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国連が選ぶべき、効率の良い政策とは 

2015年02月23日 23時57分 JST | 更新 2015年04月25日 18時12分 JST

国連では今、世界で最も力を持つことになる政策の交渉をしています。この政策で数兆ドルが動き、数億人を貧困と飢餓から救い、暴力を減らして教育の機会を増やします。つまりこの政策が世界をより良い場所へと変えるのです。交渉がうまくいけばの話ではありますが。

2000年9月にも同じことがありました。100人の国家元首と47人の政府の長が、国連ミレニアム開発目標(MDGs)の基礎を築いたのです。この目標は短く、具体的で、とても単純で、誰にでもわかる特別な開発目標でした。なぜなら2015年という明確な期限を示していたからです。この時世界の指導者たちは、本物の、検証可能な約束をしたのでした。目標を完ぺきに達成できたわけではありませんでしたが、この目標のおかげで私たちはずっと良い方向に向かうことができました。

ですが、このミレニアム開発目標は2015年に期限を迎えます。私たちは次に何をするべきでしょうか。

国連はミレニアム開発目標の次の、2016年から2030年の期間の、持続可能な開発目標(SDGs)の策定を始めています。今後10ヶ月以上にわたり、各国、各使節団、各国連機関、各非政府組織(NGO)は、次の目標を決めるため、そして願わくは絞り込むために、込み入った交渉を続けるでしょう。

ここで決める目標で、2.5兆ドルにおよぶ開発援助の使い道がほとんど決定するのですから、誰もが自分の好みを報告書に盛り込みたがるのは当然でしょう。現在、1,400以上の目標が提案されています。1,400もの目標に、どうやって優先順位を付けるのでしょう。そんなことは不可能です。

もっと上手な決め方があります。私のシンクタンク、コペンハーゲン・コンセンサスで行っている、支出するドル当たりで最も良い効果を生むのはどの目標かを測定するプロジェクトです。トップクラスの国際的な経済学者たちが60のチームを編成し、世界への経済的利益だけでなく、健康、社会、そして環境面での利益も考慮に入れながら、50ほどの目標の費用対効果を推計します。国連の機関もNGOも、発展途上国の企業も先進国の企業も、その推計を基に目標を検証すればいいのです。さらに2人のノーベル賞受賞者が、経済的根拠を判断しながら、すべての目標に順位を付けていきます。

国連の政策を、経済的根拠ごとに色で塗り分けるところを想像してみてください。効率の良い目標は緑でハイライトします―こういった目標にはほとんど費用がかかりませんが、その15倍以上の経済的、社会的、環境的効果があります。まずまずの目標は黄色で塗ります―こういった目標も費用以上の効果をもたらします。そして悪い目標には赤で色を付けます―こういう目標は世界にもたらす効果を上回る費用がかかります。何千ページもの経済論文に裏付けされた、このような簡単な色分けで、世界中の忙しい政策決定者達が、一番効果的な目標を選ぶことができるのです。

この方法で、国連の持続可能な開発目標に関するワーキング・グループの、169の目標を定める最終報告書を制作しました。優れた目標を緑でハイライトし、ひどく効率が悪い目標には赤い印を付けて、国連の交渉担当者に警告をしています。この報告書は日ごろ穏やかな国連の人たちには衝撃的なものでしたが、すべての目標が等しく良いものだとは限らないという重要な指摘をしています。

マラリアと結核を減らすのは素晴らしい目標なので、優先的に緑に塗ります。解決が簡単で安価で十分な効果もあるため、費用は小さいのです。死や病気の長い苦しみを避けるだけでなく、社会的生産性を高め、好循環をもたらすので、恩恵は大きくなります。

開発途上国での化石燃料への助成金の撤廃も、優先的に緑が付きます。この助成金で一部の貧しい国ではガソリンが1リットル当たり数セントで買えるのですが、その恩恵を受けるのは車を所有できる中・高所得層だけなのです。助成金撤廃は資源の浪費を止め、価格設定を適切にし、政府予算の負担を和らげるだけでなく、二酸化炭素の排出を減らすことにもなります。

一方で、エイズ撲滅は困難であり、効果もあまり出ていません。高い費用がかかり治療は一生続くため、この目標には緑ではなく黄色を付けました。

2030年までに再生エネルギーの比率を倍増させるというのは良い目標のように思えますが、実際には真っ赤だということが判明しています。二酸化炭素をほんの少し減らすために大変なコストを費やし、炊事や暖房のための近代的な設備を持たず、質の悪い燃料を屋内で燃やしている世界のほぼ半数を占める人たちの、室内空気汚染の問題を解決するものではないからです。この問題を解決するためには、貧しい人々により安価なエネルギーを供給することを優先するべきです。それが室内空気汚染を減らし、経済成長を高め、貧困を緩和することが実証されています。

目標を書いた書類が真っ赤に塗りつぶされたのは、目標を作った人たちにとっては不愉快なことでしたが、同時に多くの発見もありました。米国の国連大使は「私のお気に入りの目標の一つが赤く塗られたのは気に入りませんが、その理由となっている経済的根拠には皆が耳を傾ける必要があります」と述べています。それ以外の目標を緑にしたことは好意的に受け取られ、すぐにこれらの目標を継続し強化する議論が始まりました。

ところで、グローバル社会が今後15年間で何を優先すべきかを選ぶ時、経済が唯一の物差しになるわけではありません。値段や大きさは重要な情報ではありますが、それだけで料理を選んだりしないのと同じことです。国連の目標の費用対効果を実証することは、悪い目標に向かい風を、良い目標には追い風を送ることになるのです。

十分な根拠がある経済的論議の裏付けに基づいて、例えひとつだけでも効率が悪い目標を効果が高い目標に置き換えることができれば、数兆ドルに及ぶ開発援助と政府支出で世界を変えることができます。想像してみてください。効率が悪い目標に費やされるかもしれない200億ドル以上を、費用1ドル当たり26ドル分の効果を生む目標に使おうと議論できたら、これからの15年でどれだけの違いが出るでしょうか。5000億ドル分の効果を世界にもたらすことになるのです。これこそ、これから1年のうちに私たちがしなければならない、最も重要なことではないでしょうか。