今どきの先生には「パズドラ」トークが必須!? 学校のリアルな課題を教師の情報共有で解決する「SENSEI NOTE」

2015年05月21日 00時42分 JST | 更新 2015年09月04日 16時54分 JST
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小中高校の先生が利用する情報共有サービス「SENSEI NOTE」を開発・運営する株式会社LOUPE CEO 浅谷さんへのインタビュー。学校の先生×ITで、起業した理由は? IT導入で声を上げ始めた先生の実情や悩みとは?

教育現場のリアルが、『SEINSEI NOTE』で可視化され始めた

レガシーな異業種に、テクノロジーを使うことでイノベーションをもたらす企業特集。今回は、教育現場の先生向け情報共有サービス「SENSEI NOTE」を開発・運営する株式会社LOUPE代表、浅谷さんへのインタビュー。

ICTを活用した授業や、EdTechなど、子供向けのテクノロジーが話題になる中、これまであまり注目されていなかった教育をする側、先生にフォーカスして支援を行なう「SENSEI NOTE」。その中では今、教育現場にいる先生自らが声を発信しだしていると言う。

「教壇に立つ、一人ひとりの先生をテクノロジーでサポートすることで、複雑に絡んだ日本の教育の課題を根元から把握して、改善につなげる」。そう語る浅谷氏に、お話を伺った。

【プロフィール】

浅谷治希 Haruki Asatani/株式会社LOUPE CEO,Co-founder

1985年、神奈川県生まれ。ベネッセコーポレーションを経て2013年に株式会社LOUPEを設立。学校の先生が活き活きと働く環境の実現を目指し、先生がつながるWebサービス「SENSEI NOTE」を開発・運営。

一人の先生の声によって、サービスコンセプトが生まれた

― まず『SEINSEI NOTE』を立ち上げられたきっかけから伺ってもよいでしょうか。

友人が教師をしていて、その声から生まれたのが『SEINSEI NOTE』ですね。週末の54時間で起業を目指す『Startup Weekend Tokyo』というイベントがあり、そこでコンセプトを発表したのが最初です。

もともとベネッセで働き、ベンチャー企業に転職。そのタイミングで、たまたまその教師をしている友人と再会しました。

仕事の話を聞いていたら、めちゃくちゃ頑張っている一方で悩んでいて。先生って1人で教壇に立つじゃないですか。他の先生の授業を見ることがほぼない。なので、孤独なんですよね。「自分の授業のやりかたで良いのか、もっと良い指導方法があるんじゃないかと相談できず、不安になる」と言うんです。

その話を聞いた時、それまで塊で見ていた「先生」のイメージが、自分の中で急にパーソナライズ化されたというか、先生を1人の人間として見ることができた。自分が学生だった時、先生が不安や悩みを抱えているなんて思ったことすらなかったんですけど、真っ当だと思いましたね。同時に、不安を抱えながらも熱意を持って授業をしている先生が沢山いるんだろうな、その人たちをつなぐサポートできたら面白いぞ、と。そこから「SENSEI NOTE」の、「先生がつながる」というコンセプトを思いつきました。

たまたまその時に『Startup Weekend Tokyo』というハッカソンが今度開催されるから参加してみないか?と友人に誘われて参加を決意しました。「Startup Weekend Tokyo」にコンセプトを持って参加して、そこで出会った仲間と一緒に3日間で一気にビジネスモデルとプロトタイプまで作りあげました。先生がつながり、情報が共有できれば不安も払拭され、より良い教育につながるというモデルが評価されて優勝できて。これは本格的にやるべき意義のある事業だと考え、会社を退職して起業しました。

パズドラで生徒と信頼関係を作る!? 学校のリアル

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― 昨年から正式公開された「SENSEI NOTE」では、先生同士でどんな情報を交換しているのでしょうか?

