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「おもしろそう!」を大切に。LINEを企画した稲垣あゆみさんが、最年少執行役員になって思うこと

すっかり身近なコミュニケーションツールのひとつとなったLINE。アプリリリース当初から企画・開発をリードし、33歳の若さで執行役員に就任した稲垣あゆみさんに話を聞いた。
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今では誰もが知る「LINE」、アプリリリース当初から企画・開発をリードしてきたのが稲垣あゆみさんだ。先日33歳という若さで執行役員に就任した彼女。ここに至るまでにはどんな道のりがあったのか?彼女の原点とは?

学生時代に見つけた「社会問題と向き合う」という原点

いま、「あなたの一番身近なコミュニケーションツールは?」と聞かれたら、多くの日本人が電話やメールではなく「LINE」と答えるだろう。その影響力は日本国内だけにはとどまらず、世界で月間2億人以上もが利用するまでに浸透している。

そんな「LINE」における企画・開発をリードしてきたのが稲垣あゆみさんだ。アプリのリリース当初から企画に参加し、今日まで開発チームを牽引してきた。そして先日、LINE社において最年少となる33歳で執行役員に就任した。

これまで彼女はどのような道のりを歩んできたのか?彼女の原点とは?キャリアの選択において大切にしてきたこととは?そんな問いへの答えを伺うべくLINE本社を訪ねた。

彼女へのインタビューを通じて見えてきたのは学生時代の実体験、「社会問題の解決のために行動していきたい」という仕事観、そして人並み外れた行動力だった。

[プロフィール]

稲垣あゆみ(33) LINE株式会社 執行役員 LINE企画室 室長

1982年東京都生まれ。一橋大学社会学部卒業後にベンチャー立ち上げを経て、「バイドゥ」日本法人に入社。2010年5月、ネイバージャパン(後のNHN Japan、現LINE)に入社。写真共有SNS・コミュニティサービスの企画に携わった後、新サービスの開発チームに参加。3.11の震災をきっかけに「メッセージの重要性」に着目し、2011年6月「LINE」リリース。現在に至るまでプロジェクト全体のディレクションを担当。「LINE Creators Market」「LINEバイト」などの企画にも携わる。

ソーシャルセクター、そして、ITベンチャーとの出会い

― 本日は稲垣さんが「LINE最年少執行役員になるまで」というテーマでお話を伺いたいと考えています。まずどのような学生時代を過ごされたのでしょう。

じつは、高校生の時から「ベンチャーで働く」ということを考えていたんですよね。もともと経営や組織論に興味があり、実践型インターンシップ、社会起業・起業支援をしているETICというNPO法人を訪ねて「ベンチャーで働きたい」と直談判したこともありました。

でも、「大学生になってからでも遅くない」と断られちゃって。その代表さんには未だに「この子はね、高校生のときに働かせてくれって言ってきたんだよ」って言われていて(笑)もう33歳の大人になっちゃいましたけど...いい思い出ですね。

進学後は、人生をどう切り開いていけるかは、大学時代の過ごし方次第だと思っていたので、そのNPOで紹介してもらったITベンチャーのほか、個人でも飲食やPR会社、人材会社など...いろいろなところでインターンを経験して、結果的に9社くらいになっていました。

― すごい行動力ですね。しかも、今ほど「インターン」や「ベンチャー」という選択肢が一般的ではない時代ですよね。

ちょうど2000年代の前半、ITバブルが弾けたすぐ後ですね。

当時、ベンチャーにしても「儲けて成功者になる」という価値観だけでなく、社会起業家やソーシャルセクターが社会にどうインパクトを与えていくか、より注目されるようになった時期でした。だから「就職活動のためのインターン」というより、自分がこれから社会で生きていくにあたってどんなテーマに取り組んでいくか、探すために働くという感覚で。

半年以上かけてソーシャルアントレプレナーを育成するプログラムも手伝っていたのですが、「自分はこのテーマで生きていく」と決めた人たちの強さを感じていたんですよね。意志があれば、周りも巻き込めるし、お金も集まる。いい人材にも出会える。事業モデルがどうとか、マネタイズがどうとかではなく、やりたいと思っていることにどれだけの覚悟があるのか。その事業のために骨を埋める気があるのか。頭でっかちになって、考えているだけじゃ見つからない。

だから「とにかく自分が興味のあることをどんどんやっていこう」と働いてみる、動いてみる、そんな学生時代だったと思います。大学のゼミではNPO論やソーシャルエンタープライズについて学びながらボランティアしたり、長期の休みはITベンチャーでインターンしたり、今より働いていたかもしれませんね(笑)

東アジアという共同体から世界的なブランドを発信したい

― そこからどのようにして自分が進む道を決めていったのでしょうか。

じつは大学を1年間休学して半年間韓国と中国に住んだことがあるんです。その時の経験が今の自分に大きな影響を与えていると思います。

当時、東アジアの社会や歴史、国際情勢に関心があって戦争や侵略の歴史、反日感情...そういった問題に対して日本人として向き合ってみたいと考えていました。報道では「韓国や中国は反日意識の強い国」といったイメージはあったのですが、実際はどうなのか、と。

― 実際、韓国ではどのような活動をしていたんですか?

