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見捨てられた資源に再び価値を。リビルディングセンタージャパンが見出した広報戦略とは?

「ゴミとして処分されているものが、10年後、資源と呼ばれる文化を作りたい」

2018年01月23日 17時27分 JST | 更新 2018年01月23日 17時27分 JST

クラウドファンディング・プラットフォーム「CAMPFIRE」で資金を集め、長野・諏訪に「リビルディングセンタージャパン」を作った東野唯史さん。わずか40日間で目標金額を大きく上回る540万円以上を集めた彼のプロジェクトは、単に理想を掲げるだけでなく、徹底した客観視に基づく戦略があった。

目標金額の決め方からプロジェクト説明文の書き方まで、これからクラウドファンディングに挑戦する人への成功のヒントが詰まったインタビューをお届けする。

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東野唯史(あずの・ただふみ)......1984年生まれ。名古屋市立大学芸術工学部卒。空間デザインの会社に勤務後、2010年に世界一周の旅。帰国後の2011年からフリーランスデザイナーとして活動開始。2014年、妻の華南子さんとともに空間デザインユニット「medicala」の活動を始める。2016年10月、「リビルディングセンタージャパン」をオープン。

目標金額の理由は「旬」と「社会的意義」

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「ゴミとして処分されているものが、10年後、資源と呼ばれる文化を作りたい」ーそんな想いを掲げ、古材の買取・販売を行うリビルディングセンタージャパン(以下、リビセン)。

東野さんがリビセンを作るにあたり、資金集めのためにクラウドファンディングを利用したのはごく自然な流れだったという。

東野:僕は元々、デザイナーとして店舗やゲストハウスの空間づくりを手がけていたんです。その施主さんの中にクラフドファンディングを利用している人がいて、彼らのプロジェクトを手伝った経験がありました。だから、リビセンを諏訪に作りたいと思った時、資金集めの手段としてすぐにクラウドファンディングが頭に浮かんだんです。

ーー予備知識があったんですね。

東野:はい、これまでにプロジェクトを手伝う中で、目標金額は「200万円ならいける」という実感値がありました。もちろん、コンセプトがあって、日頃からFacebookを利用していて、かつ本気でなりふり構わずプロジェクトにチャレンジすれば、という条件つきですよ。

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妻の華南子さんとともに空間デザインユニット「medicala(メヂカラ)」として活動してきた東野さん。依頼を受けた土地に住み込み、依頼主やその友人たちと共に一緒に作るというスタイルで日本各地をまわってきた

ーーリビセンの目標金額は300万円でしたよね。実感値から100万円アップした理由はなんだったんでしょうか。

東野:「リビルディングセンター」というのは、アメリカ・オレゴン州のポートランドに元々ある施設。僕たちのリビセンは、その名前とロゴを正式に引き継いで作ったんです。ちょうど、当時はポートランドに注目が集まっているタイミング。旬の土地のカルチャーを日本に持ってくるということで、プロジェクトにも関心が集まるはずと考えました。

もう一つは、社会的意義ですね。リビセンで行なっているのは、主には古材と古道具の買取・販売です。でも、その根っこには、「ReBuild New Culture(=次の世代に繋いでいきたいモノと文化を掬い上げ、再構築し、楽しくたくましく生きていけるこれからの景色をデザインする)」という理念を広く知ってもらうことが目標にあるんです。この理念に、社会的意義を感じてもらえると信じていました。

ーー単なるビジネスではないということですね。

東野:いま、日本中で古い空き家やビルが壊されています。古い建具や床板には、時間が育ててくれた美しさ以外に加え、いまでは手に入らない材料や製材方法などがあって。

そんな古材の価値や魅力を、リビセンでは伝えたいと考えているんです。だから僕たちは、持ち主から依頼を受け、解体現場から建材を買い取ることを「レスキュー」と呼んでいます。

ーー目標を超える金額が集まったのも、その理念に共感が集まったことは間違いないですね。

普段のSNS運営が"ここぞというとき"に効いてくる

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東野:クラウドファンディングについて、僕たちの理念を伝えるためにとてもいいツールだと思っていました。

FacebookのようなSNSは情報がすぐに流れてしまいがちですよね。でもクラウドファンディングなら、自分たちの言葉で説明したページができて、かつプロジェクト終了後も残ります。これは広報ツールとしてとてもありがたいんです。

もちろん、単純にキャッシュが足りなかったという理由もあり、お金と広報の目的は半々くらいですが。

ーー普段、広報にはFacebookを使っているんですか?

