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プレイングマネジャーが力を発揮するとチームはダメになる?――齋藤孝先生と考える最強チームの作り方

2013年11月03日 16時13分 JST | 更新 2015年09月26日 01時05分 JST

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特集「最強チームの作り方」では、チームで仕事やプロジェクトを進める際の考え方やヒントを探ります。「リーダーに必要なのはスキルではなく、ミッション、パッション、ハイテンション」と話すのは、ベストチーム・オブ・ザ・イヤー実行委員会 委員長に就任した 明治大学文学部 齋藤孝教授。若手ビジネスパーソンが抱えるチーム作りの悩みを、「リーダーとしての振る舞い」の視点から解消してもらいます。

(前編:"「リーダーになりたくない」は「仕事をしたくない」という表明と同じ"も併せてお読みください。)


■「その問題を解決しないといけない」という強い使命感を持つ

――リーダーに必要な根本的な素養とは?

リーダーで一番大事なのは「問題が見えていること」です。そうじゃないと、チームを引っ張っていく行き先が分からないですから。率いる方向性を指し示すことができれば、後はメンバーそれぞれが得意な仕事をやればいい。

「なんとしてもゴールまで辿り着く」という気力を持ち、その意思をメンバーに表明するのがリーダーです。特殊能力はまったく必要ありません。意思や気力を保ち続けると、自然とみんなが頼りにしてくれるようになる。そこにできているのが、チームです。

――チームのゴールを指し示すことが何より重要だと。

ええ。サッカーの小野伸二選手は、高校時代からそうだったみたいですね。敵に2点取られても、小野選手はずっと明るい表情でプレーし続けたそうです。結果として所属する清水商業高校が逆転勝ちしたそうです。

サッカーで相手に2点先取されると、普通は意気消沈しますよね。そこでただ一人「全く問題ない」「必ず逆転できる」と前を向く。自分たちの向かう方向は正しいんだとリーダーが表明しつづければ、チームメンバーが明るくなり、不安を持たずに進んでいける。

そういう意味では、リーダーはスキルよりも「ミッション、パッション、ハイテンション」が必要だと思うのです。

――まさに小野伸二選手は、「ミッション、パッション、ハイテンション」というリーダーの振る舞いをしていますね。

はい、この中でも特にミッションは大事で「その問題を解決しないといけないんだ」という強い使命感を持つことです。これはその問題を真剣に考えているかということであり、誰もができること。リーダーとしての気質はまったく問題ではありません。

ある大手電鉄会社の社長に「どんな人を採用したいか?」と聞いたら、「当事者意識がある人」と一言答えてくれました。「リーダーシップがないからリーダーになりたくない」という発言では、当事者意識が足りないわけです。

「この問題は誰かが解決してくれるだろう」ではなく、「自分が何とかしなくちゃいけない」という意識を持てるかどうかです。リーダーの素質をその人の性格や気質の問題に帰着させるのは、卑怯だと思いますね。

■リーダーはプレイングマネージャーではない

――「プレイングマネージャー」ではチームが回らないという意見があります。リーダーとしてチーム全員で士気を高めていくにはどうすれば良いでしょうか?

プレイングマネージャーって、"エースで4番"ということですよね。こういうリーダーがいると、ほかのメンバーはどうしても力を発揮しにくいんですね。

ここは、リーダーの仕事をご自身でとらえ直してみるといいでしょう。リーダーは、プロジェクトに初動を与えるための仕組み作りをする役割だと考えてみましょう。

プロジェクトを動かすために誰と一緒にやるか、そのために人と人とをどう結びつけるかを考え、初回の会議で初動のエネルギーを与える。後は身を引いて、チームが動き出せるようなシステムを作る。これがリーダーの仕事です。

リーダーは、チームが自律的に動いていくシステムを最初に作れる人のことを指します。もちろん率先する姿勢は重要ですけど、肝心なことを一人でやるのではなく、それを3つか4つの役割に分担して、後は任せるということです。思わず「自分でやりたくなっちゃう」ことを、ぐっとこらえるのが大切です。

――自分で何でもできてしまうがゆえに、任せることが難しいというプレイングマネージャーも多い。

メンバーのストロングポイント(長所)を見極めるのが大事ですね。例えば5人チームの場合、「君はこれを事務的にまとめてね」「君は交渉にあたってね」というように、長所に合わせて役割を分担してあげると、チームのやる気も出やすくなります。

「任せる」ことと、「まったく無関心でいる」ことは違いますよ。まったく口を出さずにまかせっきりで回るチームもありますが、それはレベルが高いチームの話です。そこまでのチームでない場合は、リーダーがその都度チェックや確認をすることが必要になってきます。

「このペースでいいよ」「この方向性で大丈夫」とペースを調整するのも、リーダーの役割です。上手なチェック機能(システム)を自分の中で持つことができれば、「エースで4番」が引っ張るチームではなくなっていきます。

――それができると、チームは回り始める。

逆に、プレイングマネージャーをずっとやっている人は、次のリーダーを育てられないという課題に直面するはずです。リーダーにとっては、そのチームで仕事をしたメンバーが仕事を覚えて、別のチームのリーダーに育成していくことも重要です。

世界的なサッカー指導者のモウリーニョ監督は、カリスマで自己中心的だと思われていますが、一緒に仕事をしたビラスボアス監督は、今や超一流のチームで監督をしています。ビラスボアスがモウリーニョの元で育ったということですね。これはモウリーニョにリーダーシップがあったからこそ、新しいリーダーの育成が実現できたのでしょう。

■あなたのチームは、本当にクリエイティブですか?

――メンバーがリーダーシップを自覚するようになるのは、難しいのではと思います。

その場合は、まずは「小さなリーダーシップ」から練習してみると良いです。私もよくやるのですが、チームで直面した課題ごとにワーキンググループ(作業集団)を作ってみて、そこで責任者やリーダーを決めるんです。

人数は3,4人くらいがいいですね。その小さな集団でみんなが責任とリーダーシップを持って仕事を引き受け、その課題をチーム全体に報告する練習をする。3人ぐらいのチームですと、リーダーにカリスマ性がなくてもチームで業務を回せるんですね。

「最初は数百万の投資でもドキドキしたけど、次第に何千万、何億円と投資しても驚かなくなった」。とある会社の社長がこんな話をしていました。それと同じでリーダーシップも慣れなんです。「最初は小さなリーダーシップ」というように範囲を限定して、練習してみると良いです。

――お話を聞きながら、チームワークは絆や精神的なつながりだけではなく、もっと機能的で、訓練によって強くしていけるものだと思いました。改めて、齋藤先生が考える「新しいチームワーク」とは?

私にとってのチームワークは、スポーツとほぼ同じです。チームで新しいアイデアを出しあい、ゴールに向かうサッカーのようなものですね。そこでどうしても必要なのは、クリエイティブな関係性をチームで作るということです。

クリエイティブとは「新しい意味や価値が生まれる」という意味です。例えば、立て込んでいる業務を「こんなアイデアで改善してみよう」と効率化する、メンバー同士で雑談をしながら「あそこの連絡でミス多くない?」「では確認の中でこういう段取りにすればミスを減らせるよね」と声を掛け合う。これもクリエイティブな関係性です。

普通の業務にもクリエイティブさが要求されているということです。むしろ、あらゆる仕事のあらゆる場面で、クリエイティブが必要になっているんですね。

(取材・執筆:藤村能光/撮影:橋本直己

(この記事は、2013年10月30日のベストチーム・オブ・ザ・イヤー「プレイングマネジャーが力を発揮するとチームはダメになる?――齋藤孝先生と考える最強チームの作り方」から転載しました)