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Apple Music、LINE MUSIC、AWA......どれが勝つかよりも重要なこと

2015年07月02日 21時10分 JST | 更新 2016年07月02日 18時12分 JST

ストリーミングミュージックの時代が始まった

柴那典(以下、柴) 今回の「心のベストテン」も、いろんなテーマをもとに今おもしろい音楽について熱く語っていこうと思います!

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「2015年、本当に行くべき夏フェスはどれ?」「Kis-My-Ft2が"攻める"理由」「ミスチルとZEDD、Iの時代のポップ恐竜とWEの時代のEDM」「悪意をゴージャスに昇華するポップの力」「アラバマのド田舎から変わりゆくアメリカ」「現代シンガーソングライター論」「オリジナルラブ的成熟J-POP論」「GLAYに学ぶブランド論」「LINE MUSIC、Apple Music、そして......」「テイラー、ZEDD、ミスチル、道重......1989年生まれの革命者たち」

柴 まずは、タイムリーな話題なんで、新しい音楽サービスの話から行きましょう。

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大谷ノブ彦(以下、大谷) いいですね! これは、実はなぜ我々がこの「心のベストテン」をやってるのか?という話にもつながる話ですよ。

 LINE MUSICAWAと、5月から6月にかけて新しい「聴き放題」の定額制ストリーミング音楽サービスが続々と始まりました。Apple Musicも6/30に100以上の国でスタート、日本でも「まもなく登場」とされています。海外では一般的になっているSpotifyも近く日本に上陸すると言われていますし、グーグルも定額制の音楽配信を始めました。

大谷 ストリーミングミュージックの時代が始まった。これはね、黒船です!

 大谷さんはこの一連の流れはどうとらえていますか?

大谷 僕はね、はっきり言って賛成派です。アーティストにどれだけ利益がいくのかとか、CDはどうなるのかとか、いろんな議論がなされるとは思いますけれど、少なくとも誰にもこの波を止めることはできない。これから音楽を聴くツールが変わっていくことは間違いない。柴さんは?

 僕もこの変化はすごくポジティブにとらえていますね。早く始まってほしいと、ずっと思ってました。

大谷 これが始まると何が変わるか。音楽を簡単にシェアできるようになるんです。特にLINE MUSICは、スタンプと同じように曲を送れる。

 今までは友達同士でCDを貸し借りしていたのが、LINEのトーク画面上でやれるようになった。

大谷 LINE MUSICには学割料金があるのもいいですね。一般は1000円ですが、学生は600円で一ヶ月聴き放題になる。

 実は僕らもすでに使ってますしね。この対談の打ち合わせをLINEでやっているんですが、そこでもすでにいろんな曲が飛び交っている。

大谷 僕はね、LINE MUSICがスタートした6月11日に、サービス開始を記念したトークイベントをやったんです。Crystal Kayさんがゲストで僕が司会だった。「LINE LIVE CAST」という生配信番組だったんですが、これが、フタを開けたら25万人集まったんですよ。

Crystal Kay「LINE MUSIC」始動を祝う「新しい音楽の発見も」- 音楽ナタリー

 え? それはどこでやったんですか?

大谷 LINEのアプリの中で動画を生配信していて、ニコ生のように視聴者のコメントを送ることもできる仕組みなんです。それを25万人が観ていた。これ、はっきり言ってテレビの深夜番組に出るよりもアーティストにとっては大きなプロモーションになりますよ。

 確かにそうですよね。

大谷 しかもそのほとんどが10代から20代前半ですからね。もちろん、LINE MUSICは、ソフトの使い勝手がこなれていなかったり、アーティストによっては楽曲がそろってなかったり、いろんな問題点はあります。でもそれはこれから改善されると思いますね。

アメリカでは「リコメンダー」という職業が生まれている

 AWAはどうでしょう? エイベックスとサイバーエージェントが始めた音楽配信サービスで、プレイリスト機能や使い勝手の評判が高い。

大谷 AWAはアメブロと連動して、タレントと一緒にいろんなことをやっていったらおもしろそうですよね。僕も実はVIP会員です。

 そして、この対談を収録している時点ではサービスはスタートしていませんが、Apple Musicは提供曲数の多さがポイントになりそうです。

大谷 でもね、正直「どのサービスが勝つか」なんて、僕らにとってみればどうでもいいんですよ。

 そうですよね。そういう話は、経済誌とかIT系のメディアに任せればいいと思います。

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大谷 大事なポイントは、ストリーミングが普及すると音楽の聴かれ方が大きく変わるということなんです。

 と言いますと?

大谷 それはずばり、リコメンドが重要になってくる。

 そうですね。RTやシェアする記事と同じノリで、身近な人、信頼できる誰かがオススメしている曲を聴きたくなるということですよね。

大谷 動画でもそう。YouTubeのトップ画面で検索するよりFacebook経由で動画を見る機会の方が増えた。「この動画、面白いよ」という身近な人の推薦がつくことによって広まっていく。普通の人は「何でも観れますよ」と言われても選べないんですよ。

 ストリーミングで「数百万曲が聴き放題です!」って言われても、それだけだと困っちゃうんですよね。

大谷 今、アメリカでは「リコメンダー」という職業が生まれているんです。リコメンダーというのは、情熱を持って音楽を語ったり、いい曲を人に勧めたりする人。まあ、要はラジオパーソナリティと一緒です。で、スマホをカーステにつないで、そのリコメンダーが選んだ曲のプレイリストをかけっぱなしにする人が増えている。向こうでそうなっているということは、間違いなく日本でも今後そうなっていくはず。

 それって結局、我々がこの「心のベストテン」でやっていることですよね?

大谷 そう! だから、この連載も、LINE MUSIC、Apple Music、AWA、どれかと連動してやるべきだ!

