「仕事と趣味が混ざるのは凄くいいこと」WEB界の釣り部『BURITSU』のかっこいい遊び方

2014年07月21日 21時53分 JST | 更新 2015年09月04日 19時50分 JST
エン・ジャパン 

新企画[My project]では、本業に加えて個人プロジェクトでも活動する人達を紹介する。第一弾はWEBやデザインに携わるクリエイターで結成された釣り部『BURITSU』。本気で釣りを楽しむうちに活動が本格化し、『釣りキチ三平』とのコラボも実現させた。彼らはこの活動の先に何を見据えるのか?

■ 釣り×デザイン

今回からスタートしたCAREERHACKの新連載企画[My project]。本業とは別に、遊びとも仕事ともつかないプロジェクトを運営し、活動する方々を取材。そのプロジェクトの裏側に迫る。

今回は、WEBやデザイン領域に携わるクリエイターで結成された釣り部『BURITSU』(ブリッツ)だ。単なる「釣り好きが集まったグループ」の域を超え、釣りの世界に新しい風をもたらす存在として注目される。

釣り好きなら誰もが知っている有名マンガ『釣りキチ三平』とのコラボを実現し、自分達でデザインしたオリジナルグッズも販売。Facebookいいね数も5000を突破した。釣具メーカーや他サイトとの共同プロジェクトも進行しているそうだ。

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『BURITSU』 Webサイト

釣りにおける「おじさんっぽい」「ダサい」というイメージを払拭し、自分たちで"楽しくてかっこいい釣り"を体現。彼らが目指すのは、"デザインの力で釣りが社会的にポジティブで子供たちが憧れるものに"というところ。

注目すべきは『BURITSU』が本業とは別のプライベートワークからスタートした点だ。もはや「仕事とプライベートは切り分ける」という考えは古いのかもしれない。彼らの[My Project]に取り組む姿勢は「これからの働き方=生き方」を考えるヒントになるはずだ。

[プロフィール]

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北畠 蘭知亜 Lancia kitabatake

1983年生まれ。デザインユニット『PANOPTES』のメンバー。デザイン、プログラミングの両方を駆使するWebクリエイター。小学生の頃に釣りをしていたものの、ほとんど釣れたことがなかった。大人になってから釣り熱が再び高まり、カイブツ石井正信氏と共に『BURITSU』を立ち上げた。

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石井 正信 Masanobu Ishii

1985年生まれ。クリエイティブカンパニー『カイブツ』デザイナー。クライアントワークのみならず、『Web Designing』2013年11月号 特集「僕らが『中村洋基』になるための方法」表紙イラストなどを個人ワークで担当。『BURITSU』の立ち上げメンバーで名付け親。ロゴデザインも担当した。

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齊藤 良博 Yoshihiro Saitoh

エイスタディ代表。中村勇吾氏のデザインスタジオ『tha ltd,』におけるオフィスデザインを手がけたことでも知られる。最近では経産省クールジャパンプロジェクトのミーティングやプレゼンテーションエリア、執務空間のデザインも担当。『BURITSU』ではシーバスなど海釣りをメインで行なう。

■ 釣りをもっとカッコよく

― 『BURITSU』はサイトもカッコいいですし、今までの釣りにはないイメージだと感じました。

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北畠:釣りって「おじさん臭い」とか「ダサい」といったイメージがまだありますよね。それで、もう少しカッコよくできないかな?と「釣り業界にデザインを」というテーマを掲げています。

― 「かっこいい」とか「オシャレ」というイメージが広まれば、釣り人口も増えそうですね。カルチャーとして広めるというか。ただ、なぜ既存の釣り業界だとそれができないのでしょう?

北畠:僕たちはシロウトなので偉そうなことは言えませんが、どの業界も「その中」にいると客観視できない部分はあるのかもしれません。逆に僕らだったらWEBやデザインの世界のことが客観視できていないかもしれない。たとえば、「この技術やデザインは最高だ」と自分たちで思っていても、別業界の人から見たら全然ダメだったり。

齊藤:もちろん全員ではないですけど、「釣り」ってヤンキー文化とも相性が良くて、ファッションにしても、ライフスタイルにしても、そっち系の人が少なからずいたりもします。別にそれが良い悪いという話ではなくて、私たちはデザイナーだから、その「カッコよさ」や「ダサさ」みたいなものって何だろう?「カッコよさ」の先に何があって、ユーザーや業界にどんな影響を与えるんだろう。こういったところまで考えてしまう。どうしてもその業界に浸かっている人だと踏み込めない部分なのかもしれません。

― そのような問題意識があって『BURITSU』を立ち上げようと?

