BLOG

あなたは誰に似てる? セーラー戦士別性格診断

2015年07月06日 01時14分 JST | 更新 2016年07月02日 18時12分 JST

90年代に大人気だった『美少女戦士セーラームーン』。作品内ではさまざまなセーラー戦士が出てきますが、そのそれぞれに強い特徴があります。小さいころ好きだったセーラー戦士と今、好きなセーラー戦士を比べることで、自分のパーソナリティの変遷が見えてくるかも?
(初回はこちら

2015-07-03-1435910696-6172688-e7dd9affd3472d240412b05614600400eba439d8

肩身の狭い思いをしているゆとり世代

ところで、「仕事中(戦闘中)も自分らしさ(オンナノコ性)を捨てない」「自己実現を優先」は、いわゆる「ゆとり世代」の特徴とも近い。たしかに、本連載で設定しているセーラームーン世代(1982〜92年生まれ)の下半分は、一般に定義される「ゆとり世代」(1987〜96年生まれ)とかぶっている。

「ゆとり世代」は特に職場において、年長世代からの激しいバッシングに遭っているが、以前の回でも触れたように、能書きだけでなく「結果」を出すのがセーラーチームだ。オンナノコ性を捨てない戦闘でも必ず敵に勝利し、自己実現を大切にしながら、ミッションもきっちりこなす。セーラームーン世代の前半はゆとり世代かもしれないが、必ずしもゆとり世代の短所を体現しているとは言えない。

セーラーチームの夢への向きあい方

むしろ「ゆとり世代」的なるものをレイが糾弾する話もある。第152話「炎の情熱! マーズ怒りの超必殺技」だ。

レイは将来の夢の1つが「キャリアウーマン」なだけあって、セーラーチームの5人の中ではもっとも仕事観に一家言あるが、巫女に憧れてレイの家である火川神社にやってきた少女のことを、「夢がないからって神社に逃げ込んでるだけ」と手厳しく評する。この少女は「本当はレイと同じでキャリアウーマンになりたいが、どうせ無理」と最初から諦めていた。レイのファンとして彼女の近くにい続けてレイのコピーを演じることで、偽りの自己実現を果たそうとする、やけにリアルな病理の持ち主。むしろこちらの少女が「ゆとり世代のダメなところ」の体現者に近い。

第114話「アイドル大好き! 悩めるミメット」では美奈子の仕事観がよく出ている。美奈子の夢は芸能界でスポットライトを浴びること。人気男性アイドルと映画で共演できる公開オーディションに応募し、最終選考まで歩を進めたにもかかわらず、所属組織の目的(人類を守ること)を優先させて、自らの個人的な夢を一時凍結するのだ。ここにおいて、美奈子は自己実現を諦めているわけではない。ことの優先度を熟慮したのである。

「本当の自分探し」はゆとり世代の特徴であり、他世代からの格好の嘲笑材料ではある。だが、優先すべきものを優先しつつも、自己実現を諦めないでそっと胸にしのばせるのは、いわば「エリートゆとり世代」とでも呼ぶべきセーラームーン世代の長所として、十分カウントできそうだ。

セーラーチームの役割分担

セーラーチームは全員が主役である。フィニッシュを決めるのはいつもセーラームーンだが、それはサッカーで言えばセーラームーンがシュートを決める役割だからだ。他のメンバーは彼女がシュートを打てるよう、それぞれのポジションでそれぞれの役割をきっちり果たしている。

セーラーチームに主従関係やヒエラルキー構造はない。得意技と役割分担があるだけだ。誰が欠けてもミッションは遂行できない(大ボスとの決戦では特にそれが顕著であり、場合によってはセーラームーン以外のセーラー戦士が人柱になって、セーラームーンに"シュート"を打たせる場面さえある)。うさぎは一応リーダーだが、指示系統があるわけではないのだ。

第68話「ちびうさを守れ! 10戦士の大激戦」では、セーラームーン以外のセーラーチームの4人が、あやかしの四姉妹のそれぞれと4対4で戦っており、その間セーラームーンはちびうさをただ守っていた。セーラームーンが1人だけ戦闘に参加しないことについて、もちろん誰からも不満は出ない。「役割分担」を全員が納得しているからだ。

同調を強く求められるローティーン女子の人間関係

一般的にローティーンの女子にとって、「親友」の定義は、「趣味や趣向が同じ、気が合う同士」である。「好きなものが似ている、考え方が似ている」から湧き出る仲間意識、同族意識こそが連帯を生む。たとえば、数年前よりある、女子の親友同士がペアルックをまとう「ニコイチ」はその象徴だ。

ゆえに、そのような幼い友情関係においては、「グループの誰かにだけ彼氏ができた」「グループの誰かだけ別のテイストのファッションをしている」は、友情の解消あるいは粛清行動に結びつきやすい。

対して、セーラーチームのパーソナリティはバラバラだ。ファッションだけでなく、偏差値も、恋愛観も、趣味も趣向もほぼかぶっていない。にもかかわらず、ここには確固たる友情がある。女子特有の同調圧力、多数意見によるファシズムとは無縁の友情を確立しているのが、セーラーチームなのだ。

個人が尊重されるセーラーチーム

セーラームーン世代に「好きなセーラー戦士」を聞くと、返ってくる答えはさまざまだ。自己投影したいセーラー戦士とは、女子としてこうありたい、このポジションだったら好ましいと思える、理想の自分の姿である。

つまり、セーラームーン世代に「セーラーチームの中で好きだったキャラクター」を聞けば、幼少期に「こうありたかった自分」のアウトラインを推量できるし、かつてと今とで好きなセーラー戦士が異なる場合、その差分によって自分の精神的成長やパーソナリティの変遷をマッピングできる。

◎水野亜美=セーラーマーキュリー

セーラーマーキュリー(水野亜美)のキャラ設定は「天才少女」だが、視聴者が彼女のポジションに憧れる心理とは、友人グループのなかでもどこか冷静な自分でいたい、チームに所属しつつもリーダーではない、特別なポジションで自分をキープしておきたいといった気分だ。ただし孤高ではあっても、孤立の惨めさは味わいたくない。その孤立感の解消にセーラーチームへの所属はうってつけである。

◎火野レイ=セーラーマーズ

セーラーマーズ(火野レイ)好きは、自己顕示欲の強い文化系女子の傾向がある。彼女のキャラ設定は「気の強い霊感少女」だが、若干"腐"の入ったアニメや宝塚的なコンテンツを愛好していたり、文化祭でセルフプロデュースしてステージアイドルのパフォーマンスをしたりと、活動的な文化系女子のお手本を体現している。

彼女が現代にいたら、きっと顔出しの人気ブロガーとしてネット上で名を馳せ、ニコニコ動画に「踊ってみた」動画を頻繁に投稿していただろう。レイはセーラーチームの中で唯一、中高一貫の私立に通っており、ブランド力もある。しかも容姿は「ハイヒール・黒髪ロング」と、同性からカッコいいと言われる方向性なので、顔出しのパフォーマンスに向いていそうだ。

また、レイは主役のうさぎと一番の親友である。すなわちレイ好きは、自分が有力者ではなく、有力者ともっとも近いという絶妙の立ち位置を好む。これも、ソーシャルグラフに気を配りつつSNSを使いこなす人気ブロガーに近い性向ではないだろうか。

◎木野まこと=セーラージュピター

セーラージュピター(木野まこと)は怪力少女だが、女の子らしくて料理が得意という設定だ。基本的に彼女のファンは男性に多いが、女性で彼女が好きだという心理には、パブリックイメージと自我とのギャップに悩んでいることに根を持つ、まことへのシンパシーが多分に混ざっていそうである。体格や容貌といった外見的特徴、ちょっとした言動だけで自分のキャラを決めつけられてしまったことに対する諦めや悲しみ。それらを内包している女児ほど、「私は◯◯って言われてるけど、本当は△△なんだ!」という想いで、まことに気持ちを寄せている。

◎愛野美奈子=セーラーヴィーナス

セーラーヴィーナス(愛野美奈子)は活動的で華やか、黄色くゴージャスなロングヘアー、スポーツが得意と、うさぎを除く4人の中ではもっともセンター感がある。判で押したようなおっちょこちょいぶりは、うさぎとキャラがかぶっているとも言えるが、もともとは『コードネームはセーラーV』(原作 武内直子)という別の作品の主人公だったのだから、いたし方ない。つまり『美少女戦士セーラームーン』における美奈子の立ち位置は「裏ヒロイン」である。

