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本当に「フランス人は10着しか服を持たない」のか? パリの女子高生に聞いてみた

2015年07月01日 23時05分 JST | 更新 2016年06月29日 18時12分 JST

「10着しか持ってない」は言いすぎ!?

去年の暮れ、東京を訪問した時に地下鉄である本の広告を目にしました。『フランス人は10着しか服を持たない~パリで学んだ"暮らしの質"を高める秘訣~』というものです。

フランス人は10着しか服を持たない~パリで学んだ

フランス人は10着しか服を持たない~パリで学んだ"暮らしの質"を高める秘訣~

このタイトルを見て私は「うっそーん! またパリの間違ったイメージを信じる日本人が増えてしまう!」と背筋が凍る思いがしました。このタイトルは、まるで全てのフランス人が10着しか服を持っていないと言わんばかり。たしかにパリジャンたちは超節約家で、簡単にモノを買う人たちではありません。とはいえ「10着しか持っていない」......ってのは言い過ぎな気がします。

この本は、フランスに半年間留学したアメリカ人の学生が、パリのホームステイ先で垣間見た「パリジャン家庭の洗練された生活スタイル」を紹介するもの。原著タイトルは『Lessons from Madame Chic: 20 Stylish Secrets I Learned While Living in Paris』なのですが、日本語版では、作中の「ワードローブは10着に」に着目したタイトルになっています。

本をよく読むと実際には本当に服を10着しか持たないのではなく、コートやジャケット、インナーは「10着」に含まなかったり、夏や冬といったシーズンごとでは分けてよかったりという細かいルールがあるのですが、ポイントは「高級な服」に厳選するということ。

そうやって聞くと納得がいくようにも聞こえるのですが、しかし、著者の学生が滞在したのは、どう考えてもフランスの一般家庭ではありません。住宅不足のパリで、空き部屋を貸す余裕があるのは大金持ちのブルジョワ家庭しか考えられないからです。だから彼女の垣間見た生活スタイルとは、日本でいうところの「田園調布のお金持ち日本家庭にホームステイして見えたこと」を語っているようなものでしょう。

この本で取り上げているのが、パリのごく一部のブルジョワ家庭の本当の話だとして、他の一般パリジャンはこの本のタイトルにどんな印象を持つのか? そして実際はどれくらいの服を持ち、どれくらいお金をかけているのか? 気になってきたので、パリジェンヌたちに話を聞いてみることにしました。

パリの女子高生にインタビューしました

出かけたのはパリのオシャレさんがあつまるマレ地区。東京でいう原宿・表参道といったエリアで、パリのBOBOたちに人気のブティックが並んでいます。

マレでショッピングに疲れたら一息つける広場「Place des Vosges」(ヴォ-ジュ広場)の水飲み場で、喉を潤しているマドモワゼル3人を発見。

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随分大人びて見える彼女たち、実際に年齢を聞いたらなんと全員16歳の高校生! 私に興味を抱いているのがすぐに分かるほど、活き活きした目をしてインタビューを引き受けてくれました。

写真左から将来、小児科志望のレティシャさん、パティシエ志望のポーラさん、ジャーナリスト志望のジャンさんです。

「日本でこんな本が流行っていて、パリジャンが本当に10着しか服を持っていないのか調べているところなんです......」と切り出すと、3人全員が口を揃えて「10着よりずっとたくさん持ってるし!」と笑って答えてくれました。「高級な服を10着だけ持つって人は、私たちよりずいぶん上の世代の人のことを言っているんじゃないかな?」「昔の生活スタイルのことじゃない?」という意見も出てきました。

どうも「10着だけ」という話は、彼女たちとはかけ離れたスタイルだということは明らかです。では、パリの高校生は一体どれくらいお小遣いをもらって服を買っているのでしょうか?

レティシャさんは「5ユーロから15ユーロくらいかな」。ほかにも20ユーロくらい(3千円弱)という答えもありましたが、案外少ない金額です。なんなら日本の高校生よりもらってないのでは......?