北畠:いえいえ!最初は単純に釣りが大好きというだけで。2年くらい前、石井さんとキャンプに行く機会があり、たまたま、エサ釣りができる場所だったんですよ。そこで、石井さんは釣り用サングラス(※水面の反射を抑える)を一人だけ持ち込んでて「何だこの人、むちゃくちゃやる気だぞ」って。そこから釣りの話をよくするようになりました。

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『BURITSU』を立ち上げた石井さんと北畠さん

石井:キャンプそっちのけで、ずっと釣ってて(笑)

北畠:僕も釣りに興味があったんですけど、それまではあまり釣れたことがなかったんですよ。そうしたら石井さんが「君には成功体験が必要だ」と後日釣りに連れていってくれたんです。それが楽しすぎてどっぷりハマりました。

石井:ランチアさん(北畠)、その日だけで30匹くらい釣れて。童貞にいきなりモテ期が来たみたいな...それで頭がおかしくなっちゃった(笑)

北畠:ホントにそうですよ(笑)。

で、どうせならチームにしようと石井さんにロゴを作ってもらって、僕がWEBサイトをつくって。いやらしい話、釣りの仕事もやってみたかったんです。でも、いきなり仕事は来ないから、まずは自分たちで発信して実績を作ろうといった背景もありました。

■ 仕事にも好影響をもたらす『BURITSU』の活動

― 『BURITSU』の活動でご自身に与えた「よい影響」があれば教えてください。

石井:一番は人とのつながりが生まれたことですね。齊藤さんとも知り合えたし、そこから仕事にもつながって。

北畠:ただのサークルではなく、志があり、目標があるのから、「仲間を集めて、もっと大きくしていきたい」という気になるんですよね。だから、会う人会う人に「僕は釣りが好きなんです」と猛烈にアピールしたり(笑)

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海での釣りをメインとする齊藤さん(左)

今までの人生だと考えられないことで、Facebookでつながって知らない人に直接会うとか絶対に無理だと思っていたんです。「相手に引かれたらどうしよう...」とか色々考えてしまうし。

でも、釣りの話なら初対面でもできる。齊藤さんとも、Facebookでつながって、最初にしたやり取りが「今、ぼく釣具屋にいて」「ホントですか!?」と。

齊藤:そうそう、それで「近々一緒に釣りに行きましょう」となったんですよね。

やって良かったコトという部分だと、何かグッズを作るにしても、ライトなノリで「とりあえずやってみようか」と動き出せるのがいい。この前、スマホケースを作ったんですけど、一人だったら作らないし、ビジネスだと「とりあえずやってみる」は難しい。

仕事と趣味の中間だから、いい加減なものが...いい加減って言っちゃったけど(笑)、何かしら新しいモノが作れる。ダメならダメで「しょうがないか」って思えるし。

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北畠:「自分がクライアントになってみる」という感覚がわかるのかもしれません。「どう広めようか?」「これは誰に頼もうか?」と自分で考えられる。僕の場合、普段の仕事だと受託で案件を引き受けることがほとんどだから、主催者になれる機会は貴重なんです。

たとえば、自腹でAdWordsをつかって広告を打ってみたり。どんなバナーがクリックされやすいか、コンバージョンがどうか。仕事だと「良かったよ」という評判は聞けても、細かいところまでは見れません。作りっぱなしになってしまう。

WEB制作会社だと、最近は自社コンテンツを運営する風潮がありますよね。それに近いことを自分たちでやっている感覚はあるかもしれません。

別にスキルを上げるためにやっているわけじゃないんですけど、結果的にスキルも上がっていて。プログラミングやデザインのスキルもそうですし、何より、プロモーションを考えたり、人と協力してプロジェクトを進めたり、そういった部分はすごく糧になっていると思います。

■ 仕事と趣味が混ざるのはいいコト

― 「仕事」と「趣味」の捉え方は人それぞれですよね。きっちり分けたい人もいますし、仕事が趣味みたいな人もいて。みなさんの場合はどう捉えていますか?