だからヴィーナス好きの心理とは、女児時代のごっこ遊びにおいて「主人公のセーラームーンが私」と宣言できない女児が、主人公ではないが主人公的なる「裏ヒロイン」を自分のフェイバリットと設定することで胸を撫で下ろすという、実にデリケートで複雑なものである。

マーキュリーやマーズやジュピターほど、特徴的なキャラクターに自己同一化するような思い切りはない。かといって自分はヒロインとしてふるまえない(ふるまう力量はないと感じている)。そんな苦しい気分を引き受けてくれるのが、うさぎ以外の4人の中でリーダー格という、ある程度の"地位"が与えられていて、かつ自尊心も満たされるヴィーナスというわけだ。

2015-07-03-1435896475-9612342-picture_pc_8a808627fc4b89f43b22dadbb60c959998319f6c.jpeg

なお、外部太陽系3戦士(セーラーウラヌス、セーラーネプチューン、セーラープルート)、およびセーラーサターンについては、セーラーチームほどの内面描写がないこと、セーラーチームとは立ち位置が異なる第三勢力的な意味合いが強いので、女児が自己投影するには適さないと判断し、言及しない。

◎月野うさぎ=セーラームーン

となると、最後に残るのは当然セーラームーン(月野うさぎ)だが、「好きなセーラー戦士はセーラームーン」という回答は、キャラクターパーソナリティのレベルでは分析のしようもない。

なぜなら、そもそも『美少女戦士セーラームーン』が好きなセーラームーン世代は、いちいち言うまでもなく、月野うさぎが好きだからだ。言い換えるなら、「好きなセーラー戦士」がマーキュリーだろうとマーズだろうと、それは「セーラームーン(月野うさぎ)が好きという前提で」という注釈つきであることを理解されたい。

たとえて言うなら、ラーメン屋に来ている客に「どのラーメンが好きですか?」と聞く際、大前提として客は「ラーメンという食べ物が好き」であるのと同じなのだ。

ということで、次回はあまねくすべてのセーラームーン世代が愛好するロールモデルであり、作品世界観の象徴たる月野うさぎについて、じっくり掘り下げてみよう。

大好評の本連載が、書籍となって絶賛発売中! *電子書籍も発売中!*

セーラームーン世代の社会論
セーラームーン世代の社会論(書籍版)

セーラームーン世代の社会論(Kindle版)

早くも話題沸騰中! 本連載で語り尽くしている、セーラームーン世代の仕事観、恋愛観、将来の自分との向きあい方......以外にも、「エンディングテーマ」の分析や、チュートリアルの章が贅沢についています! 読み応えたっぷりの1冊!

お買い求めは、各ネット書店、お近くの書店にて。

【関連記事】

  • 「あやかしの四姉妹」は最強の反面教師だった
  • 『セーラームーン』前夜――赤名リカと森高千里
  • 悪役の職場に、陰湿な女性関係アリ?

  • cakesのtwitterアカウント(@cakes_PR)

    cakesのfacebookアカウントはこちら

    稲田豊史(いなだ とよし)

    編集者・ライター。キネマ旬報社でDVD業界誌編集長、書籍編集者を経て2013年にフリーランスとなる。『ヤンキー経済 消費の主役・新保守層の正体』(原田曜平・著)構成、評論誌『PLANETS』『あまちゃんメモリーズ』共同編集、『ヤンキーマンガガイドブック』企画・編集。出版社時代の編集担当書籍は、『団地団〜ベランダから見渡す映画論〜』(大山顕、佐藤大、速水健朗・著)、『成熟という檻「魔法少女まどか☆マギカ」論』(山川賢一・著)、『全方位型お笑いマガジン「コメ旬」』ほか。「サイゾー」「アニメビジエンス」ほかで執筆中。映画、藤子・F・不二雄、90年代文化、女子論が得意。

    サイトhttp://inadatoyoshi.com