 我々も早くサービス公式のリコメンダーになりたい!

大谷 なりたい!

 (笑)。連絡お待ちしてます。

大谷 実際、『アメトーーク!』でやってることだって同じですからね。好きなものを「好きだ!」って強く語るのが受けている。「キングダム芸人」が放送された回の翌日に『キングダム』がものすごい売れ行きになったりしている。

 すでに僕らはリコメンドの世界に生きている、ということなんですね。

ひな壇芸人がいなくなる

大谷 そして、もう一つ大事なことがあるんです。さっきLINEの生配信番組に25万人集まったって言いましたよね? そういう時代になったことで、エンターテイメント全体が大きく影響を受けているんです。この問題は音楽だけじゃないです。お笑いも変わってきている。

 どういうことですか?

大谷 いまや10代や20代前半の子は、みんなスマートフォンの画面でお笑いを観ているんです。リズム芸が流行っているというのもそれが理由。

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 Vineみたいに、短い時間で感覚的におもしろいものが受ける、という?

大谷 だって、この小さな画面で10分の漫才を観ていたら疲れちゃいますから。70年代に立川談志が「これから先、落語は歌舞伎のように伝統芸能になっていく」と言いましたけれど、漫才もこの先そうなっていくと思います。つまり、劇場で観るものになっていく。

 なるほど。テレビのバラエティ番組の作り方も変わっていくかもしれませんね。

大谷 これはコルクの佐渡島庸平さんが言っていたんですけれど、ひな壇芸人はいなくなるでしょうね。小さな画面でひな壇を観ても、誰がいるかわからないですから。その代わり、一人か二人のトークショーが増えていくと思います。音楽にしてもお笑いにしてもそうですけれど、それに触れるツールが変わっているということに意識的なものがカルチャーとして最前線に立つようになるのは間違いない。

 音楽に触れるツールが変わっていくのも世界的な潮流ですからね。国際レコード産業連盟のフランシス・ムーアというCEOが、今年4月の発表で「音楽は所有するものからアクセスするものになる」と言っている。

世界音楽市場、2014年にデジタルが初めて物理メディア超え 定額制ストリーミングの台頭で - ITmedia エンタープライズ

大谷 うまいこと言うなあ。

 ただ、その一方でアナログレコードの売り上げも伸びているんですよね。アメリカではここ10年で5倍以上になっているし、日本でも前年比30%増。ストリーミングが普及している一方で、所有欲というのもまだまだ健在だったりする。高音質なハイレゾも人気が出てきた。

大谷 ただ、誤解しないでほしいのは、アナログ盤を聴いているのが本当の音楽ファン、ハイレゾで聴いてるのが音楽好きとか、そういうことじゃないんです。そんなナンセンスなことを言いたいわけじゃなく、これからはどっちも共存していくということだと思いますね。

「参加することに意義がある」時代へ

 しかも、音楽はライブという楽しみ方も大きな存在ですからね。「所有からアクセスへ」とは別に、参加して体感するものになっている。

大谷 すこし話が飛びますけど、こないだ僕、明治座のお芝居にいったんです。沢口靖子さんの舞台で、チケットが12000円。1300人の会場が満員でした。お客さんはご年配の方が中心で、みんな着物を着てるんです。お芝居を観て、お弁当を食べて甘いものを食べて、一日楽しんでお土産を買って帰る。これって、実はフェスと同じ過ごし方なんですよね。

 確かに。エンターテインメント自体が、そもそも参加して体感するものだと。

大谷 キングコングの西野(亮廣)くんなんかは、ものすごくそのことに自覚的な男なんですよ。彼は「西野亮廣 独演会」というトークライブをしてるんですが、そのチケットを全部手売りするんです。

 え、手売りですか?

大谷 そうです。日比谷公会堂で2000席を満員にした時も、一人ひとりに会って直接売っていた。その写真もツイッターで公開している。

低好感度芸人・キンコン西野、独演会のチケットを手売り 2週間の売上げ500枚 | ORICON STYLE

 すごい。

大谷 だから、手売りでチケットを買った人にとっては、西野くんに売りこまれた瞬間に彼のライブが始まってるんですよ。だから、ステージに西野くんが登場した瞬間に感動して泣いてる人すらいる。最初に笑いをとるのがものすごく大変だっていう。

 ははははは!

大谷 彼が言うのは「今の時代には"セカンド・アーティスト"みたいな人がいる」ということなんです。

 "セカンド・アーティスト"ですか?

大谷 つまり、今までは演者と客だけだった。でも今は、クラウドファンディングに参加したりSNSで告知に協力したり、半分イベント制作に参加してるような人が増えている。一緒にステージを作り上げて、その達成感を味わうことに喜びを感じる人のことです。

 僕も地方でDJイベントをよくやるんですけれど、特に地方はそういう人が引っ張っているんです。そういう人がいるところには熱があるし、人が集まる。

 なるほど。僕が書いた『初音ミクはなぜ世界を変えたのか?』にも、まさにそういう場面があるんです。ボーカロイドが広まっていく最初期の段階では、曲を作ったりイラストを描いたりするクリエイターだけじゃなく、ニコニコ動画にコメントを打ったりすることで、その場に熱気をもたらす人も大きな役割を果たした。

大谷 所有とかアクセスだけじゃなく、参加することで楽しみ方が大きく変わる。エンターテインメント全体において、そういう存在の人がこれからどんどん増えていくんじゃないかと思いますね。

構成:柴那典

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柴那典(しば とものり)

1976年神奈川県生まれ。ライター、編集者。音楽ジャーナリスト。出版社ロッキング・オンで『ROCKIN'ON JAPAN』『BUZZ』『rockin'on』の編集に携わり、その後独立。雑誌、WEB、モバイルなど各方面にて編集とライティ

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