透き通るような鳴き声を持つカジカガエル、清流に戻る。安らぎの夕べがよみがえるまで

2015年08月26日 00時40分 JST | 更新 2015年08月26日 16時02分 JST

年間約40万人が訪れる鳥取県を代表する温泉地、三朝。ここを流れる清流・三徳川に生息するカジカガエルは、毎年4月中旬頃から「ルルルー、ルルルー」という美しい鳴き声を温泉街に響かせ、貴重な観光資源となっています。

今でこそ、この地へ人を誘うまでになったものの、今から約40年前、温泉街からカジカガエルの声が聴かれなくなった時期がありました。

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門木光明さん

「下水道の整備が十分にされておらず、また、強い農薬が使われるなどの複合的な要因が重なり、カジカガエルの住む環境が悪くなったのが原因だったと思います」。こう語るのは、「三朝温泉かじか蛙保存研究会」の会長を務める門木光明さんです。カジカガエルの美しい鳴き声を愛し、多くの生命を育んできた清流を次の世代に引き継いでいこうと、36年前から活動を続けています。

もう一度、三朝にカジカガエルの声を響かせたい――その一心だった門木さん。岐阜県からカジカガエルを捕獲して三徳川に放流したり、源流域に出掛けて水源地の状況を見たりとさまざまな活動を行いました。

こういった環境保護活動には地域の連携が欠かせません。そこで、川の保全活動以外に、温泉の宿泊客や地元の人にカジカガエルの美しい鳴き声を知ってもらおうと、「カジカガエルの声を聞く夕べ」というイベントも企画しました。活動を初めて15年近くがたった1995年には、全国各地でカジカガエルをテーマに活動している個人、団体を一堂に集めた「かじか蛙サミット」を開くまでになりました。

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これらの地道な活動や下水道の整備によって、次第にカジカガエルの鳴き声が戻ってきました。それに伴って、三朝の住民のカジカガエルに対する関心も高まったといいます。活動を始めた頃は、鳴き声すら知らなかった地域の人たちが「今年もカジカガエルが鳴き始めたよ」「今年のカジカガエルの鳴き声は、美しいね」と声をかけてくれるようになったのです。

カジカガエルが結ぶのは地域の人だけにとどまりません。阪神大震災が起こった年の「カジカガエルの声を聞く夕べ」では、現地から訪れた方が「余裕のない時期にカジカガエルの声を聞けてうれしかった。癒された」という言葉を残していきました。この出来事は、長年の活動の中で最も印象に残っていると門木さんは言います。その他にも、全国各地から訪れる方の自然に感動する姿が、活動のやりがいにつながっているそうです。「カジカガエルを通して、さまざまな人と知り合い、出会えましたね」。

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カジカガエル

保存研究会の活動は今年、緑化推進運動功労者・内閣総理大臣表彰を受賞することになりました。これまでの功績が評価され、一区切りとなりそうです。しかし、環境活動に終わりはありません。門木さんは「これからも背伸びをせず、できることを継続していきたい」と、先を見つめました。

門木光明さんが会長を務める三朝温泉かじか蛙保存研究会が植樹を行うプログラムは鳥取県三朝町で10月11日(日)に開催です。参加希望の方は、公式サイトの申し込みフォーム(http://aquafes.jp/projects/181/)からご応募ください。

(取材・執筆:新日本海新聞社 熊谷邦宏)

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