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高校を出て7つの職につき、28歳で慶応大生。型破りのキャリアを選んだ女性の生き方とは

「この先の時代を生きる人たちが楽しくやってほしい」

『Forbes』WEB版の立ち上げ&アシスタントを経て、Impact Hub Tokyoで働く上田藍さん。じつは「28歳の現役大学生」「NPOプロボノ」と複数の顔を持つ。異色のキャリアを歩む彼女。その型破りな生き方から見えてきたのは、肩書きに頼らず、活躍の場を広げるヒントだった。

肩書きを脱ぎ捨てる! 次世代パラレルワーカー 上田藍

高校を卒業したら、とりあえず進学。そこから就職を考える。

まだまだこういった価値観も根強くあるなか「自らの手でキャリアを切り拓く」という道を突っ走ってきた女性がいる。それがコミュニティ『Impact Hub Tokyo』イベントマネージャーとして働く上田藍さん(28)だ。

一見すると無計画で破天荒にも見える彼女のキャリア。

とてもユニークなのは「肩書き」や「職種」、「どの会社で働くか」にこだわりがなく、「心からコミットしたい!」と思えるフィールドにガンガン飛び込んできたこと。

(アパレル勤務、通訳、フリーペーパー編集、出版社、NPOプロボノ、コミュニティスペース運営、イベント運営のコンサルティング...と、これまで複数の仕事・プロジェクトを掛け持ち。渡り歩いてきた)

さらに驚くことに、パラレルな活躍を続けながら、28歳で慶應義塾大学に合格。現在も大学に通い「建築」を専攻する。まさに変わり者だ。

彼女はなぜ、こういった道を選んできたのだろう。肩書き・職種を越境し、活躍するゼネラリストが求められる時代。彼女の生き方、そして仕事観は、新しい時代をサバイブしていくヒントになるのではないか。こう考えたCAREER HACK編集部は、上田藍さんを直撃した。

上田藍 Ai Ueda

2006年に高校を卒業後、外資系アパレル企業にて勤務。その後、通商通訳やフリーペーパーの編集を経て、28歳で慶應義塾大学に進学。学生生活と並行して出版社でもアルバイトとして勤務。在籍中に『Forbes』Web版の立ち上げにアシスタントとして参画。現在、Impact Hub Tokyoのイベントマネージャー、NPOプロボノ、イベントアテンドのコンサルティングの仕事を掛け持ちする。大学生活と並行しながらパラレルワーカーとして活躍中。

「みんなと同じ」への違和感。周りにあわせるのが辛かった学生時代

― 失礼ながら、さまざまな職種で経験を積んだ後、28歳で大学に行くというのは、正直変わってますよね。

私も自分が何者なのか、時々わからなくなります(笑)

ただ、幼い頃からずっとあったのは「みんなが当たり前だと思っていることって本当なんだろうか」ということ。たとえば、幼稚園の先生が「みんなで集まってお遊戯をしましょう」と言ったりしますよね。「なんで私もやらなきゃいけないんだろう?」と思っていて。

― 大人からするとけっこう扱いづらい子どもだった?

そうかもしれません(笑)ただ、「みんなと同じでなければいけない」ということが、どうしても理解できなかったんです。

進路にしても、私が通っていた高校だと9割ぐらい大学への進学を選んでいて。学校の先生から「9割が進学する」っていわれても「なんで私は9割のほうに属することになるんだろう。残り1割がいるのにそっち側じゃないんだろう」と思っていました。

ただ、こういった性格だったので、学校生活がすごく苦手で。協調性もないし、まわりにあわせて生活するのが辛かったですね。落ちこぼれる直前、登校拒否グレーゾーンだったと思います。

― 当時、大学に進学しなかったのも疑問があったから?

あ、いえ...それはちょっとした手違いがあって(笑)。もともと留学する予定で、留学先まで決まっていたんです。「じゃあ来年に向けてバイトしようかな」と面接を受けたら、外資系アパレル企業から合格通知が届きました。「社員として採用するよ」って。はじめは「あれ?バイトじゃないの?」と思ったのですが、せっかくの内定だったので、進路を切り替え、働きはじめて。そこからはいろいろな仕事を渡り歩いていますね。

― 行き当たりばったりだったんですね(笑)ただ、外資系だと英語も多少は必要ですよね。どこで習得されたのでしょう。

英語はできるといえばできるくらいのレベルで...じつはまともに勉強したことも海外に行ったこともないんです。強いて言えば、洋楽がめちゃくちゃ好きだったというくらい。あまり学校に行かず、音楽を聴き込んで、意味を調べたり、発音していたりしたら、少しずつ話せるようになった...のかも?

― 鬱屈した高校時代、部屋にこもって洋楽を聴き込んで英語をマスター。これはカッコいい気がします。

そんな大したものでもないですよ!

― ちなみにどんな音楽を聞いていたんですか?

レッド・ホット・チリ・ペッパーズ...レッチリです(笑)

経験もせずに「大学に行く意味はない」と言うのは、カッコ悪いから。

― 20代後半になり、なぜわざわざ大学に進学されたのでしょうか?

