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日本とは違う!? パリの「ベビーシッター」事情

2015年07月16日 01時11分 JST | 更新 2016年07月13日 18時12分 JST

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こんにちは。パリでセレブとはかけ離れた質素生活を地でいく中村綾花です。今日も靴下に穴があいているけど気にしません。だってパリってそういうところだから!

中村綾花(なかむら あやか)


ラブジャーナリスト、ライター。1980 年福岡県生まれ。県立長崎シーボルト大学(現・長崎県立大学シーボルト校)国際情報学部情報メディア学科卒。2010 年に「世界婚活」プロジェクトを立ち上げ、世界婚活の旅へ。2012 年、世界婚活中に出会ったフランス人と結婚し、現在はパリにてLOVEを調査中。その軌跡をまとめた『世界婚活』(朝日出版社)が好評発売中。日仏カップルや、現地のフランス人・日本人にインタビューをする日々。 パリを案内するプライベートガイド「パリジャンガイド」としても活動中。

twitter:@ayakahan

ウェブ連載:恋愛サイトAMパリ支局「結婚と幸せの方程式」

さて、今回取り上げるテーマは「ベビーシッター」です。

日本では最近、モデルの道端アンジェリカさんが「週に一回は子供をベビーシッターにみてもらいたい」と発言したことが話題を呼んだそうですね。

ネット上で「親としてあり得ない」や「育児なめてる」など批判的な意見も多かったようですが、日本と違ってパリジャンたちはベビーシッターについてどう考えているのか? 今回は近所のママさんたちに、ベビーシッター事情を突撃インタビューしてきました。

私の住まいはパリの20区で、低所得の移民から中流以上の BOBOまで、さまざまな経済状況の家族が暮らす雑多なエリアです。私がむかし東京で住んでいた江戸川区に似ているので妙に落ちつきます。

ベビーシッター利用は週に12時間以上!

まず話を聞いたのは、近所の公園で見つけたクリスティーヌさん(37)。ご自身はマーケティング系の仕事で、旦那さんはマスコミ系。お子さんは、娘さんと息子さんの1人ずつで、なんと週に12時間はベビーシッターを利用するそうです。

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「私と旦那の仕事が19時~20時に終わることがほとんどなので、保育所の迎えと、私たちが帰宅するまでの間の面倒をベビーシッターに頼んでいます。それ以外に、夫や友人らと夕食に出かける時にも お願いしていますが、これは月に1度か2度くらいですね。これ以上ベビーシッターを頼むのは罪悪感があるんですよ」とのこと。

なんと、子供より親のプライベートを優先しがちだと思っていたパリジャンのママにも「子供となるべく一緒にいてあげたい」という本音があることが分かりました。話をうかがったこの日は週末だったのですが、彼女は娘さんと一緒に公園へ遊びにきているところでした。その間、息子さんはお父さんと一緒に映画を観に行っていたそうで、夫婦が子供との時間を大切にしていることがうかがえました。

なお、クリスティーヌさんがベビーシッターに払う費用は一時間 10ユーロ。これはパリでのまっとうな相場価格ですが、週に120ユーロ(約1万5千円)は支払っていることになります。国から補助や免税を受けられるとは言え、安い金額ではありません。

この夫婦の場合、ベビーシッターを雇うのはやむをえないから、という状況ですが、それを雇えるだけの経済力があることも、ご夫婦の職業からもわかります。

ベビーシッターは必要ない!?

次に話を伺ったのは、イザベルさん(40)。動物関連機関に勤務されていて、会計士の旦那さんと、2歳の息子さん一人の3人家族です。

おとなしそうな息子さんを連れて、公園に遊びに来ていたイザベルさんのご意見は......

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「ベビーシッターは必要ないので利用していません。子供が生まれてから仕事のシフトを変えてもらったので、17時までには保育園に迎えに行けますし。 夫と私で交代で面倒を見たり、近くに住む両親にお願いするので、間に合っていますね」

なるほど。パリでもベビーシッターを使ったことがないママさんもいるのですね。「あなたの周りのママさんたちの中で、ベビーシッターを利用する人は多いですか?」と聞いても、「他の家庭のことはあまりよく分からない」という返答。

彼女の場合、出産後の働き方を変えることができたこと、両親が近くにいるという恵まれた環境から、ベビーシッターを利用する必要がないようです。子供が1人だけで、旦那さんの仕事の都合も子供に合わせやすい状況というのも大きい気がします。

