BLOG

結婚できなかった私の話

2015年07月19日 16時17分 JST | 更新 2016年07月16日 18時12分 JST

フランスで国際同性婚を果たし、結婚生活を謳歌している牧村朝子さん。この連載でも奥様とのラブラブっぷりがときどき垣間見えていましたが、今回はあらためて「結婚したときの話」を語ります。雨月メッツェンバウム次郎さんの記事「結婚できない私の話」に対しての返歌とも言える本記事、雨月さんの記事とあわせてお楽しみください。

日曜日。

ふらふら~っとcakesを開いたら、雨月メッツェンバウム次郎さんの記事「結婚できない私の話」が1位になっていました。

牧村朝子(まきむら あさこ)

1987年生まれ。タレント、文筆家。2010年、ミス日本ファイナリスト選出をきっかけに、杉本彩が社長を務める芸能事務所「オフィス彩」に所属。2013年、フランスでの同性婚法制化とともに、かねてより婚約していたフランス人女性と結婚。現在はフランスを拠点に、各種媒体への執筆・出演を続けている。将来の夢は「幸せそうな女の子カップルに"レズビアンって何?"って言われること」。著書『百合のリアル』(星海社新書)、マンガ監修『同居人の美少女がレズビアンだった件』(イースト・プレス)。

Twitter:@makimuuuuuu

ほうほう、と記事を開くと、「結婚したらどうなるか」というご本人の想像が書いてある。

以下、引用します。

毎日家でご飯を食べなきゃならない。ということは仕事を8時くらいには終わらせなきゃならない。子供を作って、子育てだ。お金も稼がなきゃならない。(中略)


そしていつかモノを書く仕事もしたい。でも、平日夜と土日は家族、日中は外科医の仕事をしていたら、そんな時間が取れるわけがない......。(中略)


こんなことを考えていたら、「結婚」という二文字は「ブレーキ」にしか見えなくなっていったんです。

すごい。

何がすごいって、

何をおっしゃっているのか、私には全く分からない!!!!

もしも雨月メッツェンバウム次郎さんのことを私が愛していて、彼に結婚を持ちかけたところこんな答えが返ってきたとしたら、私は間違いなく叫びます。

「どうしてなの次郎!? なぜ『稼がなきゃならない』という責任をあなただけが背負うの次郎!? ふたりでのおうちディナーは『したい』じゃなくて『しなければならない』ものだからだったの次郎!? 私は手間をかけてもらいたいわけでも金をかけてもらいたいわけでもない、ただあなたを愛しているだけなのだということが全然伝わっていなかったのね次郎!? うわあああん次郎ぅおおおおおお!!」

......って。あ、なんかここまで書いただけで涙ぐんできた。拭こう。すいません、失礼しました。

さて。雨月さんの一連の記事については、すでにcakes上で中村綾花さんが「『結婚』は、すべきものでもなく、生き方の選択肢の一つ」「パリのカップルは生活費全て折半が基本」「『結婚さえすれば幸せになれる』と思い込む病」ということを書いていらっしゃいます。けれど、私もなんだか想像で泣いちゃうくらい黙ってられなくなってしまいました。雨月さんへというよりも、自分自身の振り返りのつもりで、書かせていただきます。

「結婚するから幸せなんじゃない、幸せだから結婚するんだ!」ってことを。

これは法律婚でも事実婚でもいっしょです。

相手を養うことによって初めて自分の価値を実感できる人。

相手にペットのようにかわいがられて初めて自分の魅力を実感できる人。

そんなふたりは、たとえ異性だろうと同性だろうと、恋愛ではなくて、共依存とさえ言えると思います。こういうふたりがくっついて、その共依存関係が壊れた時のことを考えると、おそろしく感じます。生きがいを求めて仕事を始めた妻に「俺がさせてやってる生活じゃ不満なのか」みたいなこと思っちゃったり、逆に仕事でコケた夫を支えもせず「あ~あ、次いこ次っ☆」って他に男を作っちゃったりね。そんなんじゃ全然、幸せな結婚にならないと、私は思います。

自分のことくらい自分で幸せにできてこそ、はじめて他人を幸せにできるんじゃないの!

と言ってみましたが、実は私も、今の妻と一緒になりたてはめちゃくちゃみじめでした。

大好きな人と出会えたものの、結婚・渡仏した当時は一気に月収ゼロ、フランス語も分からず一人で買い物すらできない無様な自分だったんですもの。

24歳で彼女と交際を始めた時、私は彼女のことを「ド貧乏だけど心が豊かな子」だと思っていました。彼女が暮らしていたのは、中野区の畳張りのぼろアパート。「床下のインスタントスープを全部ねずみにかじられちゃったよ~。ひとつずつ味見したかったんだね!」と言いながらそのインスタントスープをカセットコンロで温める彼女。めちゃくちゃ貧乏くさいのに、なんだか温かかったんです。まぁそのスープ、私は断固飲みませんでしたけど。

