BLOG

蟲愛づるアスペルガー娘は何故ウーパールーパーを飼うのか

2017年07月13日 14時05分 JST

Twitterの突然の仕様変更に伴ってアイコンが知らぬ間に丸形に切り抜かれてしまい、大手公式アカウントでも浅田飴 @seki_koe_nodo ‏や @NHK_PR などの勝ち組と下町の老舗玩具メーカーら被害者の会とに分断されて賑わった今日この頃。

蟲愛づる娘も大好きな昆虫第一位のカマキリをゆるキャラ風にアレンジし、弊アカウントのアイコンをこしらえてくれました。ここぞとばかりに早速変更に踏み切りましたが、いかかででしょうか。

 

娘は何故カマキリ好きになったのか

さて、父親である私の似顔絵としてカマキリをモティーフにするほどカマキリ愛あふれる娘ですが、なぜ数ある昆虫のうちでも特にカマキリ推しなのかというと、甲虫や蝶に比べて形や仕草が人間っぽいからなのだそうです。そんなカマキリの魅力を、蟲愛づる娘の視点から列挙してみると、

------

  1. 頭部を人間のようにキョロキョロ回すことができる。
  2. 胸部が前胸と後胸とに明瞭に分かれており、前胸が人間の首のように細長くなっている。
  3. 前肢のカマがもはや脚ではなく人間の手のようであり、欧州で「祈り虫」と呼ばれるくらい敬虔な信徒の佇まいをしている。
  4. 複眼なのに偽瞳孔があり、人間の単眼のように視線を感じる。
  5. よくなつく。

------

といったところでしょうか。

f:id:insects:20170616231720j:plain

もともと幼児の頃から生き物が好きだった娘ですが、我が家のアパートはペット禁止です。ですが、古いアパートなので無駄に広い敷地には草むらが広がっており、ここで虫取りに興じて図鑑と睨めっこできるという好環境が、娘がここまで虫好きに育った大きな要因になっています。

さらに、海外にまで眼を転じると、カレハカマキリやハナカマキリなど、自然の芸術品としか思えないような擬態を身にまとった種もいます。昨年の秋には滅多にお目に掛かれないハナカマキリの幼虫が昆虫ショップに偶然入荷されており、レジの店員さんに「飼うの難しいですよ」と警告されながらも何回かの脱皮を経て立派に成虫まで育て上げる、という貴重な経験をしていました。

f:id:insects:20170616232447j:plain

 

ペット療法としてのカマキリ

ところで、アスペルガーなど発達障害の子どもには、友だちと話を合わせるのが苦手な反面、話し相手がいない物足りなさを感じているという矛盾、心の葛藤を抱えている場合が多いと聞きます。そのような場合、ペットを飼うのが一つの解決策になるようです。

小児神経科医の宮尾益知博士によれば、ペットは基本的に言葉が通じないものの、話を聞いてくれるように見えて、アスペルガーの子どもにとってはコミュニケーションの不足感を補ってくれるのだそうです。

------

「ペットを飼うとリラックスできる人も」

なかには、人間よりも動物と付き合っているほうが気が楽で、リラックスできるという人がいます。ペットが相手であれば、気をつかわずに話せるのです。

...言葉が通じなくても、ペットに語りかける。不用意な発言があっても、ペットは黙って聞いてくれる。のびのびと話せる。

...「ぬいぐるみを使ってもよい」*1

------

恐らく娘も、犬・猫やウサギなどのいわゆる定番のペットを飼ってもらえないという制約のなかで、子どもなりの精一杯の落とし所として、身近な昆虫のなかで最もペットらしい昆虫であるカマキリを愛づるようになっていったのでしょう。

 

まだ低学年だったある夜、川の字に並べた布団で眠ろうとしていると、不登校から復帰したばかりの娘がめずらしく悩みを打ち明けてくれたことがあります。

蟲愛づる娘曰く、

悩みがあるの。

ウチは虫の気持ちはわかるけど、人の気持ちがわからない。

 

もうね、

「......!!!」

ですよ。

 

「逆に、人の気持ちがわからなくても、虫の気持ちがわかるのなら、それも一つの才能じゃないか」などと咄嗟に答えたんだと思いますが、当時の私の理解力をはるかに超越した世界に行ってしまったように感じた娘の言動も、今となっては医学的に説明できそうだと知って大いに納得しています。

