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「リーダーになりたくない」は「仕事をしたくない」という表明と同じ――齋藤孝先生と考える最強チームの作り方

2013年10月28日 19時38分 JST | 更新 2013年12月28日 19時12分 JST

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特集「最強チームの作り方」では、チームで仕事やプロジェクトを進める際の考え方やヒントを探ります。「リーダーになりたくないと言うことは、仕事をしたくないということと同じ」「誰もがスティーブ・ジョブズのようなカリスマリーダーを目指さなくてもいい」と話すのは、ベストチーム・オブ・ザ・イヤー実行委員会 委員長に就任した 明治大学文学部 齋藤孝教授。若手ビジネスパーソンが抱えるチーム作りの悩みを解消してもらいます。

■リーダーシップなくして仕事はない

――齋藤先生は新著『人はチームで磨かれる』を出されましたね。今、チームが改めて見直されている理由は?

この20年で急速に仕事の質が変わり、ビジネスの課題が絶えず生まれ、処理すべき情報が膨大になっています。そこで問題を見つけ、解決していく姿勢こそが、仕事の本質になりつつあります。いわば、非常に流れの早い潮の流れを泳ぎきれる人間が求められているのです。

今、仕事で本当に必要なのは「新しい意味や価値を生み出すチーム」を引っ張っていける力だと思うのです。プロジェクトは特別なものではなく、日々の業務がプロジェクト的になっています。チームが直面する課題ごとに、誰もがリーダーになって課題を解決していく――そんなチーム作りが必要であり、与えられた仕事をするだけでは不十分なのです。

与えられた仕事をちゃんとしていれば、みんながうまくいく日本経済の時代がありました。高度経済成長期の波に乗れた時代だったんですね。でも今は、新しい価値を生み出せなければ、それは仕事と呼べなくなってきています。簡単な業務はPCでできますし、アウトソーシングで外注することも可能ですから。

――個人の力ではなく、チームで課題に対応する力が求められている。

ええ、ビジネスにおいて必要なチームは、サッカーから学べます。サッカーはピッチに立った全員が動き、守りますよね。チーム全員がゴールに向けてアイデアをその場で共有しながら、チーム全員で攻守を一体化していく。メンバーごとにこれをしなさいと決めるのではなく、全員がその場でその都度判断して、連動して動くことが求められているのです。

今の時代が仕事やチームにリーダーシップを要請しているのなら「リーダーシップなくして仕事はない」ということです。誰か一人にリーダーシップがあればいいのではなく、全員がリーダーシップを持っておく必要がある。これがポイントでしょう。

■自分がリーダーに向いているかを考えるのは、時間の無駄

――ベストチーム・オブ・ザ・イヤー実行委員会が若手ビジネスパーソンに調査を実施したところ、回答者の7割が「リーダーになりたくない」と答えました。

リーダーになりたくないということは、仕事をしたくない」という表明と同じではないでしょうか。今の時代がリーダーを求めていて、誰もがリーダーとして意識を持つ必要があるにもかかわらず、このような回答になる。ここに大きなギャップがあります。

ここは考え方をすっきりと改めて、「リーダーシップなくして仕事なし」「リーダーになる覚悟がなければ、仕事をしたくないということだ」と考えてみると良いでしょう。

――「自分なんてどうせ偉大なリーダーにはなれない」と挑戦を避けてしまう傾向があるのかもしれません。

カリスマをリーダーと思うな」と伝えたいですね。リーダーにはさまざまな形があって、支えるリーダーもいれば、マネジャー的な細やかな配慮に長けたリーダーもいます。カリスマである必要はまったくないんですよ。

大切なのは、当事者意識を持つことです。チームの目の前にある課題を自分の問題と考え、自分の責任で問題を解決する。独立採算的な考え方で現況を乗り越える覚悟を持つということです。

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――偉大なリーダーになれないと考える必要はないと。

ええ、「自分がリーダーに向いているかを考える時間は無駄だ」ということですね。なぜなら誰もがリーダーという自覚を持って、チームを回していくことを求められているからです。

確かに、過去に偉大なリーダーがたくさんいます。カエサルやナポレオン、スティーブ・ジョブズだってそうです。でも誰もが彼らと同じリーダーシップを発揮できるかというと、それは現実的ではありません。リーダーシップにはさまざまな形があり、全員がスティーブ・ジョブズになる必要はありませんから。

カリスマリーダーは、かえってチームでは扱いにくいという面もあるわけです。リーダーでしかいられない人というのは不自由ですから。チームを作るといつもその人がリーダーになりたがるけど、解決すべき課題に対して、そのリーダーの素養が即していない場合もあり得ます。

――リーダーの自覚をメンバーが持つにはどうすれば。

私が学生に教える時は、4人チームを組んで、徐々にリーダーの役割を移り変わらせるようにしています。すると、みんな「こうやればいい」と自発的に動き、リーダーの仕事に慣れてくるんです。

練習すれば、誰もがリーダーの役割を発揮できるよというのが私の提案です。また課題に沿ってチームの中で柔軟にリーダーを配置し、リーダー、サブリーダー、メンバーという3段階を自由に行き来できるような柔軟性を備える。これがポイントですね。

――向き、不向きは問題ではなく、誰もがリーダーなのだと。

ええ、「押しが強い」とか「強気だ」といった気質はまったく関係ありません。リーダーは問題に対するビジョンがあり、何をすべきかが見えてみて、気力・情熱を持ちあわせて言葉に力を込められる――。リーダーに必要な素養はこんなものだと思います。問題に対して当事者意識を持てば、これらは自然と表に出てくるものです。

■ビジョンが描けないなら、メンバーととことん語り合ってみよう

――ビジョンの話が出てきました。実際にリーダーになってみたものの、大きなビジョンが描けないという若手も多いのではないでしょうか。

ビジョンは自分一人で考えていてもなかなか見えません。ビジョンは話しながら思い描けるものだと思っているんですね。だから僕はメンバーと「対話する」ことをお勧めしています。

「どういうものを作るか」「この先どうすればいいか?」といったことをチームメンバーや社内でとことん語り合ってみる。そうすると、「ビジョンはこうだ」というものが往々にして見えてくるものです。

――なるほど、確かに何度もメンバーと話をしながら、うまくビジョンを作るリーダーもいます。

ビジョンを持っている人は、非常によく語るんですね。語っているうちにビジョンが固まってくるということは往々にしてありますし、経験値の高い人と語り合っているとヒントも豊富に出てきますから。

その際は、紙とボールペンを持って、どんどん手書きでメモをしていくことがお勧めです。そうすると、形にした言葉が段々とビジョンに近づいてきますから。

(取材・執筆:藤村能光/撮影:橋本直己

(この記事は、2013年10月17日のベストチーム・オブ・ザ・イヤー「『リーダーになりたくない』は『仕事をしたくない』という表明と同じ――齋藤孝先生と考える最強チームの作り方」から転載しました)