枠を超えたキャリアを歩んで分かったこと。Fablic竹渓 潤「20代で不安を感じたら...」

2014年06月22日 22時15分 JST | 更新 2015年09月04日 21時34分 JST
エンジャパン

100万DLを突破した日本初のCtoCアプリ「Fril」を手掛けるFablic社・創業メンバーの竹渓 潤氏へインタビュー。若くして、デザイナーの枠におさまらないキャリアを歩む彼と共に、デザイナーのキャリアの可能性を紐解いていく。

■ WEBデザイナーのキャリアの広がりって?

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「僕、もうすぐ30歳になるんですけど、自分自身のキャリアについて、特に20代はめちゃくちゃ悩みましたね。社内にとどまらずに外を見るだけで、選択肢を増やすことができると思うんですけど――」

そう話してくれたのが、日本初のCtoCフリマアプリ「Fril」を手掛けるFablicの取締役 兼 デザイナーを務める竹渓(たけたに)潤氏だ。

彼の経歴を簡単にご紹介しよう。竹渓さんは、20代という貴重な時期に様々な経験を積んできたという。新卒でECナビ(現:VOYAGE GROUP)にWEBデザイナーとして入社後、ライブドア(現:LINE)に転職。WEBディレクターとして、数々の新規事業立ち上げに携わった後、Fablicを共同創業した人物だ。

そんな彼に、自身の20代を振り返っていただきながら、「若手デザイナーにとってのキャリアの広がり」というテーマを共に考えてみた。注目を集めるスタートアップのキーパーソンが語る、WEBデザイナーとして生きる20代の読者へのメッセージとは?

■ 環境が“デザインに専念すること”を許さなかった。

― 竹渓さんのキャリアって、一般的なデザイナーが歩むキャリアの枠におさまってませんよね。

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Fablic 取締役・デザイナー 竹渓潤さん

そうですね。従来のデザイナーが歩むキャリアとは異なるかもしれません。

そもそも、新卒入社したECナビがことの始まりですかね。入社直後に配属されたチームがすごくスモールだったので、デザインだけでなく、キャンペーン企画やユーザーからのお問合せ対応まで担当していました。それはもう大忙しで、デザインだけに専念できる環境ではありませんでしたね。

そういえば社会人初仕事は営業でした(笑)。「デザイナーとして入社したのに、デザインができなくて嫌」とかそういう感情ではなく、「自分にできることをやろう」とひたすらに頑張っていた気がします。

― ご自身の志向として「デザインだけをやりたい」、「制作に専念したい」という思いはなかったんでしょうか?

もちろん最初は、デザインに専念して自分のコアなスキルというのを高めていったほうが、デザイナーとしての価値が高まっていくんじゃないかと思っていました。でも、デザインという側面からでなく、営業やユーザーサポート、企画など、様々な役回りで携わったWEBサービスが世の中から評価され、ユーザーが拡大していく醍醐味を味わってからは、“WEBサービスを創り出す”という面白さの方が上回りましたね。

今となっては、「ものすごくラッキーだったな」と思います。組織がスモールなため、やらなきゃいけないことはたくさんありましたが、その分裁量を与えてもらえましたし。何よりも、自分で企画したものを自分でデザインして、ユーザーからの生の声を自分で受けとって反映して…なんて経験、なかなかできるものではありませんからね。そのおかげで、デザイナーとして事業の成長にコミットする力が身についたかなと思っています。

■ 自分のスキルアップ or 事業コミット。どちらにフォーカスを当てるか?

― ライブドアに転職されてからはWEBディレクターとして数々の新規事業立ち上げを実現されたと伺っています。転職を決意するにあたって何か実現したいサービスをお考えになっていたんですか?

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はい、考えていましたね。その構想を当時ライブドアで働いていた知人に話したら「一緒にやろうよ」と声をかけてくれて。また、ディレクターとしての経験を積んでみたいと思い転職することにしたんです。

当初考えていたサービスはマーケットが小さすぎて利益を立てられないと見込まれ、お蔵入りになったんですが…。こんな風に“事業として成立するのか”というシビアな観点からサービスを考えられたのは良い経験になりました。

― ライブドアの中で新規事業を立ち上げる時のハードルとかって設けられているんですか?

具体的には言えませんが、ハードルはあります。当時『LINE』がヒットして、新規事業のハードルがグッと高くなっていたという背景もありつつ…(笑)。

もちろん、WEBサービスの作り手として自分の思い描いたサービスを形にして社会を変革していくのは1つの醍醐味です。しかし、そのサービスによって実現できるビジョンは開発者である私たちだけがいいと思うのではなくて、より多くの人と共有できるようなものでなければならないので、ハードルは設けて当然ですね。つまり、“あったらいいな”はなくていいということかなと。

― なるほど。新規事業立ち上げはそう簡単には成功させられないと実感したワケですね。チーム体制でいうと、ECナビではすごくスモールなチームにいらっしゃったということでしたが、ライブドアではいかがだったんですか?