ちなみに、当時のカウンセラーさんからオススメされたのが、「カマキリちゃんは今どう思ってるの?」と娘に質問してみること。この時、娘が答えたことが、実は娘の心理だ、という理論があるそうです。

父「このカマキリちゃん、今どう思ってるの?」

娘「だれもほめてくれない......」 

あの理論が正しいとすると、当時の娘は、親からも友だちからも、承認欲求が満たされていなかったのでしょうか。 

 

10代女子としての落とし所

ただし、虫好きの不登校児の最大の弱点として、冬場には虫たちが忽然と姿を消してしまうため、心が分かり合える相手が春まで地上からいなくなってしまうのです。

加えて小学校も高学年ともなると、戸建てやマンションで優雅にペットと暮す友だちが羨ましくもなります。

このところ「ペットが飼えるマンションに引っ越したい」とも口にするようになりました。しかし、かといって、自閉症スペクトラムで家事さえ重労働に感じてしまうママに今さら共働きをお願いするわけにもいかず、当面なんとか今の家計でやりくりするしかないことも、娘自身、重々承知しています。

 

そこで親子でよくよく話し合い、哺乳類は無理としてもせめて脊椎動物で、いわゆるペットのカテゴリーに入らなさそうな動物を考えてみました。大家さん的にはペットとは認められない程度の大きさで、かつペットとしての必須条件である愛くるしさを兼ね備えている動物......

f:id:insects:20170616232854j:plain
そうです、ウーパールーパーです。

70年代生まれ昭和育ちバカそうなヤツは大体友だちのわれわれ世代にとっては、かつてエリマキトカゲ、コスモ星丸と並んで一世風靡セピアしたあのウーパールーパーです。

平野ノラのブレイクよりはるか以前にUFOからやってきたこの両生類が、近年再びマスコットやペットとして注目されていると聞いて検索してみると... 

 

ウーパールーパー 【リューシー】 美個体 - Amazon.co.jp

 

なんとAmazonで売ってます。しかも¥780 + 関東への配送料。恐る恐るポチってみました。

近所のホームセンターで小さめの水槽セットを購入し、準備万端整えて着荷を待っていると、郵便屋さんが「なんかタップンタップンして持ちにくいんですけど」と怪訝そうな顔で配達にきました。発泡スチロールの中には厚手のジッパー付きビニール袋に落ち着いた眼で揺れている稚魚が。

 

事前にiPadや図書館などで入念に飼育法を調べていた娘が、環境の変化にショックを受けないよう慎重に水温を慣らし、水槽に流し込みます。

f:id:insects:20170616232853j:plain

うん、大丈夫。この大きさなら大家さん的にも社会通念上もペットとは言えないだろう。娘も、初めて飼うこのつぶらな瞳の脊椎動物に大喜びでエサを与える毎日で、よほど嬉しかったのかアトリエでもこんな作品を。

f:id:insects:20170616232852j:plain

折しも冬場の引きこもり状態から、少しずつ通級にも通えるようになり、春が来て外出の機会も増えてきた頃。誰も認めてくれなかったカマキリの時代から一転、そこには希望に満ちたウーパールーパーがいました。

 

やがて桜も散り、いよいよ昆虫たちが活動を始め、ライブラリ・スクーリングの合間に思いっきり虫探しを楽しめる季節になりました。相変わらず餌やり水換えなど、ウーパールーパーの世話も忘れてはいません。ただ、少々エサを与えすぎたようで、わずか4ヶ月しか経っていないというのに、

f:id:insects:20170616232855j:plain

もうこの大きさです。昆虫飼育の感覚とはスケールが違い、両生類、思った以上に成長は速く、大家さん的にもペット認定されそうな勢いです。

そんなわけで水槽も早々に買い換えねばならず、ポンプや濾過装置、冷却ファンなど、ウーパールーパー本体の10倍以上の経費が掛かりそうです。しかもメキシコ原産なのに暑さに弱く、夏休み中などどうしたものかと今から思案しています。*2

 

f:id:insects:20170617013811p:plain

 

*1:宮尾益知『女性のアスペルガー症候群講談社(2015)66-77頁。

*2

:

皆さんくれぐれも、ポチる際は計画的にお願いしますね。

(2017年6月17日 AS Loves Insects - 小包中納言物語「蟲愛づる娘は何故ウーパールーパーを飼うのか」より一部加筆して転載)