制服等区立中学の高額な学校指定品・・・義務教育の公立中学への進学で、なぜさらなる苦しさを抱えなくてはならないのか?

この8月、文京区立中学校の制服が高額なことが新聞報道されていたので、各区立中学への調査を元に、文教委員会で区の考えを尋ねてみました。

この8月、文京区立中学校の制服が高額なことが新聞報道されていたので、各区立中学への調査を元に、文教委員会で区の考えを尋ねてみました。

出典:8月20日付朝日新聞

「制服の値段の謎――なぜ大差?どう設定?」

http://www.asahi.com/articles/DA3S12519923.html

公立中学校の制服価格は、学校や男女によって大きな差があることが、SNSを通じた朝日新聞の調査でわかった。

(例)女子セーラー服:

最高値...東京都文京区 ¥64,828

最安値...滋賀県彦野市 ¥41,400

文京区役所の担当課から各校の資料をもらって比較表にしたものが下図です。

【追記】学校指定品ではないもの(市販品を購入可能なもの。シャツ・ブラウス・セーター等)が集計に含まれていたため、それらを除いて再集計いたしました。お詫びして訂正いたします。(海津敦子)

区立中学校入学にあたってかかる制服、内履き、体操服一式等の購入費が、家計を大きく圧迫している現状について、文教委員会で教育委員会の考えを質問した際の担当課長の答弁は次のようなものでした。

基本的に制服については各学校の判断にゆだねているところで、今回はたまたま教育委員会として調べたけれど、引き続き教育委員会が関与することは考えていない。

公立中学校入学に向けて、保護者がどの程度の額を支出しているのか、新聞で報道されるまで調べることなく、まったく把握していなかったという事実に、まず驚きです。たぶん、文京区に限らず、そうした教育委員会は多いのかもしれません。

文京区が平成25年に調査した「文京区子育て支援に関するニーズ調査」で、「子育て(教育を含む)に伴う経済的負担が大きい」という設問に対して、中学生保護者の47.0%が「負担感がある」と答えています。この数字は、就学前28.9%、小学生35.8%よりも大きく増えています。

塾や習い事などの費用も考えられ、制服等学校指定品の購入費用だけが理由とは言い切れませんが、区立中学校入学に際して必ず購入しなければならない最低限の支出だけでも高額であり、経済的負担感に繋がっていることは否めません。

上図の通り、文京区立中学校に入学する際に、各校で指定されている制服(冬服)、内履き、体操服一式を揃えるだけで、女子で約47,000円~約60,000円、男子で約49,000~約61,000円かかっていることがわかりました。

義務教育は、「国民が共通に身に付けるべき公教育の基礎的部分を,だれもが等しく享受し得るように制度的に保障するもの」であり、「無償なもの」であるはずの教育を受けるのに、なぜ、これほどの経費を保護者が支出しなくてはいけないのか? 疑問を頂く方は多いと思います。

さらには上記に加え、学校指定の通学バッグも、安いところで7,100円、高いところは9,900円のものを購入しなければならず、夏の制服、水着、教材なども買っていくと、5月頃までには10万円を超える支出になることも珍しくありません。部活動のユニフォームやシューズ等用具類の購入などがさらにかさむ場合も多くあります。

保護者にとっては、2月に実施される各校の入学説明会で初めて、入学式までに購入し用意すべきものが示されるだけに、第一子を中学に入学させる保護者の中には「総額10万円近いお金を用意しなくてはいけないことに眠れなくなった」との声も聴きますし、第二子以降でもさらに購入しなければ、子どもの学校生活をスタートさせられないことに悩む保護者も少なくありません。

ちなみに文京区では、生活保護世帯(要保護)やこれに準ずる準要保護世帯に対して、就学援助による制服等の費用は、申請後、前年度の住民税が確定したのちに、対象であるかどうかを確認して、各学期末である、7月、12月、3月に支給されます。

日々の苦しい生活費の中で、義務教育である公立中学への進学にあたり、なぜ、さらなる苦しさを抱えなくてはならないのか? 理不尽なことです。

共産党・福手ゆう子議員が、就学援助の支給を前倒しして支払うべきではないか?との質問をしたところ、担当課は、「制度上、現状の通り学期末に支給することが妥当」といった答弁をしていました。

が、そもそも、区としてこれまで、区立中学に入学する際にどれぐらいの家庭費を支出しなければならないかをまったく把握していなかったわけで、各家庭の経済的負担の重さを理解した上での答弁とはとても思えません。

東京23区内でも、すでに中学入学にあたって、就学援助の支給を6年生で行う自治体もあります。文京区としても速やかに改めていくべき緊急な検討課題だと考えます。

体操服一式は、長袖のジャージ上下、半袖シャツ、ハーフパンツのセットが一般的で、約15,000円~19,000円と高額です。

これに対して、就学援助による生活保護世帯への体操着の援助額は4,100円です。そもそも、学校が一律に指定することについて、教育委員会としての一定の指針が必要ではないかと思います。そこで以下の質問をしました。

Q:制服や体操服、内履き等を指定・統一することの意味は何があるのか?教育委員会は、こうした経費が各家庭にかかることに対して、どのように考えているのか?

