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「サードウェーブ系男子」は何を味わっているのか?

2015年07月05日 00時57分 JST | 更新 2016年07月02日 18時12分 JST

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日本ではアメリカのコーヒーショップが話題だけど......


東京では「ブルーボトルコーヒー」というアメリカから来たコーヒーが話題を呼んでいるようですね。

行列ができるほどの人気という話を聞いて私は 「なんでアメリカのコーヒーがそんなに人気なの?」という違和感を感じました。

というのもヨーロッパ方面では、アメリカのコーヒーは「靴下のしぼり汁」と揶揄されるほどゲロまずなことで有名だからです。

実際、私も10年ほど前にアメリカでコーヒーを飲んで、そのまずさに絶句した覚えがあります。元々コーヒー嫌いな私ですが、NYでよくあるコーヒーは黒くて苦いお湯にしか感じられず、まさに「靴下のしぼり汁」味。ますますコーヒーが嫌いになりました。

イタリア人の友人はアメリカのまずいコーヒーを飲むことを拒否し、毎朝自分で淹れたエスプレッソコーヒーボトルを持ち歩いていたほどです。

まあ、今住んでいるパリのコーヒーも別においしいわけではありません。これにはどうやら、パリのカフェへのコーヒー豆の卸しを単一の業者が牛耳っていって、そこの豆がまずいからのよう......。

美味しいコーヒーとの出会いは、まさかの空港で?


そんなコーヒー嫌いの私が、人生33年目にして本当においしいコーヒーと出会い、コーヒー好きになる奇跡が起きました。

イタリアからパリへ帰る格安飛行機を待っている時のことです。空港のロビーにあるカフェカウンターから、挽きたてコーヒーの香りがただよっていました。その香りにつられてついコーヒーを注文してしまったのです。


香りから味から全てが違うイタリアのコーヒー

すると......コーヒー・ルンバよろしく、心うきうき〜とっても不思議このムード〜たちまち私はイタリア男に恋をした〜♪ というのはおおげさですが、足元が浮いて小おどりしそうな気分になるほどおいしかったのです。

あまりのおいしさに「なんでイタリア滞在中にもっと飲んでおかなかったんだ!」と激しく後悔しながらパリ行きの飛行機に乗ったのを覚えています。

だからそれくらいおいしいイタリアのコーヒー屋が日本に上陸し、行列を作るほど人気というのなら納得できるんです。でも今話題になっているのはアメリカのコーヒー。10年前に比べたらおいしくなってきているという話ですが......。本当かなぁ。

サードウェーブ系男子とヒップスター、BOBOの違いとは?


その人気の理由は、味というよりもそのスタイルにあるということをcakesの「サードウェーブ系男子」についての記事で知りました。

とくに彼らのファッションの特徴として挙げられていたのは、ヒゲ+メガネ+自転車(高級)というもの。これはまさに本場のブルーボトルコーヒーを飲んでいるアメリカの「ヒップスター」や、パリにいる自然派指向のお洒落ピープル「BOBO」と同じです。つまり、東京にいまヒップスターやBOBOが輸入されているということですね。

BOBOとヒップスターのファッション・スタイルを紹介するイラスト

http://graduatesinwonderland.com/what-is-a-bobo/

そしてサードウェーブ系男子を筆頭に、心が満たされないこれまでの生活に気がついている人たちが望むのは「上質な暮らし」という新しいライフスタイルのようです。

ただ、私は、この「上質な」という言葉がとても日本的だなと思ってしまいました。

「上質」という言葉は「質がよいもの」、「高級なもの」を表すわけで、結局は誰が見ても「良い」と思える価値のことです。いくら「心が満たされるための新しいライフスタイル!」と言ってみても、 これまで通り「他人と同じ価値観を持つことに安心しきっている日本人」と変わらないのでは......と感じたのです。スターバックスより高いブルーボトルコーヒーに行列ができているというのがその証拠です。

ヒップスターやBOBOの思想は、決して他人にも認められる「良さ」を志向するものではありません。本当の「上質な暮らし」「心が満たされる」というのは、他人や世間の価値基準で「良い」とされるものをコピーするのではなくて、自分の価値基準で「良い」と言えることです。高級なものでなく安物であっても自分が気に入っていればいいのです。

だからサードウェーブ系男子たちが、BOBOやヒップスターらのファッションやライフスタイルを外面だけコピーしても、本人が「良い」と思ってなければそのうち飽きるし、また「心が満たされない」気持ちに逆戻りしてしまうでしょう。

「なーんだ、サードウェーブ系男子って、ただのファッションの流行だったのね」ってことになりかねません。

本当に心が満たされるライフスタイルを得たいならば、「上質」というものを求めるのではなく、とことん「自分が本当に欲しいもの」について考え抜いてみることです。つい他人と比べてしまう私たちにはそれがなかなか難しいことですが......。

もっとも私だって東京に住んでいた頃は、何を買っても心が満たされることがありませんでした。 それがなぜなのかもわかりませんでした。 そして、30歳手前で「心が満たされないのは『結婚できていない』から」だと思い込んでしまいました。

そうして苦しみのあまり世界で婚活までした結果、 パリのセーヌ川にかかる橋の上で「私の心を満たしてくれるのは『結婚』ではなくて 、『愛』だ!」ということに気がついたのです。

それ以来「愛」以外のものはどうでもよくなりました。だから、失業者のパリジャンと同棲を始めたとき、人生最高の幸せを感じることができました。そして、お金がない貧乏生活でものが買えない状況なのに心が満たされたのです。

もちろん、本当に欲しいものは人によってそれぞれで、愛である必要はありません。しかし、他人の外面を真似してもそれが本当に自分にとって「良い」もの、「本当に欲しいもの」でなければ、ただお金と時間の無駄遣いでいつまでたっても心が満たされることはありません。

だから、ブルーボトルコーヒーに行列を作るサードウェーブ系男子に聞いてみたいのです。「あなたは本当にそのコーヒーをおいしいと思って飲んでいますか? それとも、他の人がおいしいと言っているから飲んでいるのですか?」と。


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中村綾花(なかむら あやか)


ラブジャーナリスト、ライター。1980 年福岡県生まれ。県立長崎シーボルト大学(現・長崎県立大学シーボルト校)国際情報学部情報メディア学科卒。2010 年に「世界婚活」プロジェクトを立ち上げ、世界婚活の旅へ。2012 年、世界婚活中に出会ったフランス人と結婚し、現在はパリにてLOVEを調査中。その軌跡をまとめた『世界婚活』(朝日出版社)が好評発売中。日仏カップルや、現地のフランス人・日本人にインタビューをする日々。 パリを案内するプライベートガイド「パリジャンガイド」としても活動中。

twitter:@ayakahan

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