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「一言で語れない人になりたい」科学者、クリエイター、経営者...湯村翼の枠を超える生き方

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エンジャパン
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東大大学院での宇宙研究、東芝でのアプリ開発、フリーランスを経て、合同会社PhysVisを設立――30歳、湯村翼さんの生き方がおもしろい。ユーザー参加型の研究を模索する『ニコニコ学会β』のセッションで座長を務めたり、宇宙ハッカソンを主催したり。科学者?クリエイター?経営者?その枠を超える生き方に迫る!

■ あなたは何者ですか?

もし、「あなたは何者ですか?」と聞かれたら、どう答えるだろう。

会社員やフリーランスかもしれないし、はたまたデザイナーやエンジニアなど職種で答える人がいるかもしれない。「社長」など役職で答える人もいる。

誤解を恐れずに言うと、湯村翼さん(@yumu19)は「何者でもない存在」になろうとしている、そんな気がしてならないのだ。

高校で物理にハマり、ノーベル賞を夢見た湯村さん。...だが、大学2年で「希望した物理学科に進めない」と挫折を経験した。それでも諦めきれず、卒業要件にならない物理学科の授業も全て受講していたそうだ。

その後、東京大学大学院では、JAXA宇宙科学研究所の研究室にてスーパーコンピュータを使って宇宙プラズマを研究。就職した東芝では、ホームネットワーク・スマートグリッド研究に従事し、PC事業部にも異動。Windowsアプリケーションの開発にも携わっていた。

(この時点で既に「どんなキャリアなんだ!?」と思うかもしれないが、更に続く)

『ニコニコ学会β』セッション「研究してみたマッドネス」で湯村さんが発表した光る地球儀

東芝を退職後、AR・位置情報のアプリを開発するKoozytで働きながら、ユーザー参加型の研究を支援する『ニコニコ学会β』の運営委員に。また、各所で開催されるハッカソンや勉強会にも参加。現在は、フリーランスを経て、合同会社PhysVisを立ち上げた。目指すのは「つくりたいものをつくって生きる」ということ。

プロとアマの区別なく、自分なりのモチベーションでつくる。それをWEBで公開する。こういった研究者をニコニコ学会β実行委員長である江渡浩一郎さんは「野生の研究者」と呼ぶ。もしかしたら、それが湯村さんの生き方にぴったりな肩書かもしれない。

全力で20代を駆け抜け、30代をスタートさせた今。彼は未来に何を見据えるのか。新しい生き方=働き方に迫るべく、お話を伺った。

■ 人生は一回だから「ひとつだけ」はもったいない

― 理系で大学院まで進む方はひとつの分野を掘り下げるイメージがあります。ただ、湯村さんは色々なことにチャレンジしていますよね。

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人生一回しかないから、色々なモノをちょっとずつ見たほうが面白いし、人生が終わった時、人の何倍も楽しめたことになるんじゃないか、という気持ちはあるのかもしれません

学生時代のバイトも、コンビニでやったり、ファーストフードでやったり、家庭教師をやったり、いろいろやるのが好きで...競馬場で「馬が走った跡の穴を、次のレースまでに埋める」という仕事もしました(笑)

もちろん一つのことを掘り下げるのは素晴らしいですし、そういった方もすごく尊敬しています。同時にイノベーションは、他の分野との掛け合わせで起こっていく。

研究の世界も、ある分野では普通に使われている実験手法が、他の分野だと全然知られていないということが多いんです。だから、一つのことを深く掘り下げる人がいて、その橋渡しができる人がいて、その共存で成り立つのかもしれません。

就職か研究か?と進路で迷った時は、「"教授"という先の道が決まった研究はあまり面白くないかも」と就職を選びました。一生懸命やったら何でも面白い、そう思っていて。研究と同じくらい頑張れば、仕事も面白いはずだ、と。実際、東芝には3年半、Koozytで2年、色々なことをやらせてもらえてすごく面白かったし、成長できたと思います。

― その面白さを感じながらも、会社で働くことを辞めて、フリーになった理由とは?

『Newton(ニュートン)』という科学雑誌があるんですけど、それを読んだ時に愕然として。学生時代には「自分の研究がどうすれば『Newton』に載るか」って科学者の視点で考えてたのに、就職してからは「何となく読む」普通の読者になっていて。いつの間にか研究の外の人になったなあ...と。これでいいのだろうか?と迷い始めたんです。もちろんそれだけではないのですけど、研究もやりたい!という気持ちが強くなっていったんです。

■「楽しそうな勉強会やコミュニティへの参加」が投資になる

― ただ、本当に自分の好きなこと"だけ"で食べていくのは難しいですよね。

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確かに研究だけで食べていくとなると一般的には厳しいですよね。ただ、一度企業で働いたからこそ思うのは、お金はあんまり指標にならない。生きるために大切ですけど、最低限必要な収入以外、余剰分のお金が減ってでも面白いことがあったらそっちのほうに行きたい。そういう意味で、収入が不安定になることの躊躇いは割と少なかったかもしれません。