デートも、古民家園で150円の豚汁を買って分け合う......みたいな感じでした。結婚を意識したのは、まさにその時でした。「あっ......虫が煮られて死んじゃったよ」豚汁に入っていた蠅の死骸を、彼女は騒ぐでもクレームつけるでもなく、そっとつまんで外に出してあげたのです。

私は思いました。

「ナウシカかよ!!」

この子となら世界が腐海に飲まれても乗り越えて生きたい、そう思ったんです。

やがて彼女と婚約し、フランスに渡ることになりました。

当時の私はタレントとして2本目のレギュラー番組をいただき、小池みきさんとの書籍企画「百合のリアル」も新人賞を受賞し、まさに仕事の頑張り時でした。

"だからこそ"、私は彼女とフランスに渡ることを選びました。

私にとって仕事とは「世の中に価値を生むこと」。自分自身が本当に価値ある仕事をしているかどうか、東京を離れてこそ試される面があると思ったんです。

......な~んてデカいこと言っても、現実は厳しいもの。当初はフランス語もできずネットすらつながらず、月収ゼロという状況に追い込まれました。

そこで衝撃の事実が発覚します。

なんと、ド貧乏だと思っていた彼女の実家は、バスルームが3つもある豪邸。彼女自身もフランスで見事にキャリアアップし、日・仏・英語を自在に操ってバリバリ稼ぎ始めたのです!

「パリにアパートを手配したよ。私の都合でフランスに来てもらったんだから、フランス語学校に行くお金も出すね」

......そう言う彼女はなんというか、王子でした。ものすごく王子でした。白馬じゃなくてママチャリ乗ってたけど。

後日判明したのですが日本でも稼げていなかったわけではないらしく、ぼろアパートに住んでたのも「畳の部屋が気に入ってたから!」なんだそうです......。

「幸せ自慢かよ」って思うでしょう?

でもね、めちゃくちゃみじめでしたよ、養われるって。

ヘッドハンティング先の会社で期待の新星として輝く彼女が、「ただいま! 今日は何してた?」って私に聞いてくるだけで、もう(マウンティングだわ!!)って思いましたからね。

「何もできるわけないでしょ! ネットもつながらないしフランス語もできないし、あんたのためにせっかくのレギュラー番組も降板よ!!」って叫びたくなってしまう。でもそんなこと言うと余計みじめになるのは分かっていたので、黙々と食べる。食卓が気まずい。最悪でしたよ。

そして、冷めた豚汁を見つめて、気づきました。

「腐海に飲まれても乗り越えるんじゃなかったの?」......。

私はやめました。「できない理由」を探すのを。

在仏日本人に頭を下げてバイトをさせてもらい、「百合のリアル」の原稿を死ぬ気で書きました。不思議なことに、「○○だから私はできない」と言うのをやめたら、色んな方から助けていただけるようになりました。

そのあとです。

フランスでついに同性婚が法制化され、私が妻と法律的に結婚できたのは。

脱獄しよう!

女を養ってこそ男。

男を支えてこそ女。

そんな結婚は平等ではないし、男の人生も女の人生も不自由にすると私は思っています。

男も女もそうでない人も、自分のことくらい自分で幸せにしなくちゃね!

それができる人同士だからこそ結婚は成り立つのであって、「結婚なしじゃ幸せになれない」って言うんじゃ、まさに条件付きの不確かな幸せしか手に入らないじゃない。してもしなくてもいいものになってこそ、結婚は幸せなものになるのよ。

そうして自立して生きるオトナ同盟にとっての行政お便利パッケージである結婚制度が、なぜ異性同士でしか使えないか、しかもなぜ「当然すべきもの」みたいな言い方を未だにされるのかって、それは「女を養ってこそ男/男を支えてこそ女」時代の名残よね。もちろん、女を養う男/男を支える女としての生き方を否定するんじゃないのよ。ただ、それを自覚的に選ぶことと、それ以外の生き方の選択肢が奪われることは全く違うでしょう。私たちは今まで、奪われてきたんです。半人前の存在にさせられてきたんです。

だから「結婚しなくちゃ半人前」みたいなこと言う人は、もう勝手にその牢獄に閉じ込もってればいいのよ。「自己紹介どうも、半人前さん」って話。「自分より学歴も年収も下で、家庭に入ってくれる子がいい......」みたいなこと言う人にだって、空っぽの牢獄にちょうどいいペットちゃんが入ってくれないことを嘆きながら勝手に不幸になってれば? って思うわ。

そんな貧しい考えからはとっとと脱獄して、自分自身の道で幸せを探しましょ。

「ふたり」じゃなくて「ひとりとひとり」。昔よりもずっと自由な時代は、もうはじまっているのよ。

【関連記事】

女同士のリアルを知るうちにあなたの生きづらさもなくなっていく?!

人生を楽しく過ごすための「性」と「知」の冒険ガイド、好評発売中です。

百合のリアル (星海社新書)

百合のリアル (星海社新書

cakesのtwitterアカウント(@cakes_PR)

cakesのfacebookアカウントはこちら