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「南アフリカ戦よりアメリカ戦の方が苦しかった」──ラグビー日本代表がW杯で叶えた"憧れのチーム"

2015年12月08日 22時06分 JST | 更新 2016年12月07日 19時12分 JST

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9月18日に開幕したラグビーワールドカップ2015。優勝候補の南アフリカ代表に日本代表が勝利したのをきっかけに、日本中のラグビーへの関心が一気に高まった。

決勝トーナメントには進めなかったものの、3勝1敗。"史上最強の敗者"とも呼ばれた日本代表チームの強さのワケはなんだったのだろうか。

キャプテンのリーチマイケルさんと、2012年のエディー・ジャパン誕生から2年間キャプテンを務めた廣瀬俊朗さんの二人にお話を伺った。

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ワールドカップ前の国内最後の壮行試合でのファンとの集合写真

「憧れの存在になること」がひとつのキーワード


今回のW杯でチームが目標としていたことを教えてください。

廣瀬 :僕がリーダーだったときは「世界ランクで10位に入りたい」というのが最初のチームの目標でしたね。それを成し遂げるためには何が必要かということを話し合いました。

これまでのW杯では、前の日本代表から次の日本代表に受け継がれたものってあまりなかったんですよね。そこで、これからは勝つための文化を継承していきたいとも思っていました。

マイケル:大きく分けていえば、チームの目標は3つありました。ひとつはプライドを持つこと。その次は憧れの存在になること。そして、日本のラグビーの歴史を変えること。

廣瀬 :歴史を変えるというのはずっと言っていたことだったんですが、歴史を変えたことによってどうなりたいかということですよね。考えた末のその答えが「憧れの存在になりたい」ということでした。だからマイケルがキャプテンになったとき、「憧れの存在になる」というのがひとつのキーワードでしたね。

南アフリカ戦の勝利で日本中が熱狂しました。まさに「憧れの存在」になったのではないでしょうか。

廣瀬 :あの一戦で全ての環境が変わりましたね。求めていたことだったけど、ちょっと驚きました。日本のテレビを見てたくさんの人が連絡をくれて、メールが何百通も来ていて。あのときはみんなその返信に追われていました。ただ、次の試合まで中三日しかない状況だったので難しかったですね。

マイケル:次の試合で負けたら「たまたま勝った」と思われてしまうプレッシャーはありました。試合の間が中三日しかないのはしんどかったですが、そのための練習もしてきましたしみんな力を振り絞ってやりました。

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うまくいかないときの「チームのブレ」が一番の恐怖


勝ち点差で決勝トーナメントに進めるかわからない状態でのアメリカ戦では、チームの士気は落ちなかったですか?

廣瀬 :スコットランドが勝って、自分たちが決勝に進むことはできないのだろうなとは思っていました。もちろんちょっと心の整理は必要でしたが、チームの中で「どんな結果になったとしても、四年間の集大成になるような試合をしよう」という話はしていましたから。士気が下がるということはあまりなかったです。

それよりもアメリカの方が日本よりもランキングが下なので、「当然勝つだろう」という立場で試合をすることには苦労しました。これまでのW杯で日本のレベルの方が上だと見られることはなかったので、その難しさはありました。

マイケル:全試合の中で一番大変で難しい試合でしたね。

廣瀬 :そう、メンタル的にね。やっぱりW杯ってチャレンジャーの方がやりやすいんですよ。

「勝つだろう」と思っていた試合でうまくいかないと「なぜなんだろう。俺達のやり方は間違っていたのか?」と試合中に思い始めるんですよね。そしたらチームがブレ始めてしまうんです。

南アフリカ戦でも、向こうのチームはその状態に陥り、結果として僕らに勝利が舞い込んだというか。その恐怖を知っていたから、アメリカ戦は怖かったですね。今度は自分たちが追われる立場になるので。

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勝つだろうという思い通りにいかず、チームが崩れ出すのはキャプテンとしても怖いですね。チームをまとめていく上で何が必要だと思われますか。

マイケル:目標とプランニングをしっかり持つことですかね。それがしっかりとチームの中で共有されていればブレないと思います。

廣瀬 :まとめる立場の人間が尊敬できる人かどうかというのは大事だと思います。

選手に対して基本的に何を言ってもいいと思うんですけど、その人が尊敬されているかどうかによって相手の受け止め方が違うじゃないですか。そこが大前提にあると思います。まあ、マイケルは大丈夫だね、誠実だから。

マイケル:自分では「ちゃんと相手に伝わっているかな?」と思うことはありますけどね。みんながついてこれているのかなというのは心配です。

廣瀬 :それが正常な感覚だと思うけどね。その危機意識を常に持っていると、みんなのことを注意深く見るようになるじゃないですか。「自分は大丈夫だ」と思っている人は危ないと思います。

それぞれの役割が明確だったからこそ全員が必要不可欠だった


今回は代表チームのチームワークのよさも結果につながったと思うのですが、なぜそんなチームができたのでしょうか?

マイケル:それぞれが役割を分担しているからじゃないですかね。キャプテンになって最初のころは自分ひとりで全部やろうとしていました。そうしたら自分のプレーが全然だめになってしまったんですよね。

それで、タックルのことだったらタックルの人、ディフェンスが怪しかったらディフェンスの人同士で指導し合うように役割を分担するようにしました。「なんでリーダーが指摘しないんだ」と監督から言われたこともありましたが、「とにかくそれぞれがチームの中でやることを明確にしよう」という方針はブレなかったです。

廣瀬 :みんなに居場所があるというか、役割があることで自分がチームにとって必要不可欠だと思えることもよかったのではないでしょうか。

チームの仲もよかったから、「この仲間のために何かしたい」っていう気持ちも大きかったでしょうしね。チームのためを思えば、自分の小さなネガティブな気持ちもどこかにいってしまう。

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今後日本のラグビーにとって必要なことはなんだと思いますか。

マイケル:このW杯でやっと「勝つ文化」を作れたと思います。今後はこの文化をどうやって継続していくかどうかです。このW杯で勝った経験をした選手はたくさんいます。その選手たちが下の世代にきちんと継承していけばブレないのかなと思います。

あとは、「ラグビ―日本代表」という立場がもっと憧れのポジションになることですね。日本にはいい選手はたくさんいます。ラグビーをやっている学生や社会人も含めて、もっと日本代表を目指してくれる人が増えれば日本はもっと強くなります。

廣瀬 :今後は憧れの存在になるためにベスト8に入るということでしょうね。今回のW杯で憧れの存在に一回なったと思うので、一過性に終わらないためには今後どうやっていくかが肝心です。

マイケルにはまだ現役でプレーしてほしいですけど、僕は今後はラグビーを取り巻く環境を変えていきたいですね。ケガをしたときの保障とか、今の日本はラグビーをやるための環境がまだまだ整備されていないので。勝った今だからこそ変えられることがあると思います。ラグビーを子どもにやらせたいなっていうスポーツになってほしいです。

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(執筆:成瀬 瑛理子+プレスラボ/撮影:橋本直己

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ベストチーム・オブ・ザ・イヤー」は、職場での「成果を出すチームワーク」向上を目的に2008年から活動を開始し、 毎年「いいチーム(11/26)の日」に、その年に顕著な業績を残した優れたチームを表彰するアワード「ベストチーム・オブ・ザ・イヤー」を開催しています。 公式サイトでは「チーム」や「チームワーク」「リーダーシップ」に関する情報を発信しています。

本記事は、2015年11月26日の掲載記事「南アフリカ戦よりアメリカ戦の方が苦しかった」──ラグビー日本代表がW杯で叶えた"憧れのチーム"より転載しました。