ジブチで飲んでしまった「塩味の水道水」

ジブチ? 日本ではあまり知られていない国だと思いますが、近年海賊対処のために自衛隊が拠点をジブチに置いて活動しており、2013年の8月末に、日本の首脳として初めて安倍総理大臣が訪問されたので、ニュースで聞いたことがあるという方もいらっしゃるかもしれません。

この冬は、生まれ故郷の東京近辺も、在住25年以上にもなるニューヨークも大雪に見舞われ、寒さも厳しく被害も大きいようで大変ですね。「ようですね」と他人事のように言う私は、1月下旬からJICA(独立行政法人国際協力機構)のプロジェクトで常夏のジブチという国にいます。現在もっとも涼しい季節ですが、それでも気温は夜になっても22℃以下にはなりませんし、日中は30℃近くまで上がります。

ジブチ?

日本ではあまり知られていない国だと思いますが、近年海賊対処のために自衛隊が拠点をジブチに置いて活動しており、2013年の8月末に、日本の首脳として初めて安倍総理大臣が訪問されたので、ニュースで聞いたことがあるという方もいらっしゃるかもしれません。私はこのプロジェクトに出逢わなかったらほとんど何も知らず、興味を持つ機会もなかったのではないかと思います。一年ほど前、別のプロジェクトでネパールにいた時初めて聞いたのですが、お恥ずかしながら「ジブチという国はどこにあるのですか?」と質問してしまったくらいです。

2012年の秋、JICAのプロジェクトで派遣されるようになって以来、今回で4度目の滞在になります。第1回目、ニューヨークからドバイ経由で乗った飛行機から初めて見たジブチは荒涼としていて何もなく、赤みがかった大地と紅海の青さのコントラストが印象的でした。アフリカ大陸北部で紅海の入り口に位置し、ソマリア、エチオピア、エリトリアに三方を囲まれた国ジブチでの日常生活は、様々な意味で想像を超えるものになっており、日々が驚きと発見で一杯です。

ティーンエイジャーの頃に日本からアメリカに移り住み、その後も外国生活を続け、仕事やプライベートも合わせると50近い国々を訪れて来ましたが、それでも世界は広い!まだまだ未知の民族、言語、伝統、文化、生活環境、習慣、自然、気候、宗教ばかりです。アフリカはエジプトとケニアに続いてジブチが3カ国目ですが、同じアフリカでもまったく違い、今までに出逢ったことのない「日常生活」と「常識」に、日々遭遇しています。

派遣期間は毎回1ヶ月半くらいです。短期間だとアパートを借りることができないのでホテルに滞在しますが、外食ばかりでは健康にも悪いと、いつもキッチンつきのホテルに宿泊して自炊しています。「サバイバルクッキング」と称していますが、その話はまた別の機会に。

まずチェックインして部屋に入り、うがいをした時にアレっと思ったのが、水道水の味。口に含んだ水には明らかに塩分が含まれています。ポル・ポト政権が倒れ、国連軍が派遣された半年後に訪れたカンボジアや、環境問題を取材していたブラジルのアマゾン奥地など数カ国で、ホテルの蛇口から出て来る水が茶色かったことはありましたが、塩味はジブチが初めてでした。

外務省の情報によると、年間の降水量はわずか10〜20センチ。専門家でもありませんし、正式に調べたのではありませんが、首都ジブチでは海水を浄化して水道水にしており、塩分が抜けきっていないのだと思います。水道水は真水と思っていた私の常識はあっさりと覆されてしまったわけです。

ジブチ日本大使館からの情報によると、身体に影響を及ぼす成分も含まれているため、煮沸しても水道水は飲まないようにということなので、私の大切な日課はミネラルウォーターを買いに行くことです。1.5リットルのボトルが約60円。飲料水や料理に使うとすぐになくなりますし、重いので一度に何本も購入できませんから、なかなかの重労働です。キッチンの水の買い置きが1本になると、何となく不安な気持ちになるということは、ジブチに来るまで経験したことがありませんでした。

また1泊100ドル以上のホテルでも、お湯は出ません。いくら常夏だからと言っても、井戸水のように冷たい水ではなくても、毎日水のシャワーだと熱いお湯を浴びたくなります。蛇口をひねればお湯が出るのが当たり前になっている、現代の日本やアメリカで生活していると、お湯が出ないということだけでもちょっと不便を感じてしまいます。また、塩分を含んでいるので、シャンプーや石けんの泡立ちが非常に悪く、髪も肌もパサパサになってしまいます。贅沢は言えませんが、今、日本のお風呂や温泉が無性に恋しいです。

それでも首都ジブチはまだ恵まれている方で、地方に行くと水道がない家が多くあるとも、また清潔な水がないために、病気になる小さい子供たちが多くいるとも聞いています。川も湖(塩湖はありますが)もほとんどないため、特に北部の遊牧民族の生活は非常に厳しいようです。荒野に続く1本道を走っている時、移動する車の中からユニセフの設置した大きな水のタンクを見かけましたが、定期的に水が補給されているのかが、とても気になりました。

ジブチに限ったことではなく、世界には水道普及率が低い国、水の問題を抱えている地域が多いのが現状です。以前、医療関係の国際援助活動をされている方から「病気でも栄養失調でもなく、きれいな水がないために死んで行く赤ちゃんがいる。」と聞いたことがあります。衝撃的でした。「安全な飲み水が手に入らず、腐った水でも飲まなければ生きていけないような過酷な環境下で生活を余儀なくされている人たちが、今現在もいるんだ...。」日々、水のことなどあまり考えずに生活していたことに、その時気づきました。

ユニセフの情報によれば、「...安全な水を十分に得ることができず、単純な下痢性の病気で、毎日4000人、毎年150万人あまりの子どもが命を落としています。中でもサハラ以南のアフリカでは、子どもたちの43%が不衛生な水を飲み、5人にひとりが15歳になる前に亡くなっています。」

人間は水がなければ生きて行けません。先進国にいると、災害時などは別にして、ごく普通の日常生活の中で、水のことを心配することはあまりありませんが、開発途上国では命に関わる問題です。安心して飲める飲料水のありがたさは、様々な国で感じていましたが、ジブチに来て改めて、水の大切さを見直し、考えさせられています。今日も仕事が終わったら、水を買いに行きます。

ジブチに興味がある方は、外務省の各国地域情報をご覧ください。

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