ホンダが3Dプリンターで製作した超小型EVモデルは「鳩サブレー」がモチーフだ

3Dプリンターですべてのボディパーツを製造することができれば、設計の時間や生産コストを削減することも可能だろう。

3Dプリンターで製作したパネルを採用するクルマを発表したメーカーは、ホンダ初めてではない。だが、これは明らかに最大級の一台であり、その努力は一見に値する。パリモーターショーでの熱も冷めやらぬうちに、ホンダは幕張メッセで開催された「CEATEC JAPAN 2016」に、超小型EV(電気自動車)の設計コンセプト「Variable Design Platform」を出展した。これは動力源をコンパクトに完結させ、全長2.5m×全幅1.25mという非常に小さな車体に、ドライバーと子供2人の乗車を可能にしたEVのプラットフォームだが、さらにホンダが目指したのは、ユーザーの要望や用途に合わせて様々にカスタマイズしたクルマを製作できるということだ。例えば、高齢のドライバーのためにドア開口部の位置を低くしたり、配送車向けに後部をハッチバックにしたり、後部座席を交換して大人2名が乗車することもできるという。

さらに展示車両の詳細を見てみよう。当初は、このボディがすべて3Dプリンターで製作したパネルで出来ているという点にはやや懐疑的だった。しかし、ホンダの広報担当者は、同社がオートバイ部門で培ってきた設計やエンジニアリングのノウハウをどのように活かし、パネル下に隠れた軽量かつ安全なパイプ製の骨格を作り出したかについて説明してくれた。これによって、この「マイクロコミューターモデル」の構造は成り立っているらしい。今回展示された「豊島屋モデル」には、ハッチバックやドア、シートに豊島屋の菓子「鳩サブレー」のモチーフである"鳩"があしらわれている。このボディはデジタル製造技術を得意とする会社カブクがデザイン・製作したものを架装したという。

車体表面の大部分には3Dプリンター特有の粗さが見られるものの、感心したのはこのプロトタイプが、カスタマイズの自由度が高いEVで開発の初期段階であるにもかかわらず、きちんと動くということだ。数人のジャーナリストやビジネスマンたちは実際に乗り込み、日本の古風な街並を再現した短い通路を走らせていた。3Dプリンターですべてのボディパーツを製造することができれば、設計の時間や生産コストを削減することも可能だろう。だが、そういった期待をかけるのはまだ早いかもしれない。将来性のあるプラットフォームではあるが、なにせ今はまだ開発中の段階なのだから。

注:この記事は、米国版『Engadget』に掲載されたMat Smith記者の記事を転載したもの。

翻訳:日本映像翻訳アカデミー

【関連記事】

注目記事