東野:はい、ただ宣伝めいた投稿は極力しません。あと、Facebookでの投稿は1日1回、多くても2回まで。情報の純度を上げないと、本当に届けたい人にアプローチできなくて、ここぞというときに使えません

ーークラウドファンディングは、まさに「ここぞというときのお願い」ですね。

東野:普段は使わない【拡散希望】を使いましたね。いつも言ってたらダメですが、年に一回くらいなら皆シェアしてくれるので。覚悟を示すことが必要だと思ったんです。

プロジェクトの説明は自分のことを書きすぎない

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リビセンの2〜3階では、解体現場からレスキューしてきた古道具の販売も

東野:プロジェクトページの「プロジェクト本文」の書き方にも注意しました。皆さん、わりと自分のことを書きすぎてしまう傾向があると思うんです。その人の経歴が半分以上続くと、読み手が途中で疲れてしまうと思います。

ーー確かに、クラウドファンディングの説明は複雑になりがちですね。

東野:今までのことがあって、ポリシーがあって、これからやりたいプロジェクト内容の話があって......と、要素が多いですからね。ただ、全部説明する必要もないと思うんです。

どこをターゲットにするか、つまり出資者は誰かを考えると、ある程度は絞れるはず。例えば友人が多くて、彼らの出資が期待できる場合は、自分の経歴は少しでいいですよね。友人ならある程度知っているはずですから。

ーーそれより、自分がやろうとしている先に何があるかを書いた方がわかりやすいと。

東野:そうですね。あと、うちの場合は「文章を考える人」と「書く人」を分けました。僕の想いを自分で書くのではなく、妻に書いてもらったんです。

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東野華南子(アズノ・カナコ)さん。リビセンに併設されているカフェを切り盛りしている

東野:第三者のフィルターを通すことで、僕の思想が強く出すぎることがなく、伝わりやすい文章になっていると思います。それから文章の推敲もスタッフ全員にしてもらい、公開するまでに5回くらい校正しました。

とにかく、いかに読む人にスムーズに読んでもらえるかに気を遣いましたね。

失敗は、リターンを細かくしすぎたこと

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ーー相当考えた上でプロジェクトに臨んだということがよくわかったのですが、それでも失敗だったということはありましたか?

東野:出資者へのリターンを細かくしすぎると、発送がとても大変ということを知らなかったんです(笑)。うちはTシャツをリターンに設定してたんですが、発送前にサイズを一人一人に確認する作業が発生したんです。しかも、発送先の名前や住所のデータを宅配業者の伝票用の形式に変えるのにもひと苦労で。CAMPFIRE側に頼むこともできたんですが......。

ーー発送を自分たちでやるなら、その手間も考えてリターンを設定した方がいいということですね。

東野:はい、あえて出資額を一万円以上みたいに決めて、リターンの数を減らすのも手だと思います。結局、三千円のものを頑張って積み上げるより、三万円のものが一つ売れる方がいいはずです。

ーーなんだか、お店の経営みたいですね。

東野:そうですね。経営の話でいうと、僕たちは、店を作りたいという依頼を受けたら、まず施主さんに事業計画書と収支計画書を提出してもらうんです。やっぱり計画や戦略を立てるにあたり、一度、文章にしてみるのは大事ですから。

これが、大体の人はできてない。なので、その人がぼんやり思ってることを言語化するために、紙に書き出してまとめる作業をお手伝いしています。

ーー経営コンサルみたいですね! デザインの相談でそんなところまで。

東野:じゃないとデザインが書けませんから。紙にまとめると、後から振り返れますし、人にも自分のやりたいことを説明できるようになりますよね。 せっかくなら長くお店を続けて欲しいし、その人自身がお店をやることで幸せになって欲しいですから。

ーーそれも、結果的に世の中を良くするということに繋がりますね。

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東野:はい。リビセンが、この諏訪だけじゃなく日本のいろんな土地にできて「ReBuild New Culture」という理念が広まってほしいと思っています。

でも、まずはこのリビセンをきちんと安定させて、自分たちの足場を固めたいですね。もし、他の土地で古材屋さんをやってみたいという人がいたら、どんどん応援しますよ。

自分たちのコミュニティだったり、リビセンに来てくれる人と話していると、みんな古いものが好きなように感じてしまいますが、日本全体でみると、まだまだそうではなくて。リビセンの活動を通じて、もっと仲間を増やしていきたいです。

■リビルディングセンタージャパン

  • 住所:長野県諏訪市小和田3-8
  • 定休日:水・木曜日
  • 電話:0266-78-8967
  • 営業時間:11:00~18:00
  • http://rebuildingcenter.jp/

(取材・執筆:友光だんご、編集:BAMP編集部)

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