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日本がTPPに対する立場を変える時が来た

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ジョー・バイデン米副大統領が、環太平洋パートナーシップ(TPP)協定交渉の年内妥結を目指し、東京にやって来る。日本のメディアの関心は農産品の関税に集まるかもしれないが、内部告発サイト「ウィキリークス」が先月末に公開したTPPの交渉文書を見る限り、この協定は、保健衛生と医薬品の入手問題にもさまざまな悪影響を及ぼすことになる。

ウィキリークスが公開した文書から、日本政府の立場も分かってきた。米国が求めている条項案は、他のいかなる貿易協定よりも医薬品の入手機会を脅かすものだが、残念ながら、日本政府は、いくつかの最も有害な条項を支持している。そしてこの姿勢は、アジア太平洋地域の弱い立場の患者を大いに苦しめる可能性がある。

米国が推している厳しい知的財産条項とは次のようなものだ。20年を超える特許期間の延長、医療行為や動・植物への特許付与、既存薬に対し有効性向上を伴わない構造変化に対する特許付与、製薬会社が一定期間臨床データを独占できる権利の許可(バイオ医薬品の場合は12年におよぶ)。

このような手段の全てが、薬価を下げる効果をもつジェネリック薬(後発医薬品)の製造と販売の阻止に最終的に繋がっていく。ジェネリック薬は、アジア各地の数百万という人びとにとっての命綱だ。例えばHIVの治療費は、ほんの10年余り前までは1人当たり年間1万ドルかかっていた。しかしジェネリック薬により99%近く値が下がり、今では120ドルとなった。ジェネリック薬による価格競争を阻害する要因を作れば、治療費が患者に手の届かないほど高額になってしまう危険があるのだ。国境なき医師団のような組織が、ミャンマーやカンボジアで数千人の患者を治療する際に使う医薬品のうちジェネリック薬は実に90%を占めている。

より大きな影響を被るのは、現在交渉に参加しているベトナム、マレーシア、ペルーといった開発途上国に住む患者だろう。しかし影響はそれらの国々にとどまらない。TPPが将来の貿易協定のモデルになると謳われているため、他の国々にも影響が及ぶことになるからだ。

そしてTPPは、医療や医薬品の費用の高騰を招き、日本の公衆衛生にも影響を及ぼす。日本は、世界でもC型肝炎による疾病負担が最も大きい国のひとつで、感染者数は300万人以上にのぼる。新しい経口薬が市場に出てきているが、価格は桁違いに高額だ。新薬のひとつである「ソホスブビル」の価格は、3ヵ月間の治療を受けた場合で約8万ドルになると予想されている。もし日本がTPP条項案を受け入れれば、日本の保健システム、そして最終的には患者が、この薬の廉価版を入手するために長い期間待たされることになる。

今回のバイデン副大統領の訪問に際して、日本政府がTPPの優先事項を再編することを強く求める。そして、日本が保健システムを守ること、安価な医薬品の入手を妨げ、医療費を高騰させるような条項が最終合意に盛り込まれることがないよう努めることを、強く求める。

国境なき医師団(MSF)は、紛争や災害、貧困などによって命の危機に直面している人びとに医療を届ける国際的な民間の医療・人道援助団体。「独立・中立・公平」を原則とし、人種や政治、宗教にかかわらず援助を提供する。医師や看護師をはじめとする海外派遣スタッフと現地スタッフの合計約3万6000人が、世界の約70ヵ国・地域で活動している。1999年、ノーベル平和賞受賞。

Twitter:@MSFJapan

Facebook: http://www.facebook.com/msf.japan

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