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単調なノルウェーのスローテレビの魅力が止まらない。新作はなんと「犬の子育て」を数ヶ月間も生中継!

2014年03月10日 00時39分 JST | 更新 2014年05月09日 18時12分 JST

犬の子育て」の生中継動画を見るために、多くのノルウェー人がノルウェー国営放送テレビ局NRKのホームページを毎日訪れている。驚くなかれ、今回は犬の出産、子育て、巣立ちまで、数ヶ月にわたりノンストップで放送予定だ。昨年世界中で話題となったノルウェーの「スローテレビ」の放送時間最長記録を更新することは間違いないだろう。

ゴールデンレトリバーのナルニアは、2013年2月17日に8匹の健康的な子犬を出産。親子の様子は現在も電子版で放送されている。子育てといっても、小屋の中で子犬たちに授乳していたり、親子が熟睡している映像が続くのみ。カメラは犬小屋の中の親子から一切動くことはなく、ナレーターがコメントをしたり、音楽が流れるわけでもない。はっきり言って、特別なことは一切起きない。ノーサウンドで、延々と犬の親子を見るだけ。

今回いつもと異なる点は、「テレビではなく電子板で主に中継」されており、「子ども向け番組」、「中継時間が数十時間ではなく数週間に及ぶ予定」という3点だ。子ども向けでありながら、多くの大人も閲覧しているであろう点も面白い。NRKのサイトでは毎日閲覧者向けに「皆さん今日の犬の子育てを見ましたか? 子犬たちが見分けられやすいように色別の首輪をつけましたよ!」と楽しそうに現状報告もアップデートされる。

NRKは「薪が燃える暖炉12時間」など、未編集の映像を延々と生中継することで昨年世界中を驚かせた。制作費をほぼかけず、カメラを設置後は事実上スタッフは不要、未編集でそのまま放送した。

船の車窓からの映像中、突然カメラにハエが止まったり、飛んできた水がレンズついて映像が見えにくくなっても、そのまま放置。この前代未聞の「新しいテレビの形」に、世界中の視聴者だけではなく、テレビ業界の未来を模索する業界関係者も目を丸くした。「これは自分達の国で受け入れられるのだろうか?」と多くの人が思ったのではないだろうか。

「スローテレビ」が生まれたきっかけは、テレビ局内の食堂でのスタッフ同士のたわいない会話だった。ベルゲン鉄道が100周年を迎えたことをきっかけに、「なにかクリエイティブなこととしようぜ!」と冗談半分で始まったアイデア。

「1分1分」という番組名で2009年に放送開始。ベルゲン鉄道が走る車窓からの映像が7時間16分と延々と放送し、DVDも発売された。

その後、編み物を延々とする映像(12時間半)、旅行者にも人気がある沿岸特急船からの景色(134時間)、サーモン釣りをする様子(24時間)など様々なシリーズが登場。全てノルウェー国民が昔から慣れ親しんでいる習慣がテーマとなっている。

2013年2月に薪が暖炉でパチパチ燃え続けるシーンが12時間放送された後、海外メディアが番組の意外性を報道したことから、「スローテレビ」は一気に注目を浴びた。当時、ノルウェーでは「どうして今更、私達の国のつまらない番組が話題に?」と首をかしげながらも、その現象を多くの人が面白く感じていた。ノルウェーことば協会が選ぶ2013年の「今年のことば」にも「スローテレビ」が入賞した。

「スローテレビ」をきっかけにNRKは視聴者ともネット上で交流をさらに深めている。ファン達が自発的にパロディー作品を作り、動画サイトYouTubeに投稿。玄関から郵便箱に手紙を取りにいく様子、ペットの犬が散歩している様子などをショートムービーにした作品は、NRKも「ファンがパロディーを作っていて面白い」とさらにニュースとしてネットで取り上げる。

「スローテレビ」は商業的な制約がない国営放送局が、ゆったりとしたノルウェーのお国柄のもとでこそできた番組といえる。平和にのんびりと流れる未加工の映像は、今の日本のテレビとは対極にあるが、新しいテレビ作りのあり方としては興味深いモデルだろう。

「犬の子育て編」は新しい飼い主が見つかるまで放送する予定らしいが、すでに国民的スターとなっている8匹。すぐに新しい家も見つかることだろう。

「犬と人の感動的な出会い」