや世界初のビデオテープレコーダーなどの開発に携わり、後にその名を冠した「ソニー木原研究所」で社長・会長を務めた伝説的な技術者。

技術者という立場でソニーの当事者が歩みを振り返った本は珍しかったため、出版社が絶版とした後も企業の研修会や勉強会で使われ続けた。

木原さんの実家には「自宅にある本を売ってほしい」という申し入れが頻繁にあったという。

売ったり譲ったりしているうちに在庫も少なくなってしまったが、出版社は一度絶版にした本をわざわざ増刷しようと考えることはめったにない。今の時代にあうように内容を一部書き足す方法もあったが、木原さんは「父がこれでいいと出した本の内容は、できれば変えたくない」と、自分たちの手で復刊する道を選んだ。

朝日新聞

絶版となっている「学歴無用論」(右)と復刊された「ソニー技術の秘密」

著作権はどういう扱いなのか、興味のある人に本をどう届ければいいのか...本業がプログラマーの木原さんにとって本を作るのは手探りの状態だったが、注文があった分だけ印刷するオンデマンド方式や、制作費をまかないつつ、本の存在を広めることができるクラウドファンディングを活用することによって、コストを抑えた形で本を復刊することができた。

「父の本というだけでなく、貴重な本だからこそ復刊した。絶版した本を復刊したいけど、どうしたらいいか分からないという人が世の中にはいっぱいいる。自分たちだけでなく、他の方たちにも仕組みを提供することができるのでは」

「学歴無用論」は、こうした木原さんの考えに共鳴した盛田さんの遺族から復刊を託されたのだという。

目次を開くと、タイトルになった「学歴無用論」だけなく、「会社は遊園地ではない」「働かない重役追放論」などと刺激的な言葉が並ぶ。木原さんは本文を読み、その先見性に改めて驚かされた。

朝日新聞

生前の盛田昭夫氏(朝日新聞社撮影)

「挑戦的な言葉でたきつけているような感じで書かれているところもあるが、『人はもっと自由に自分らしく生きていい』ということを一生懸命訴えている。50年前には理解できない人も多かったのだろうけど、今読むと時代がそちらの方向を向いてきていると感じる」

絶版となった本は、出版社が主導して復刊されることもあるかもしれないが、また時間が経てば、絶版の危機に見舞われる可能性が高い。

著作権を継承した遺族の意思で復刊できるようになれば絶版になることもなく、次の世代に名著を残していけるはず――木原さんはそう考え、今後も名著の復刊に取り組んでいくつもりだ。

「今回成功すれば、盛田さんの本が復刊されることはもちろん、次の復刊プロジェクトへの希望となる。多くの方にこの活動を知っていただくことで、永続的な活動につなげていきたい」

プロジェクトのアドレスは、https://a-port.asahi.com/projects/Fukkan_MORITA/

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FieldArchive提供