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宇宙の夢は現実に 世界初の月面探査レースで勝利狙う 

2017年04月17日 17時30分 JST | 更新 2017年04月17日 17時30分 JST

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実物大の月面探査車「ソラト」とispaceの袴田武史代表=日本科学未来館での探査車命名式で、朝日新聞社撮影

■世界初、月面探査レース挑む HAKUTOプロジェクト

世界初の月面探査レース(Google Lunar XPRIZE)に日本から唯一参戦するのがチームHAKUTO(ハクト)だ。月に着陸し、月面で探査車(ローバー)を500メートル以上走らせて景色を撮影する。年内に探査車を打ち上げるのが条件で、高解像度の動画と静止画を最初に地球に送信したチームが勝利する。

レースは、米グーグルが資金を出し、民間の「Xプライズ財団」が主催する。

民間資金で参加することもレースの条件だ。HAKUTOは宇宙事業ベンチャーの「ispace(アイスペース)」(東京都港区)と東北大の吉田和哉教授(宇宙探査工学)らで構成。企業もバックアップし、KDDI、スズキ、日本航空、IHIなどが通信技術などの支援をする。

2月には、7年あまりかけて開発してきた探査車を「ソラト」と命名した。ハクトが白い兎(うさぎ)を意味していたように、漢字の「宙(そら)」と「兎」から名づけられた。全長58センチ、重さ4キロ。打ち上げコストを抑えるため、航空機に使われる高強度で軽い炭素繊維強化プラスチックを車体に多用して軽量化した。

大気に守られていない月面の温度は昼に100度、夜にマイナス150度と寒暖差がある。寒暖差約250度を耐えられるボディーを作るため、車輪には寒暖差に強い特殊樹脂を用いた。昼の青空はなく、黒い空に太陽が光っているだけの環境に慣れるため、夜の鳥取砂丘を照明で照らして遠隔操縦の訓練をしてきた。

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ハクトのメンバー=月面探査車「ソラト」の命名式で、朝日新聞社撮影

■「夢みたい」を現実にする

開発やプロジェクトの推進にはispaceの袴田武史代表(37)ら約100人が関わった。「『夢みたい』を現実にできる。仲間を集めて、知恵を出せば宇宙は手の届く存在になる」と袴田さん。

集まってきたのは、 宇宙開発を自分たちの手でする点にひかれ、大手のスピード車開発を辞めてきた者、海外から移住してきた者などさまざまだ。

宇宙への打ち上げは、重量に比例してコストが上がる。ぎりぎりまで軽量化をめざし、構造を担当するスタッフは福井や埼玉の町工場にも何度も足を運んだ。特殊樹脂ウルテムを利用して型抜きで作ったり、加工が難しいが軽いチタンでギアを作ったり。町工場もこれまで取り組んだことのない挑戦に、町工場の技術者と共に挑んだ。

 

そして、海外の他チームと同様、 袴田さんらハクトチームも、月面探査レースの先には宇宙開発ビジネスを見据えている。

月面上には、貴重な鉱物資源や60億㌧といわれる水がある。水素と酸素に分解すれば、ロケットの燃料になる。宇宙燃料ステーションができれば、宇宙輸送を実現できる。その開発は海外からも注目され、ルクセンブルク政府と月の資源開発でispaceが提携した。

レースは、将来的に月の資源開発を低コストで実現する起爆剤としても期待されている。「これから宇宙産業は爆発的に成長するう可能性がある。国が道路のインフラを作り民間は車を作るように、宇宙産業でもそれぞれ役割分担をしながら発展させていければ」と袴田さんは話している。

探査車は月面まで、インドチームの着陸船に相乗りする。12月28日にロケットを打ち上げ、約38万キロ離れた月面に来年1月末に着陸する予定だ。今年5月1日まで、打ち上げ資金の一部をA―portで集めている。クラウドファンディングの利用は、活動を広く知ってもらう狙いもある。

■5チーム参加、優勝賞金22億円

月面探査レースには、米国、イスラエルなどから計5チームが参加している。このうちシナジームーンは米、マレーシア、ブラジルなどの国際混成チームとなっている。賞金は優勝2千万ドル(22億円)、準優勝が500万ドル(5.5億円)だ。

主催のXプライズ財団は非営利組織で、競争を通じて人類のための画期的な進歩をもたらす目的で1995年に設立された。これまで民間による有人宇宙飛行や超低燃費自動車の開発などのコンテストを実施してきた。ノーベル賞のように過去にさかのぼって業績を評価するのではなく、事前に未来の目標を設定して達成をたたえるのが特徴だ。

レース開催が発表された2007年以降、30以上のチームが参加意欲を表明し、16チームが昨年まで公式に準備をしてきたが、撤退や統合で今年1月、5チームに絞られた。

レース完走には、打ち上げ費用に加え、着陸技術や滑りやすいパウダー状の月の砂の上を遠隔操作で走る技術、電子機器に影響する宇宙放射線に耐える技術など課題が多い。財団は技術開発を支援するため、実験結果を評価する「中間賞」も与えてきた。

月面探査レース参加5チーム(主催者承認順)

◇チーム名(国)

◇スペースIL(イスラエル)

15年10月に主催者が承認。「サンズ」ブランドで知られる米カジノ王などが資金提供。着陸船を兼ねる、食器洗い機ほどの小さな探査機が跳んで移動

◇ムーンエクスプレス(米国)

月の資源開発を目指し、レースを含めて20年までに3回打ち上げ予定。着陸と映像の両技術で計125万ドルの中間賞を獲得

◇シナジームーン(多国籍)

出場を目指した複数のチームが一体化した混成チーム。6大陸からベンチャー企業や研究者らが集まっている

◇チームインダス(インド)

インド宇宙研究機関のロケットで12月に打ち上げ。着陸技術で100万ドルの中間賞を獲得

◇HAKUTO(日本)

「ispace」や東北大学の研究室に大手企業の支援が加わった。今年1月には、探査車の完成度が評価され、走行技術で中間賞50万ドルを獲得

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ハクトの月面探査車「ソラト」

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