― 少し古い価値観かもしれないですが「やりたくないことをやってこそ仕事だ」という人もいますよね。東芝に勤めた3年半も、ある人にとっては「3年半で辞めたのか?何て根性がないんだ!」となるかもしれません。

「若い時の苦労は買ってでも...」みたいな感じでしょうか。たとえば、年配の方が「昔はこうだった」と言ったとしても、その人が生まれる100年前は全然違うわけですよね。みんな家業を継ぐことが当たり前だったかもしれない。「たまたまその人がいた時代はそうだった」というだけなので、あまり気にしなくていいのかもしれないです。

...ただ、「やりたくないことをやってこそ仕事」という意見には同意できないです(笑)。僕は仕事とプライベートってどっちも楽しい方がいいし、そもそも仕事と遊びの区別があまりわかってなくて。あえて区別するなら生活費を稼いでいるかどうかの違いくらいかもしれません。

― ちなみにフリーになってからは、どう収入を得ているのでしょうか?

当初は、iOSアプリの受託開発をしていました。その後、明治大学から声を掛けてもらい、明治大学の総合数理学部先端メディアサイエンス学科で研究の支援をしています。あとは雑誌やWEBで記事を書いたり。ただ、もちろん安定してない部分はあって、まさに今どうビジネスをしっかりとやっていこうか考えているところです。

― そういった仕事はどこから?

アプリ開発は、前職のつながりからですね。明治大学での仕事は『ニコニコ学会β』のつながりからですし、雑誌記事はIT系の勉強会で発表したことがきっかけ。「面白そうだから」と参加していたのですが、結果として凄く良かったと思います。

― 「人脈づくり」が先ではなくて、コミュニティや勉強会への興味が先にある?

ホントにそうですね。興味あるから行くのですが、そうすると同じものを好きな人たちがいて。共感が生まれやすく、その後も関係が続くんです。異業種交流パーティーみたいな会で名刺交換をしても、後で見返した時、顔を全然思い出せないことって多いですよね(笑)

■ 早い段階で、定期的に収入を得るられる術を身につけておく

― 今だと、社外活動だったり、「やりたいこと」で仕事選びをしたり、そういう若い人も増えていますよね。そういった人に、たとえば「20代のウチにこれをやっておくといい」ということはありますか?

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学生時代の話で、今だとバイトなんかするより、もっと有意義な過ごし方があるかもしれないですよね。僕らが大学生の頃ってTwitterとかFacebookがなかったから、勉強会にも全然参加できませんでした。でも、今なら色々な人とつながるチャンスがある。同年代でも違う考えを持っている人がいて、全然違う生活してる人もいて...とにかく色々なモノを見たほうがいいと思います。

あとは学生など時間のある若いうちに「定期的な収入」が得られるようになっておく。その手段を身につけておくと後々すごく自由になるってありますよね。

たとえば、プログラミングだったら、学生時代に人並みにアプリ開発ができるようになっておけば、最悪、就職をしなくても食べいくには困らなかったりします。

もっと理想をいえば、学生のうちに「手を動かさなくても定期的な収入が得られるビジネス」を作っておく。自分が出来なかったので、出来たらよかったなあと思っています。ただ、若いうちに成功してしまうと調子に乗ってしまってダメになってしまうのかな(笑)

― ただ、やりたいことができる自由を手にするために考えておいたほうがいいところですよね。最後に湯村さんが今後やってみたいことについて教えてください。

全部をやろうとすると300年くらい掛かってしまう気がして...その中から優先順位をつけてやっていければと思っています。近い夢だと、南極に行きたいんです。大きな氷にプロジェクションマッピングをやったりして遊んでみたいなあ、と。研究でも、クリエイターでも、アーティストでも、「やったことないことをやるか」「やったことない場所でやるか」「やったことないシチュエーションでやるか」どれかだと思うんです。そういう意味で、誰もやったことのない技術を作り出すのは大変ですけど、「場所」に行くのは比較的簡単なのかもしれません。

― 2014年6月にはご自身でPhysVis(フィズビズ)という合同会社を立ちあげられましたよね。そこではではどんな事業を行うのでしょうか?

デジタル地球儀の貸出や販売を行います。市販品をつくって売ることが目標で、クラウドファンディングを活用する計画も立てていて。ただ、市販品を発売するまでには少し時間がかかりそうなので、オーダーメイド版も並行して事業化します。研究機関のデモや、デジタルサイネージとして活用してもらうことも考えています。

― 研究者でありつつ、ビジネスを考える経営者にもなるイメージですね。というより、もう肩書きにはあまり意味がないのかな、と感じました。

僕自身、研究者とか、エンジニアとか、クリエイターとか、経営者とか、一言で語れない人になりたいという思いがあって。だんだん理想に近づきつつあるのかもしれません。...同時に誰かに「自分が何者か」と説明する時に、すごく面倒になるという弊害はあるかもしれませんね(笑)。

― 「面白そう」に素直になって飛び込んでみる。それが今の湯村さんにつながっているし、枠を決めないからこそ、活躍の場を広げられているのだと感じました。今後も「野生」の活躍に期待しています。本日はありがとうございました!

[取材・文]白石 勝也

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