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日本とは違う、なぜノルウェー選挙運動は「祭り」のように楽しい?

2015年09月14日 15時07分 JST | 更新 2016年09月13日 18時12分 JST

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ピンクの木製小屋は、最も小さいサイズながら目立っていた。今年の5月に誕生した新党フェミニスト党 Photo:Asaki Abumi

日本では禁止されていそうな選挙PRができる?


現在、ノルウェーは14日の統一地方選挙の開票日に向けて、各政党の選挙運動が大きな盛り上がりを見せている。選挙期間中といえば、日本では選挙カーでの連呼行為や、候補者の街頭演説、張り出されているポスターや、配布されるビラの印象が強いが、ノルウェーでは異なる活動が多い。驚くことに、戸別訪問や飲食物の提供、子どもを巻き込んだ活動など、日本では禁止されているであろう選挙運動が目立つ。

選挙期間中は、さまざまな方法で政党や候補者がPRをする。今回は、テレビ討論とSNSを活用した活動は省き(これもまた面白いのだが、記事が長くなってしまう)、街頭活動に着目してみた。

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ノルウェー選挙運動で話題となっている、「お掃除犬」とは?

Photo:Asaki Abumi

街頭での選挙小屋


ノルウェーでは、拡声器やマイクを使用しての街頭演説は馴染みがない。その代わり、市民が集う場所では、カラフルでかわいいデザインの選挙小屋やスタンドが並ぶ。実は、これが政党と市民がコミュニケーションするための最も効果的な手段だ

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Photo:Asaki Abumi

今回は、首都オスロの大通りカール・ヨハン通り沿いに並ぶ、各政党の選挙小屋を次々と訪ねてみた。

ノルウェーでは、選挙運動は市民の祭りだ


選挙小屋は市民に、「立ち話が楽しい場所」として認識されており、どの政党に投票するか迷っている人、ただ興味本位に話してみたい人など、子どもから大人まで多くの人が気軽に訪れる。

各スタンドに立っているのは、候補者、無償で働くボランティア、各政党の青年部所属の若者が多い。係員が市民に大声で話しかけるのではなく、静かに笑顔でチラシを配布するか、スタンドに立っているのみ。市民が自然と近づいてきて、おしゃべりが始まる。

以下を重視して、各スタンドで質問してみた。

  • 選挙小屋のデザインの特徴
  • 無料配布している飲食物、印刷物、品物は?

デザイン大賞は、観光局だと勘違いされる左派社会党


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Photo:Asaki Abumi

デザインと注目度だけで、最も優れた小屋を選ぶなら、迷わず左派社会党(SV)だろう。オスロをアルファベットにしたOSLOの「L」を傾斜させ「V」に見せることで、SVと政党のロゴが文字られている。赤(社会民主主義派)と緑(環境派)はシンボルカラー、ロゴの素材は木材を使用して、自然の木を連想させているそうだ。

しかし、あまりにも目立つデザインのため、オスロ市の宣伝だと勘違いする観光客が続出。おそらく、最もインスタグラムに写真が掲載されているスタンドとなっている。

「観光客に、観光スポットの場所を聞かれることが多いんです」と笑うのは、ボランティアでスタンドに立つオスロ大学で政治学を学ぶマッティン・ウーレベルグさん(23)。

政治家は市民とチェスをしながら、政治についておしゃべりをする


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奥に立っている青色の服の男性が左派社会党の党首、手前でチェスをしている女性はオスロ市の市長候補 Photo:Asaki Abumi

他に、もう一つ目立っていたのが、チェスが置かれたテーブル。ノルウェーではチェスは国民生活に浸透している娯楽なのだが、この党にはチェス界で有名な競技者が複数いる。チェスが最も強い政党でもあり、スタンドでは子どもや大人がチェスをしながら遊んでいた。

選挙運動では飲食物の無料配布ができる。農業に熱心な党はニンジンをあげる


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Photo:Asaki Abumi

農業政策を重視した中央党(Sp)のスタンドは、卵のような形をした小さな小屋だ。スタンド製作費は費用を抑え、壊れるまで何年間も選挙活動では使い続けていくそうだ。

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Photo:Asaki Abumi

ノルウェー人はお菓子のようにニンジンを頻繁に摂取する習慣があるため、ニンジンの無償プレゼントは人気がある。

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Photo:Asaki Abumi

ノルウェーの首相やオスロ市長が所属する保守党(H)。学校教育に力を入れていることを主張するために、小学生が使うリュックサックが飾られている。新商品の展覧会にもみえてしまう。

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ファビアン・スタング市長が、笑顔で笑いかけるバッジは、なぜか印象に残る