A:各学校の判断になるが、一定、学校と言うひとつ社会の中で生活していく上では、ルールが必要となるので、そうした見解で各学校で定めているものだと思う。各学校の判断といったけれど、学校長の独断で決めているわけではなく、決めていくには、学校は保護者や生徒会等にもはかって決めているので、各学校の独自性、自主性を活かすという意味で長年、行われてきている。ひどい場合には教育委員会として関与せざるを得ないが、基本的には学校の判断に任せる。

無責任です。文京区教育委員会としての指針を持つべきです。「ひどい場合」と言う基準はどこに照らして判断するのか? そのときの教育委員会の人の主観に委ねられる危険があります。

そもそもが、公立学校設置者は首長である区長であり、どのように教育費がかかるか、それをどのように定めるかは、学校に責任があるのではなく、行政に責任があることは明白だと私は考えます。このような答弁を平気でしてしまうこと自体、文教の地「文の京(ふみのみやこ)」を掲げる文京区の名折れです。

ちなみに、入学にあたり購入する学校指定品は制服等だけに限りません。校章、学年章、学級章も個々に購入しなければなりません。一般社会では、会社に入社すれば社章は無償で支給されたのではないでしょうか。議員も当選すると議員バッヂは無償でもらい、無くしたりした場合には自分で買うことになっています。

なのに、公立中学校では、すべての子どもが付けることを指導されているにもかかわらず、個々の家庭で買わなければならないというのは、実に非合理的な慣習だと言えるのではないでしょうか。

制服を無償提供するかどうかの議論には多少の時間を要すると思いますが、校章等を区として無償化するのに時間をかける必要はありません。そもそもが理不尽なことであり、私たち大人が気付いた時点で変えることは容易にできることです。

校章、学年章、学級章は、おおよそ1000円。毎年、文京区立中学校に入学する生徒は、約700人、つまり約70万円あれば可能なことです。少なくとも文京区は、約670億円の貯金を持っている自治体です。一括購入して学校でまとめて配布すれば販売店の人件費等が削減できてコストも抑えられる可能性だってあります。

また、入学時に相当な家計支出が必要なことだけに、少なくとも各家庭への十分な情報提供が必要だと思っています。各中学校で具体的にいつまでにどの程度の支払いが必要なのか、まずは、6年生の9月には情報を伝えることが重要だと思います。が、今のところ、教育委員会からは前向きな答弁は引き出せていません。

教育委員は、「委員は、文京区長の被選挙権を有する人で、人格が高潔で、教育・学術及び文化に関し識見を有する人のうちから、区長が、区議会の同意を得て任命」されます。

だとすれば、そうした委員にしっかりと、現状の文京区立中学校の入学時にかかる経費についての実態を情報提供して、制服等学校指定品のあり方、校章などの無償化、就学援助の時期などについて、しっかりと議論をしてもらうことが重要だと考えます。

しかし現実には、教育委員の方々が事務局から情報を与えられず、こういった実情をご存じないケースがままあります。教育に識見を有し、区の教育行政に関して、政策アイディアを提言したり、区民の教育ニーズや課題を区に伝えたりするのが教育委員の役割ですから、しっかりと情報を提供し、現実を把握した上で建設的な議論をして頂くことを求めていきます。

生徒自身が入りたい部活動があっても、高額なユニフォームなどを購入しなければならないために、家庭の経済的事情から泣く泣くあきらめる子ども達もいます。どのような家庭環境にあっても、自らの意志で選ぶ道をあきらめることのない教育機会をどのように子どもたちに保障していけるか、議論をまず始めるべきだと思います。

教育委員会は最後に、「こういった調査についてはさらに該当の校長たちと意見交換をしていきたい」との答弁をしましたが、校長たちの意見を聞きっぱなしにすることなく、さらなる教育委員での議論の上積みが必須です。

言うまでもなく、次代を担う子どもたちは社会の宝です。家庭の経済格差に左右されることなく、どの生徒も可能性を閉ざされること無くのびやかに学校生活を過ごすためにも、義務教育における区立中学校の教育費の家庭負担について、再考すべき時期です。またそれは、文京区としてどのような教育を提供していくのかが、あらためて問われていることだと思います。

本来なら、中学生になるという祝うべき門出に、保護者が支出に悩み苦しむことなく、心から進学を祝福し明るく支援できるように、どこまでが保護者が支出すべきか、教材費も含め、教育委員会で議論し、保護者が納得できるような説明責任を果たしていくことを求めていきます。

注目記事