現在、約1万人の先生が会員になっていて、「こういった時はどうする?」など、リアルな先生同士の情報が活発に交換されています。

最近あった質問を例に出すと、「家庭訪問に行く際、個人情報があるので、住所はネットで打ち込んじゃだめと言われていますが、皆さんはどうされていますか?」というものがありました。その先生はマップの住所に鉛筆で丸をつけて、複数件の経路を考えてとかやっていて、すごく時間がかかって困っていると。

上役であるベテランの先生によっては、そう言う指示がされている学校もあって。学校内は、年功序列がしっかりしていたりするので、上の先生がそう言っちゃうとその通りにしちゃう。でも、「SENSEI NOTE」に書き込むと、「いやいや、住所だけなら個人情報にならないからパソコンに打ち込みなさい」とか、「上役の先生に咎められたら、こう言えば大丈夫」と、他校の先生が返信してくる。

他にも、新学期のクラス替えや席替えの時に役立つ、エクセルシートを共有してくれる先生もいますし、指導以外の膨大な事務処理を効率化するためのツールも含めて共有されています。先生自らのCGMですね。

― すごいですね! 最初から上手くいっていたのでしょうか?

いや、もちろんそんなことはなく。正式オープンまでの試験運用期間は、ほとんど書き込みが起きなかったです。自信を持っていたものの、何故だという想いもあり、多くの先生にお話を伺いに行きました。

協力してくれる先生とのSkype会議や、そこからの紹介で直接会いに行きもしました。先生同士の勉強会があると聞けば参加させてもらったり、中にはご自宅に泊めていただいて、朝まで飲み明かすなんてことも(笑)。現場の先生が今、どんなことに困っているか、どんな情報を共有すると便利か、と徹底的に聞きました。

そこで強く思ったのは、先生を普通の人間として見て、サービスを作らないとだめだということ。と言うのも、教育業界が作っているような先生向けの情報サイトって数多くあるんですけど、先生はこうあるべきとか、運営者側のイメージで作られていることが多くて...。先生という人間を知れば知るほど実情に合ってないと思ったんです。聖人君子のイメージが強いと思うのですが、生徒と信頼関係を構築するために「パズドラやってるんです」なんて先生もいるほどで。

― それは、たしかにイメージできませんね。

そうなんです。授業の前にパスドラトークができるかどうかで、生徒側も話を聞くか決めるそうで(笑)。リアルですよね。他にも廊下をバイクが走るスクールウォーズみたいな学校や、女子生徒は卒業後、就職しか道がない地域の学校とか様々な状況があって、そんな時にどうする?といった情報を教育業界は持っていないし、答えはないんですよね。だからこそ、「SENSEI NOTE」では現場の先生同士の意見交換がしやすい作りになっています。

「日本の教育はダメだ...」と言うより、1人の先生を支援することから変化が始まる

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― 「日本の教育は...」と悲観的な声も多い中、教育の現場に第三者として入り込むことで見えてきた問題点はありますか?

先生と話をしていても、色々な話題が尽きないのですが、教育の世界で問題だと思うのは、「課題の抽出」や「課題の定義」がきちんと議論されない点かもしれません。こういう教育が良い、外国のああいう教育が良いとか意見は出るんですけど、そもそも課題は何かって議論はあまりなくて。

また、その課題は誰にとっての課題かという点もぼやけている。成績上位5%の生徒にとっての課題なのか、勉強をしたくない子達にとっての課題なのかによって、解決の方向性が変わりますよね。有識者や教育界の権威の先生、一般の人たちも皆が自分の立場で意見を言うんですけど、実行するのは現場の先生なわけで。課題が特定されないと、当然、解決策も出てこないので、やり方だけが一人歩きするみたいな状況です。

なので、大多数の現場の先生の声を、僕たちが第三者としてデータを取って、課題の抽出と定義に活用してもらえるようにしていきたいと思っています。

また、先生たちの年齢構成に偏りもあって、30代から40代前半が少ない。45歳以上の先生が今後10年ちょっとで定年を迎えたときに、若い先生ばかりになる可能性があるんです。その時のためにも、「SENSEI NOTE」が先生たちのノウハウを引き継げるものになっていたいですね。

悲観的な声はたしかに多くて、自分のところにも「日本の教育なんてもうだめじゃん」とか、「終わってる先生の支援をしてもしょうがないじゃん」と話をされることもあります。学校で問題があったり、槍玉にあげられやすくて、あまり良いイメージないですよね、先生って。でも、そう思うなら尚更、先生を支援した方が良いと思うんです。自分の子供を預けるなら、良い先生に預けたいじゃないですか。学校教育において、先生の役割は極めて重要なのは変わりません。自分たちは、1人の先生を支援することから、日本の教育の変化は始まると考えています。

― ありがとうございました。学校の先生や教育に関して、イメージが大きく変わりました。「SENSEI NOTE」のさらなる発展をお祈り申し上げます。

[取材・文]手塚伸弥

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