Photo:Asaki Abumi

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子どもたちは各政党のスタンドでもらうバッジを集めていた

Photo:Asaki Abumi

移民政策に厳しい党の小屋デザインは、親しみをもってもらうために、ソーセージ屋台


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Photo:Asaki Abumi

ノルウェーで外国人というカテゴリーに分類される人にとって、一番距離が遠く感じるのは進歩党(Frp)かもしれない。移民政策に最も厳しい政党として知られている。

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Photo:Asaki Abumi

進歩党の選挙小屋のデザインのこだわりは、「ソーセージ屋さんに見えること」だ。ノルウェー人はソーセージが大好きなので、身近に感じる屋台がイメージされている。コーヒーの消費率が高い国でもあるので、コーヒーは無料提供。そのほか、政党バッジ、政党のロゴが入った傘、サングラス、キャンディーなどを無料贈呈。

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ノルウェー人の心を射止めるのなら、コーヒーが一番

Photo:Asaki Abumi

自由党(V)では、環境に優しいグリーン政策を意識して、スタンドに植物を飾っていた。

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Photo:Asaki Abumi

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Photo:Asaki Abumi

デザインよりも、今後の政策方針が気になる緑スタンド


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Photo:Asaki Abumi

最もグリーンな政党として、選挙期間中にもっとも注目を集めているのは緑の環境党(MDG)。恐らく前代未聞の快挙をとげそうと予測されているため、道行く人からは、「選挙後は、どこの党と連立体制になるのか」という質問が圧倒的に多いそうだ。

候補者のひとりであるエルサ・ブリット・エンゲルさんは、「選挙が終わるまでは、私たちはそれは名言しません。最もグリーンな政党と協力するわよ。グリーンが一番、経済はその次!」と笑う。スタンドにも無駄なお金はかけず、木材と植物の飾りでシンプルに。

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緑の環境党の党首(左)も、市民とおしゃべりをしにくる

Photo:Asaki Abumi

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イエローカラーで目立つキリスト教民主党

Photo:Asaki Abumi

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Photo:Asaki Abumi

キリスト教民主党(KrF)では、ノルウェー人の好物であり、外食するなら1枚500円前後はするワッフルがコーヒー付きで無料配布されていた。もちろん行列ができる。

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Photo:Asaki Abumi

あまり見かけないオレンジカラーが目立つスタンドは、キリスト党。「信仰を揺るがす中絶や若者のフリーセックスには反対」と話す3人の候補者。若者と長い立ち話になることが多いそうだ。

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労働党が以前から市民に無償提供しているのは赤いバラの花だ。連続テロ事件で標的にされた青年部の党でもある

Photo:Asaki Abumi

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労働党のスタンドは、市民が使うバス停留所やキオスクをイメージして作られた

Photo:Asaki Abumi

車よりも、選挙チャリが一般的


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Photo:Asaki Abumi

「選挙車」とまではいえないが、小さな箱を自転車でごろごろ引きながら宣伝活動をする党もいる。スタンド設置の場合は市に申請する必要があるが、移動可能なチャリの場合は許可が必要ないので、楽なのだそうだ。

保守党の自転車のカゴの中には、チラシが詰まっていた。

自転車乗りに、ハイファイブ!


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Photo:Asaki Abumi

今年のオスロ市での地方選挙では、オスロをどのように自転車の街に発展させていうかという課題がある。緑の環境党は、早朝に自転車で出勤・通学する自転車乗りに、「ハイファイブ!」と声かけをしながら、地区の候補者がハイタッチを求めていた。

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Photo:Asaki Abumi

異例のPR運動に、通りで突然ハイタッチを求められる自転車乗りは、笑いながら、手の平をたたきあわせて応答していた。オスロの自転車乗りの走行スピードはかなり早いのだが、「危ないじゃないか」というクレームには、どうやらつながっていないようだ。

他にも、選挙活動中に水入りのペットボトル、チョコレート、バナナ、リップクリームなどを無料配布しているスタンドもあった。日本では湯茶や茶菓子程度の有権者への提供は許可されているようだが、ノルウェーでのワッフル、コーヒー、グッズなどの提供は、物価の高さを考慮すると、その程度を超えているようにみえた。

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学生向けの市長選討論会で、保守党スタンドで配布されていたグッズ

Photo:Asaki Abumi

ノルウェーの地方自治省に問い合わせたところ、選挙運動中の飲食物の提供、選挙スタンドに関しての規則というのは一切ないそうだ。つまり、スタンドをどのように装飾しても、何を無償提供してもよい。自由な国だ。

党首がふらりと選挙小屋に訪れ、市民と会話する光景は、平等を重んじるノルウェーらしい一面でもある。

ノルウェーでは、2011年の地方選挙では64,5%、2013年の国政選挙では78,2%と高い投票率を誇る。国民が政治に積極的な背景には、自由で楽しい選挙運動が理由のひとつなのかもしれない。

Photo&Text: Asaki Abumi