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アートプロボノの概要とニーズ(1) アートプロボノの可能性 〜芸術文化団体のイノベーションに繋がるか〜

長期的には芸術文化団体の経営・運営のイノベーションに繋がる可能性を内在しているのかも知れない。

2017年12月07日 11時30分 JST | 更新 2017年12月07日 11時30分 JST

アーツカウンシル東京のカウンシルボード委員や有識者などによる様々な切り口から芸術文化について考察したコラムをご紹介します。

今回は、一般社団法人芸術と創造代表理事 綿江彰禅氏に執筆いただきました。

(以下、2017年12月6日アーツカウンシル東京「コラム&インタビュー」より転載)

専門人材によるボランティア活動をさすプロボノ(Pro bono publico)という言葉をご存知だろうか。アメリカにおいて発祥し、当初は法務の専門的な知識に基づく社会貢献活動をさしていたが、その後、税理士、会計士など資格を持つ方々にも広がっていった。現在ではより幅広い専門性を持った方々の活動も含めることが一般的になっている。

このプロボノ、日本においても徐々に普及が進んでおり、認定NPO法人サービスグラント(2005年〜)、特定非営利活動法人ソーシャルベンチャー・パートナーズ東京(2003年〜)、NPO法人二枚目の名刺(2009年〜)などプロボノ活動を仲介する※1 団体も活発に活動を行っている。昨年度、弊団体が文化庁の委託を受け行った調査※2(以下、プロボノ調査)によると、会社員等の有職者のうち約10%がこれまでに「専門的知識や技術を活かしたボランティア活動(プロボノ等)」を経験しており、約24%が「経験したことがないが、今後経験してみたい」としている。

アーツカウンシル東京
出所)文化庁「専門人材による文化団体における社会貢献活動調査」(受託:一般社団法人芸術と創造)

現在、政府は多様な働き方を可能とする社会を目指し「働き方改革」を推進している。その一環として今後、長時間労働が是正されれば、余暇時間にプロボノ活動を行うというニーズもさらに高まるのではないかと考えている。また、多様性がある人材を育成したいという考えから、企業としてプロボノ活動を推奨する動きも見られる※3。

このプロボノであるが、芸術文化の分野においては、まだそれほど浸透していない。例えば、前述のサービスグラントではこれまで200件を超える団体を支援してきているが、支援団体の活動分野としては「子ども・教育(65件)」、「医療・福祉(61件)」などが多く、「文化芸術(12件)」は他分野と比べて少ない※4。

アールカウンシル東京
出所)サービスグラント公式ウェブサイトを基に(一社)芸術と創造作成

プロボノ調査では、芸術文化団体側と専門人材側のプロボノに関するニーズ自体が一定程度存在するかを検証した。結果としては、双方に大きなニーズが存在することが確認され、芸術文化団体側は、「法務・会計、外国語会話・翻訳、ファンドレイジング・会員・顧客管理、調査設計・分析、人事・労務管理」等に関するサポートを求めており、また、プロボノを経験している/今後経験したみたい専門人材では、今後支援する可能性のある分野として「文化芸術」が上位に位置づけられた。

アーツカウンシル東京
出所)文化庁「専門人材による文化団体における社会貢献活動調査」(受託:一般社団法人芸術と創造)

このような結果を受け、文化庁と弊団体は「アートプロボノ」を「アート領域(美術、演劇、音楽、舞踊、伝統芸能、大衆文化等)において、各人が持つ専門的なスキルを活かして行うボランティア活動」と定義し、その普及に向けた様々な取り組みを進めている。

具体的には、そもそも「アートプロボノ」といった概念が普及していないなか、プロボノを仲介する団体や、既にプロボノを受け入れたことのある芸術文化団体(新日本フィルハーモニー交響楽団、NPO法人芸術家と子どもたち)などに登壇頂くセミナー「プロボノってなんだ?」(12月12日開催予定)や、プロボノを仲介する団体、アートプロボノに興味を持つ文化芸術団体や専門人材が一同に介し、対話型のイベント「プロボノってどうやるの?」(1月20日開催予定)などを企画している。また、そのほか、アートプロボノの実施・受け入れを具体的に検討している方・団体向けのガイドライン策定・研修などを実施する予定である。

芸術文化団体に関しては、その経営能力の底上げの必要性が叫ばれ、文化庁や東京都を始めとした自治体において各種施策を打っている。専門性の高いスキルを持った方や、直接的に芸術文化業界に属してこなかった方が客観的な視点から団体の運営に関わるプロボノ活動は、この側面から見ても非常に有効だと考えられる。

専門人材は限られた時間のなか、支援するだけの意義を納得した上で団体の支援を行う。その際に「団体や代表が共感できるミッションを持っているか」、「公共性が高い活動を行っているか」などを重視している。アートプロボノの受け入れは、芸術文化団体にとって「どれだけ社会的に意味のある活動を行っているか」を説明することが求められるものであり、長期的には芸術文化団体の経営・運営のイノベーションに繋がる可能性を内在しているのかも知れない。

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出所)文化庁「専門人材による文化団体における社会貢献活動調査」(受託:一般社団法人芸術と創造)

次回はアートプロボノの事例や12月12日開催予定のセミナー「アートプロボノってなんだ?」の様子をご報告予定です。

※1:各団体名称のあとの括弧内は活動開始年を示しており、NPO法人としての設立年とは異なることに留意されたい。

※2:文化庁「専門人材による文化団体における社会貢献活動調査

※3:日本電気株式会社、パナソニック株式会社、日本マイクロソフト株式会社、株式会社三井住友フィナンシャルグループ、日本IBM株式会社等多数。

※4:なお、2017年3月31日までに認証を受けたNPO法人51,526団体のうち、「学術、文化、芸術又はスポーツの振興を図る活動」を目的として掲げているのは18,392団体(約36%)である。

(2017年12月6日アーツカウンシル東京「コラム&インタビュー」より転載)