「そんな金額で洋服買える?」と驚いた私に、少し控えめな性格のポーラさんは「H&Mとかなら安いから買えるかな。あとは古着とか。ZARAはちょっと高いかな」とのこと。

確かに前から若いパリジェンヌたちのファッションは、よく見るとほつれていたり、痛んでいたりしている安物だということは気がついていました。バックなんて皮のバッグを持っている子はおらず、合皮やコットンのエコバック、ナイロンのリュックサックをボロボロになるまで使い倒していることがほとんどです。

一番おしゃべりなジャンさんは「お母さんとこの辺り(マレ地区)に買い物に来たときに、買ってもらうこともありますよ。お母さんが気に入ってくれさえすれば、ちょっと高くでも買ってもらえるし」と回答。

レティシャさんは「例えば親にコートなんかを買ってもらったらその分、数ヶ月間お小遣いはなしで、そのコートも何年も着るという感じです」とのこと。

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マレ地区のファッションブティックにはオシャレに興味のある若い観光客も多い

3人とも手足がスラリと長く、何を着てもオシャレに見えてしまう花のパリジェンヌたちですが 、その雰囲気とは反して地味な高校生のファッション事情が見えてきました。実際は安い服を着ているとはいえ、それぞれのキャラクターを現すスタイルがあることも分かります。

「洋服を選ぶときはどんなことを大切にしているの?」

ポーラさんは「たとえジャンや、レティシャが素敵な服を着ていたって、私に似合わなければ私のスタイルじゃないんです。自分らしい服を選ぶのがポイントですね」とのこと。

「自分に似合うスタイルって簡単に言うけれども、難しくない? どうやってそのスタイルを見つけるの?」と聞いてみると、ファッションの広告を見たり、ショーウィンドーを見たり、他の人のファッションを見たり......と、日々それぞれに研究しているとのこと。

フランスでは、よっぽど特殊な学校でないかぎり制服がある学校はありません。子供のころから私服で毎日登校することで、自分のスタイルを早くから意識&習得するのでしょう。

パリで生活して身についたこと

今回話を聞いて分かったのは、女子高生たちは10 着以上たくさんの服を持っているけれど、「限られた予算の中で、自分に似合うもの」を買う訓練をしていることです。

私の場合、制服を着なくなった大学時代にようやく「自分に似合う洋服ってなんだろう?」と悩み、色んなスタイルを試しては失敗していた記憶があります。

ただし、パリで生活をするようになってから倹約生活がスタートしたので、洋服を選ぶにしても「限られたお金で、絶対の絶対に欲しいものしか買わない」という習慣も身につきました。まさに今回話を聞いた女子高生らと同じスタイルです。一見惨めな消費生活なのですが不思議と満たされた気分になることが分かってきました。

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「他人がどうこうでなく、自分の軸をもって、自分に似合うものだけを買う」こと、そして「お金を使わない」ということが心地よいのです。東京に住んでいた時には考えられなかったことです。

例の人気本「フランス人は10着しか服を持たない~パリで学んだ"暮らしの質"を高める秘訣~」のタイトル中にもある「暮らしの質」というのは、このことを指すのだと思います。

モノをたくさん買わなくても満たされる。この点については、ブルジョワ家庭だけでなく、 一般パリジャン、貧乏パリジャンの生活の中にも染み込んでいる哲学です。この本が日本で人気なのは「いい加減、モノばっかり買っても満たされない生活に疲れた」という人が、たくさんいるからでしょう。

ファッション雑誌では明かされない、意外なパリジェンヌたちのファッション事情、今後も探ってみたいと思います。お楽しみに!

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中村綾花(なかむら あやか)


ラブジャーナリスト、ライター。1980 年福岡県生まれ。県立長崎シーボルト大学(現・長崎県立大学シーボルト校)国際情報学部情報メディア学科卒。2010 年に「世界婚活」プロジェクトを立ち上げ、世界婚活の旅へ。2012 年、世界婚活中に出会ったフランス人と結婚し、現在はパリにてLOVEを調査中。その軌跡をまとめた『世界婚活』(朝日出版社)が好評発売中。日仏カップルや、現地のフランス人・日本人にインタビューをする日々。 パリを案内するプライベートガイド「パリジャンガイド」としても活動中。

twitter:@ayakahan

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