オルタナティブスクールの寄宿舎で子どもたちと寝食をともにしたり、養護施設や孤児院にボランティアに行ったり。従軍慰安婦の方が集まって住んでいるところでボランティアをしたり...という活動です。いたるところに残っている戦争の史跡を辿っていきました。

特に印象に残っているのは、ハンセン病の患者の方を日本兵が幽閉、虐殺したと言われている韓国南端の施設を訪ねたこと。実際に被害に遭われた方ともお話させていただきました。

正直、日本人なんて顔も見たくない、もしかしたら身の危険さえあるかもしれない、そういった覚悟をしていたのですが、全くそんなことはありませんでした。むしろ「日本人であるあなたが、ここに来てくれたことがとてもうれしい」と言ってくれる方までいた。そこで暮らしている一人ひとりの方と話をして受け取る印象は報道されていることとは異なるものでした。熱い気持ちを持っていて、分かち合う道を模索している方々と韓国、中国で出会うことができたんです。

もちろん私個人の体験なのでそれが全ての側面ではありませんが、日本と韓国・中国の関係が次のステップに進むことを望んでいる方もたくさんいて。だから、私も何とかして日本人の良さも認めてもらいたいし、一緒になって世界を動かしていきたいと思うようになっていったんです。日本も韓国も中国も互いにもっと理解し合えるし、東アジアという共同体から世界的なブランドを発信したい、と。

― そこからバイドゥやNAVERへ...といった経歴につながっていったんですね。ただ、なぜ「Web」や「ベンチャー」だったのでしょうか?

政治や外交といった携わり方もあったかもしれませんが、インターンを経て、インターネットやビジネスが自分の強みだと思うようになっていったからです。同時にずっと「私には何ができるんだろう」と、もがき続けてきたのが20代かもしれませんね。

キャリアに悩むより、「直感」の精度を磨く

― 企画から携わられた「LINE」が大ヒットしたわけですが、学生時代に目指していたことに近づいている感覚はありますか?

社会的に見た時、LINEはビジネスとして求められることのほうが大きいので、すべてが直接的なアウトプットには結びついてはいないかもしれません。ただ、世界中で利用されるサービスに携われていることは学生時代に目指していたことに近いとは思います。

― 実績も残され、執行役員にも就任されて...客観的にみたら単純にすごいな、と。

ありがとうございます。ただ、他人の評価より、自己評価が高くないとぜんぜんハッピーじゃないんですよね(笑)自分で自分を好きだと思えるかどうかのほうが大事というか。自分が自分を信じられるときが、人生一番楽しいから。

もちろん、より大きな影響を及ぼすことのできる場所で自身の思いをカタチにできたので、当時のNAVERに入社したことは間違ってなかったなと。世界で勝負できるものを発信していきたかったし、そういう場所で自分がどれだけやれるのか?ずっと目指してきたところだったので。

― お話を伺いながら、自分で「体験する」「行動する」ことでキャリアの可能性を広げてこられたのかな、という印象を持ちました。

いろいろなところにアンテナを張って、興味を持ったものはとにかくやってみるのはそうかもしれませんね。もちろん、やってみて「あ、違うな」と思うこともたくさんあるんですよね。でもそれだってたぶん失敗じゃない。ある程度、深いところまで取り組まないとわからないこともあると思うので。

― とにかく「選択」や「決断」の回数を多くすることが大事?

はい。直感を信じて、もし上手くいったら突き進んで、仮にダメでもすぐ引き返せばいい。たくさんの経験を積み重ねることでしか、直感の精度みたいなものはあがらないですよね。

直感というか肌感と言ったほうが近いのかも...それってうまく言語化できないじゃないですか。人生でも、もちろんキャリアでも、何かを決断する時、「今、こっちがおもしろそう」っていうザワザワ感を大切にするというか。それで「自己評価」をどれだけ高めていけるかですね。

今も役員になったことがうれしいというより、会社のなかで大きな役割をもらったうえで、プロジェクトのメンバーやチームの仲間たちに対して、どんなアウトプットをできれば自己評価が120点になるのか?常に模索していて。これからもその「自己評価」のハードルを下げることなく、チャレンジしていきたいです。

特に女性の場合、何歳までは仕事を頑張って、何歳で結婚して出産して...って先を考えながら働く方もいるのかもしれませんが、そういうのが全然なくて。

どっちかというと私はキャリアって自分の「前」ではなく、「後ろ」にできるものだと思っています。今を大事にして、振り返った時に「自分はこういうことをやってきた」というのがキャリアだと思うんです。5年後、10年後に自分がやりたいことなんて想像もつかないし、目の前の今を生きていくというのが自分らしいかなって。

― どう会社から評価されるか、市場価値を高めていくか、特に若いウチは目がいきがちですよね。でも、本当に自分で自分を評価できるか、それで満足か。常に厳しく問うことも可能性を広げるヒントかもしれませんね。本日はありがとうございました!

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