PRESENTED BY AQUA SOCIAL FES!!

水草が大量発生し続ける諏訪湖を救うため、立ち上がった市役所 何をしているのか

日本でも有数の大きさを持つ諏訪湖。実はこの湖の生態系は幾度となく揺るがされていた。

信州人にとっての「うみ」、諏訪湖。その浄化に取り組む「AQUA SOCIAL FES!!2015in長野」は今年で4回目になりました。地元はもちろん県内外から集まってくれる人々に、諏訪湖の環境について理解と関心を深めてほしいと運営を支えるのが、諏訪市役所のみなさん。そのリーダー役を担うのが地元出身の樫尾政行さんです。

諏訪湖への熱い思いを語る樫尾さん

幾度となく揺らいできた諏訪湖の生態系

諏訪湖を見ながら育った樫尾さん。「子どものころの諏訪湖はとてもきれいでした。小学生のころはよく釣りに行き、たくさん取ってきたコイやフナ、ワカサギなどを両親が喜んで食べてくれました」と樫尾さんは当時を振り返ります。しかしやがて、水質が悪化。植物プランクトンの大量繁殖によるアオコに悩まされるようになりました。楽しみにしていた夏の釣りは避ける年もあったほど、アオコは湖を覆ったといいます。

樫尾さんが社会人になるころには、諏訪湖の水質は大幅に改善し、アオコもだいぶ見られなくなっていました。下水道整備が進んだのです。

ところが、再び諏訪湖の環境は揺らぎました。その原因は水質浄化に一定の役割を果たしてきたはずの水草(ヒシ)でした。2000年ころから過剰にヒシが繁茂し、湖底の酸素不足を引き起こしたのです。その結果、諏訪湖の漁獲量は激減。魚介類の生息環境が悪くなってしまったといいます。

「岸近くまでびっしりとヒシが繁茂するようになると景観も悪く、腐敗臭にも悩まされるようになりました」と樫尾さん。2011年には、ヒシは湖面の2割を占めるまでになりました。翌年、生活環境課に配属された樫尾さんは、市民要望の強いヒシ対策と正面から向き合うことになりました。

模索していた時に出会った「新しいやり方」

この間、市としても市民ボランティアを募ってヒシの除去に取り組んできました。しかし、もっと“広がり”のある取り組みにできないか、と模索していた時、樫尾さんはある活動に出会いました。それが、トヨタのハイブリッドカーAQUAが、全国の地元団体と地方紙の協力のもと行う環境イベントAQUA SOCIAL FES!!でした。活動自体はもちろんのこと、「行動を通して水辺の環境向上を考える」という理念に共感し、AQUA SOCIAL FES!!事務局に自ら“共催”を打診。庁内も調整しました。そして2013年から諏訪市とAQUA SOCIAL FES!!のタッグがスタートすることになりました。現在では樫尾さんをはじめ同課職員5人全員が運営スタッフとして汗を流しています。

水気を含んだ重いヒシをパッカー車に積み込む樫尾さん

県が本格導入した刈り取り船やAQUA SOCIAL FES!!などの活動の効果か、昨年はヒシの繁茂量が減ったそうです。しかし、今のところ、漁獲量が回復したと言えるわけではありません。生態系が崩れた原因はヒシの過剰繁殖だけでなく、天候にもあるとみられているからです。

昨年、AQUA SOCIAL FES!!で重点的に抜き取り作業をしたエリアを調査したところ、「6月上旬にはすでにヒシが生えていました。今年は多くなるかもしれません」と樫尾さんは残念そう。しかし、環境保全活動はたった数年では答えが出ないもの。「地道に、息長く取り組む必要があるんです」と前を向きます。

湖面を覆うヒシを漁船に乗って引き抜きます

ヒシの問題はあるものの、富栄養化や衛生面でみると、諏訪湖の水質自体は相当に改善しています。誰もが安心して親しめる、豊かな諏訪湖を取り戻す―。その実現には、たくさんの人が諏訪湖に心を寄せ、手を貸し、汗を流すことが大切になってくる、と樫尾さんは強く感じています。

今年は、水辺と里山の両面から諏訪湖の環境を考えることをテーマにAQUA SOCIAL FES!!2015in長野を開催します。8月1日には、諏訪市の水源の霧ケ峰高原で、生態系を荒らしている特定外来生物オオハンゴンソウを駆除します。参加を希望する方はオフィシャルホームページをご覧ください。

(取材・執筆:信濃毎日新聞社 藤森栄志)

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