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氏田あずさ Headshot

「弁護士」の卵たちが抱える問題の、いま。 それに立ち向かう当事者たち。

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----「社会の正義のために戦う弁護士」になりたい。しかし、現実は「借金を抱えた弁護士」。

9月6日、司法試験の合格発表日。弁護士を志す人々にとって、運命の日だった。

合格発表の掲示板前に、緊張した面持ちで立っている人々は"弁護士の卵"である司法試験受験生。あと一歩で金のバッジと、弁護士としての輝かしい人生を手に入れる受験生だが、彼らを待ち受けるのは「華やかさ」だけの世界ではない。

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(9月6日 合格発表掲示板前)

「司法試験の受験は、ただでさえ勉強だけに集中しないとダメなのに、生活という根本の部分の調整を図りながら、何年も勉強してきました」

そう語るのは、5月の春に司法試験を受け終わり、合格発表を待つAさん。(9月1日現在)

大学1年生の頃から司法の道を志し、奨学金をもらい独学で法学を勉強してきた。大学卒業後はバイトを1年してお金を貯め、更に奨学金を借りて法科大学院へ。周りが社会人になり始めているのに、自分は周りから遅れている。膨らむ奨学金の返済額とともに、プレッシャーはとんでもないものになっていった。周りから見る彼も、露骨に元気がなくなった。

彼がそれでも、司法試験受験をやめないのは、「絶対に、弁護士になるんだ」と心に決めているから。

司法試験を受けるためには、予備試験に合格するか、4年制の大学を卒業した後2・3年間法科大学院に通い卒業する必要がある。

司法試験を受け、晴れて合格した後、更に1年間の現場での研修を行う司法修習期間(法律家のインターンとも呼ばれる)を経て、修了試験合格となる。弁護士として社会に出るためには、平均して7年間必要。予備校代・学部学費・大学院費用・司法修習費用‥合格迄にかかる費用は、1000万円に上るとも言われる。難関とされる司法試験であるため、試験に合格できるまで、無限にかかる費用は増えていく形になる。

---- いま、司法修習生の経済的な状況はどうなっているのか

2011年11月に行われた事業仕分けの結果、修習生が毎月約20万円を支払われる形となっていた「給費制」が廃止。以降、返済義務を課す「貸与制」に変更となり、修習生は生活こそ送れるものの、一年間に300万円の借金を抱える形になっている。"負債を抱えているという社会的ステータス故、クレジットカードが作れない、部屋を借りるのが難しくなる"といった苦言もでている。年金や健康保険にも加入できていた「給費制」があった状況に比べると、現在の落差が激しい。

現在は司法修習生の約80%が貸与を受け、多額の借金と共に「弁護士」デビューをせざるをえない。

弁護士は国民の権利を守る「最後の砦」であり、社会の正義のために戦う、多くの人が憧れる職業。

しかし、現在司法修習生の約80%が貸与を受け、多額の借金と共に「弁護士」デビューをせざるをえないという現実がある。この経済的不安に煽られ、弁護士を諦める人も多くなってきた。

---- 当事者として法曹を目指しながら、「法曹の卵の経済的貧困」問題に立ち向かう人たち。

"LEAP"は、司法試験受験生を含む6人からなる、BLANK株式会社が立ち上げたサービスだ。

「法曹の卵の経済的貧困に寄り添う」というコンセプトを掲げている司法試験家庭教師マッチングサービス。講師となるのは司法修習生と大学院生、生徒は法曹を目指す大学生だ。

司法修習生・大学院生に対しては、"雇用を創出することで経済的貧困の一助に"、大学生に対しては"「良い先生」との出会いを提供することで、充実した受験生活を送る一助に"なることを目標にしているという。

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(株式会社BLANK LEAP運営メンバーの方々)

「司法試験受験生の当事者として、長期間に及ぶ勉強に対し悩みを抱える先輩や同期が、周りには本当に多くいます。"人と人との出会い"を通してこうした悩みを解決できる気がしているんです。私たちだけでなく、今後、弁護士や裁判官・講師になってくれる司法修習生など法曹界全体で育てていくサービスになって欲しくて」

LEAPメンバーの一人であり、司法試験受験生でもある佐護絵莉子さん(東京大学法科大学院2年)は、こう語る。

他にも司法試験を目指す学生の学習環境を改善しようという取り組みも進む。

例えば、株式会社サイトビジットが運営する"資格スクエア"というウェブサービス。大手予備校出身の講師が、オンライン上で講義を提供している。クラウド型の学習システムも提供する。サービス開始当初からオンライン専業で展開し、安価な授業の提供を実現した。最近では、学習管理やモチベーション維持をするための対面型の塾も開講しているという。運営企業の代表は弁護士でもある鬼頭政人さん。

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(資格スクエアの方々)

「司法試験を勉強する金銭的ハードルを下げ、司法修習が終わるまでの経済的負担を軽減する。そしてそれだけではなく、合格後に就職する職場や仕事の斡旋を行うことで司法試験に希望をもたせ、心理的なハードルも下げることを目指しているんです」そう彼は話してくれた。

◇◇◇

受験生である学生たち、そして弁護士の先輩が、声をあげている。

彼らの作ったサービスは、受験生・修習生が志す司法への道を照らす光となるはずだ。

この光をきっかけに、少しずつ、修習生・受験生の苦しい経済状況への対策が整備されていけば、そう願う。