ライブドアでもチームそのものはスモールでしたね。ただ、組織のタイプはECナビとライブドアでは異なっていました。

ECナビのときはWEBディレクター・WEBデザイナー・営業・ユーザーサポートなど、様々な職種の人たちを1つのチームにまとめている事業部制の組織だったんですが、ライブドアの場合はディレクターはディレクターだけの組織に在籍し、デザイナーはデザイナーだけの組織に在籍するといった機能別組織。プロジェクトごとに各職種の人をアサインしていくような感じでした。

機能別組織と事業部制の組織のどちらも経験して思うのは、ライブドアのような機能別組織は「自分のスキルを高める」というような職業・職種にフォーカスする傾向にあって、ECナビのような事業部制のチームは、より事業にフォーカスしている傾向にあるなと思います。

入社する前に組織がどちらのタイプかということは意識できないかも知れませんが、入った組織によってその後の成長のポイントや方向性は異なると思いますね。

■ 30代を目前に控えた今、WEBデザイナーの新しいロールモデルに。

― 2012年の冬、ライブドアを退職されて、ECナビ時代の同僚とFablicを創業されたということなんですが、創業メンバー兼デザイナーとしてプロダクトを運営するってまだまだ少ないケースなんじゃないかと思います。起業された中での気づきや学びはありましたか?

率直に、「一から十までやれる」創業期ってすごい楽しいなって感じましたね。

ある程度規模の大きな会社にいると、会社独自のフレームワークみたいなのがあって、「その中でどう組み合わせていくか」を考えると思うんですけど、スタートアップでサービスの立ち上げをやると、「どんなキャラクターのサービスにする?」「どんな方向性にする?」というフェーズから考えることができるので、裁量権がありますよね。

そうして、自分がイチから考えて生み出したサービスって、我が子のように強い思い入れを持って育てることができるので、面白いなと思います。

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一般的には、広告系のデザインの方がクリエイティブなイメージがありますが、WEBサービスのデザインの方がよりクリエイティブだし、エキサイティングだと思います。WEBサービスは、単に作品の中でオモシロイ表現をすることにとどまらず、“世の中を変えていく”という面白みを感じることができる。それが自社サービスであれば、リリースしたサービスに対するフィードバックを受け、改善していくプロセスを経て、本当にいいデザインを突き詰めていくことができます。だから、広告やるよりWEBサービスが良いし、受託でやるより自社サービスが良い。そう思ってます。

― デザイナーとしてキャリアを考えるうえで参考になる一つの考え方ですね。

キャリアの方向性を決めたり、職場を選ぶうえで参考にしていただければ。私はもうすぐ30代の仲間入りをするんですが(笑)、私がデザイナーになった2007年当時なんかは、デザイナーとしてキャリアのロールモデルとなるような方には出会えなかったですね。

「社外のデザイナーはどんな仕事を経験しているのか」「どんなキャリアを歩もうとしているのか」などが知りたくて、社外の勉強会にも積極的に足を運んでいたんですけど、当時そういった勉強会の数も少なく、あっても参加していた方はほとんどが受託の方でした。

「世の中のインハウスデザイナーはどこにいるんだろう」と疑問に感じていましたね。ディレクターやエンジニアには社外の方と交流できるコミュニティがあるのに、デザイナーだけ存在感がないと。

それから、積極的にデザイナー交流会実施の呼びかけを行ない、自ら主宰したこともあります。最近ですと、インハウスデザイナーの交流会「Designers Meetup」を開催しました。やはり、組織の中で閉ざされていて見えない部分がシェアされる場って、たくさんのヒントが得られると思います。

― たしかに、ローキャリアのデザイナーや学生さんなんかは「キャリアが見えない…」と不安に思ったり、「自分のキャリアの選択肢ってどんなものがあるんだろう?」と悩んだりするでしょうね。

そうですね。特に20代前半って色々不安を感じる頃だと思うんですよ。そんな時は、もっと外を見るべき。横のつながりからヒントを得られることって本当に多いんですよ。

それに今は、私自身がロールモデルとして、デザイナーのキャリアの方向性を示せるような存在になりたいと思っています。私がデザイナーになった時は、「デザインという枠から外れることなく、ずっと手を動かし続ける」そんなキャリアがスタンダードだったし、自分もそんなキャリアを歩むのかなと想定していましたから。

だからこそ、デザイナーの枠を超えて、新規事業を立ち上げたり、会社を立ち上げたりした自分がロールモデルとなり、後輩たちに「こんなキャリアがあるんだよ」ということを示したい。「デザイナーが会社のスタートアップに携わって、事業を成功に導いていく」。そういったストーリーを体現していきたいなと思っています。

そのためにもFablicでFrilを必ず成功させなければいけませんね(笑)。僕たちと一緒によりよいサービスを創る方を、ただいま絶賛募集中ですので、ご興味あれば是非コンタクトください!

― 自らがロールモデルに…。デザインという枠を超えて様々な経験を積まれた竹渓さんだからこそのお話ですね。これからデザイナーとしてキャリアを形成していく20代にとっても新たな気付きが与えられる貴重なお話しだったと思います。竹渓さん、本日はありがとうございました!

[取材] 松尾彰大 [文] 磯田優里亜

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