先日、あるテレビ番組 を観ていたら、おなじみの出演者の男性がいないことに気づきました。「あれ? 出演者が変わったのかな」と思いきや、パートナーの出産のため産休中とのこと。テレビタレントでも、当たり前のようにパパが産休をとるのです。フランスでは、働く男性でも子育てに参加するのが当然という意識が浸透しているのを実感しました(ちなみに、女性タレントが妊娠中で、お腹が膨らんでいるのにテレビ司会者の仕事を続けている、というのもよく見かけます!)。

ベビーシッターは、親かご近所さんに依頼

最後にご紹介するのはウダさん(31)。地下鉄駅員 で旦那さんは配送業。

図書館の幼児エリアで、元気よく遊んでいる子供たち。その中でぐったり椅子に寄りかかった、お疲れ顔のママがウダさんでした。なんと、その場にいた4人の子供は全て彼女の子供で、お腹にも5人目の子供がいるとのこと! しかし、ベビーシッターはお金がかかるから頼んでいないそうです。

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「夫は朝の仕事で、私は午後からの仕事なので、夫婦でバトンタッチして面倒を見ています。やむを得ないときは近くに住む親や、近所の人に面倒を見てもらいます。夫婦2人の時間? そんなもの、一人になる時間すらないですよ(笑)子供が大きくなった時を待つしかないですね」

周囲との助け合いで、互いにシッターをしているのですね。

ウダさんの最初の出産は、26歳の時。双子もはさんでいるとはいえ、ほぼ休みなしに妊娠している勢いです。つい気になって「どうしてそんなに子供を産むんですか?」と率直な質問をぶつけてみると......。

「私たちの家族はマグレブの出身(モロッコやアルジェリア等、北アフリカの国々)のアラブ系なんです。そうすると、子供はたくさん産むのがあたりまえなんですよ。私の母親なんか14人産んでますし。子供はいつ亡くなるか分からないから、数多くいた方がいいという感覚なのです。 それに、私が死んだ後に残るものって子供だけだと思うんです。お金でも名誉でもなくてね。あなたも早く男みつけて子供産んだ方がいいわよ! 子育てってすごく疲れるから」

......と、アドバイスまでいただいてしまいました(笑)。 我が家の近所は、ウダさんのようなアラブ系移民だけでなく、「アフリカから今来たばっかりですよね?」という風貌と迫力のアフリカ中部、南部と思われる移民もたくさんいます。そんな移民のママは例外なく、5人ほどの子供を連れて歩いているのをよく見ます。ウダさんが言うような民族性の違いもあるでしょうが、フランスでは低所得者&子沢山には補助が手厚くなる傾向があり、それも影響しているのかもしれません。

以上、3人のママに話を聞いてみましたが、もし、私がこのインタビューをパリの高級エリアですれば、ベビーシッターを住み込みで雇っている、という夫婦も珍しくないでしょう。家族の思想や事情によって、ベビーシッターを雇う理由、雇わない理由、パリでは本当にさまざまなのです。

パリは本当に、人それぞれで多様な価値観があります。どちらが良いとか悪いとかも、誰かれ批判することも特にありません。インタビューさせてもらったママさんたちは、周りのママさんと比べてどうこうなんて話、一切していませんでした。道端アンジェリカさんがパリのテレビで同じ発言をしても、今回のような炎上は起きなかったでしょう。

実は私も、ニューヨークやパリでベビーシッターをしていた経験があったので、彼女の発言を聞いて、「え? テレビタレントのセレブなのに週一でいいの?」と感じていました。

パリ在住の日本人にとって「ベビーシッター」は、簡単に始めやすいアルバイトの一つです。というのも、日仏カップルの場合「 子供と日本語で話す人がほしい」という特殊な理由もあり、ベビーシッターを活用している人が多いからです。それだけでなく、道端アンジェリカさんやクリスティーヌさんのように、ときどき夫婦で出かけたいから、という理由で利用している人も少なくありません。

私が子供の面倒を見ている間、親たちは 映画デートや、友人らとの夕食を楽しみます。子供が寝ついた頃に帰宅し、ママさんたちがいつもの疲れた姿とはうってかわって、すっきりした表情で帰宅してくるのを見ると、ベビーシッター冥利につきます。

今回の道端アンジェリカさん発言については、日本のインターネット上でも「海外では......らしいよ」という意見を発信している方もいることに気づきました。冒頭で紹介したような、日本では「子育てはこうあるべき」的ドンヨリとした常識も根強いでしょうが、これからもっと制度も変化し、他人の目を気にしない、家庭ごとのベビーシッターの捉え方、使い方が増えたらいいなと思います。

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