働いていると「高卒なのにすごいね」ってよく言われるんです。それが悔しいというか、残念な気持ちになるというか。その枕詞がイヤだと思ったのがきっかけです。

どうしても、まだまだ日本には学歴重視の価値観があります。もともと、学歴とその人の価値、発揮できる能力は関係がないと思っていました。「大学なんて行っても意味ないよ」「どんどんやりたいことをやったもん勝ちだよ」って。

ただ、なにも経験をしたことのない人が「アレは良くない」「意味がない」というのは、すごくカッコ悪い。自分が体験していないのに、無責任に何かを批判したくない。だったら自分が大学に行ってみて、そこで体験したこと、経験したことを話せる人間になろうと思ったんです。

そして...実際に大学に行ってみたらすごくおもしろい(笑)意味あるよ!って思いました。最近は大学の勉強ばかり。知りもせずに批判したりしているだけでは知ることのできない世界でした。

― ちなみに専攻は?

建築ですね。コミュニティマネジメントやイベント運営に携わるなかで「場」そのものにもすごく興味が湧いてきて。どのような「場」が、人々の生活やコミュニケーション、共同体に影響していくか。勉強していてすごく楽しいです。いまは建築士の資格も取得したいと考えています。

肩書きも、どの会社で働くかも、こだわらない生き方へ

― 大学に通いつつ、Impact Hub Tokyoでのお仕事、NPOのプロボノ、イベント企画のコンサル...現在もパラレルで活動していると伺いました。何を軸に、チャレンジすることを決めているのでしょうか。

本当はカッコいい答えがあったほうがいいのかもしれませんが、私は「直感型」なんですよね。「あ、これはおもしろそうだ」と思ったらとりあえず飛び込んでみる。気になったらメールやMessengerでコンタクトをとってみる。

― 「自分にできそうかどうか」「スキルはマッチするか」といったことは考えない?

考えません。やろうと決めて、そのあとに「どうすればやれるか」を考える。良いことなのか、悪いことかわかりませんが、今まで「とりあえずやってみよう」と飛び込んで、できなかったことはほとんどありません。

もちろんまわりから「あなたはこれが苦手だよね」と言われたら、「あ、これができないことなんだ」と認識します。ただ、自分自身だと「私にはできることしかない」と思っているのかもしれません(笑)

じつは、出版社で働きながらWeb版の『Forbes』の立ち上げに携わったときも同じで。アシスタントだったのですが、実作業をしていたのは私と上司の2名だけ。

私はWebの知識も、画像加工ソフトの知識もほとんどなくて。どっちかという疎いほうでした。ただ、ググりながらPhotoshopをさわったり、勉強しながら記事を書いて入稿したり。もう何でもやりました。人間ってやるしかない状況だと、何でもできます(笑)どんな仕事にしても「教えられていなくてもとにかくやりきる」というのは私の強みかもしれません。

― とても不思議なのは、子どもの頃、集団生活がニガテだった上田さんが、こうしてパラレルで働き、たくさんの人とやり取りしながら活躍していることです。

「仕事だからできる」という部分もあるのかもしれません。じつは"自分"が達成したいと思えることしかやっていない。そのゴールを達成したら、また別のことを始める。そんな風に働いてきたら、いつしか何足ものわらじを履くようになっていました。

職歴だけを見ると「長続きしていない」と見えるかもしれません。ただ、私のなかでは区切りがちゃんとあって。ひとつの区切りがついたら次のフィールドに進むというイメージなんです。

― 仕事を「プロジェクト」と捉えているというか。

近しいかもしれません。私はどんどん新しいことにチャレンジしたい。だから好きなこと、やりたいことにコミットし、きちんと成果でお返ししていく。ミッションを達成したら、次のプロジェクトに行く。人間関係も良いカタチで持続することで、また次の仕事へ。こういった働き方が私には合っているかもしれませんね。

人生で実現できることには限りがある。次世代にバトンを渡したい。

― これからの時代の仕事観としても、すごく参考になりました。最後にこれからの目標について教えてください。

まずは大学をちゃんと卒業することですね(笑)あとは子育てをしたいと思っています。もし仮に結婚せず、自分に子どもができなくても、特別養子縁組を考えていて。社会の一員として「人を成人まで育てたい」という思いを持っています。

というのも、私にはなかなか社会に馴染めなかった学生時代の過去があります。でも、ちゃんと仕事ができているし、すごく幸せなんですよね。たぶん日本じゃなかったら生きることはできませんでした。

課題は多くありますが、社会保障がちゃんとしていたから今こうしていられるし、安全な日本に生まれてありがたかったという気持ちがある。その恩返しをちゃんとしたいな、と。

仕事や人生を通じた自己実現って大事ですが、自分の人生だけで実現できることには限りがあります。たとえば、おじいちゃんやおばあちゃんの代も、その前も、いろんな人たちの「人生をこう生きたい」があったなか、次の世代へのバトンをつないで、私を産み、育ててくれた。

あまり自分の人生に期待しないと言ったら「頑張らない」と言っているみたいですが(笑)そうではなく、この先の時代を生きる人たちが楽しくやってほしい。そこにつながるよう、今できることを精一杯やっていきたいですね。

― 「自分の好奇心に従う」ことと、「次の世代にバトンをつなぐ」こと、ここが上田さんの原点にあるのかもしれませんね。仕事をどう捉えていくか、何のために働くのか。ステキな話をありがとうございました!これからも応援しています!

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