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撮影中、ずっとボートを漕いでくれた"BURITSUのノーバイト君"こと北畠さん。この日もノーバイト(釣果ゼロ)に終わった。(撮影協力:弁慶フィッシングクラブ)

齊藤:仕事と趣味って混ざっている部分もあって、それは僕にとって凄くいいことですね。クリエイティブを仕事にしているからこそかもしれませんが、あらゆる場面で発見があったり、アイデアが閃いたり。机にかじりついている必要はないわけで。また、私がやるのは海釣りなんですけど、潮の満引きにすごく左右される。自然の摂理のなかでの勝負なんです。だから、たとえば「満潮の2時間だけしか釣りができない」と思うと、スイッチの切り替えにもなります。その時間には絶対仕事を終わらせよう!とか(笑)

石井:僕は、仕事にしろ、趣味にしろ、一生懸命だったらいいんじゃないか?と思っている部分はあって。ランチアさんがすごいのは、釣りが好きすぎて...ほぼライフワーク化しているってところ。最初はみんな心配していたんですよ...釣りばっかりしてて仕事は大丈夫か!?って。でも、ここまで来ちゃうと「逆にすごいぞ」みたいな感じになって。本気でやると周りの目も変わってくるんですよね。

北畠:「デザイナーを辞めて、釣り師になったらしい」とか言われて(笑)。ただ、仕事もしないといけないので、ボートにPC持ち込んでメールチェックしたり...僕なりには何とかバランスを取ろうと(笑)

― 趣味が本格的になればなるほど、本業とのバランスって難しくなりますよね。どう維持し続けていくか...。

北畠: そこが一番の問題で、答えが見つかっていないところでもあります。やっぱり睡眠時間を削るとか、何かしら犠牲を払ってる部分はあって。

この前、釣具メーカーさんの商品デザインを少しやらせてもらったんですけど、本気で時間を作らないとできないんですよ。じつは夏場に日焼けを防ぐファッションアイテムのデザインで...誰もやったことがなかった。「え!?どうしようか?」と...。普段やっていることの延長線ならできるけど、初挑戦になると、精神的に辛いところもあって。経験としてはいいけど、期待に応えられるか不安なんですよね。だから、得意分野を持つ仲間ができるとか、準備が整った上で挑戦する...という部分は考えないといけないところですね。

■ ビジョンを掲げ、巻き込んだほうが面白い

― 『BURITSU』を見ていてすごくいいと思うのは、楽しみながらやりつつ、釣り業界や若い人を巻き込んでいるところ。クリエイターのみなさんがやっているからこそ、という気がしました。

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取材当日、見事一投目でブラックバスをGETした"BURITSUのチェアマン"こと石井さん。まさか誰も釣れるとは思っておらず、「うおぉぉ!」と大いに盛り上がった。

石井:本業が広告関連のシゴトだったというのはあるのかもしれませんね。そのノウハウを蓄積しようと実験してみたり、見せ方を考えるのが仕事だったりもするので。自分たちをどう見せるか、どう伸ばしていくか。このあたりは比較的やりやすかった...というか、成り行き的にそうなっちゃった。

北畠:そこまでやったほうが面白いですよね。「釣り業界にデザインを」という問題意識も共通していて、「こうなったらいいな」がある。ビジョンなんていうとおこがましいですが、最終目的があって、小さい目標、大きい目標とあります。それを達成していくために色々な人を巻き込んでいけたらと思っています。

― 「釣りキチ三平」とコラボもしていて驚きました。特設ページで「釣りキチ三平」のオリジナルルアーを販売しているんですよね。

北畠:じつはBURITSUには関西支部もあるのですが、その部員が別件でプロデュースしていたんですよ。その人から「BURITSUでも特設ページを作れないか?」と。そこから原作者である矢口高雄先生や講談社さんにも監修を出させていただいて、特に何も言われることなく、本当に実現してしまった。この前は、矢口高雄先生のお宅にもおじゃまして...

齊藤:そういったコラボにOKが出るのも、サイトがちゃんとしているからですよね。

北畠:いろいろな人が良い意味で勘違いをしてくれているのかも。サイトをがんばってるから「ちゃんとしていそう」って(笑)

― それこそデザインのチカラですよね。

北畠: