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ホームエデュケーションは「逃げてもいい」の先の出口戦略になり得るか(前編)

実際に困っている子どもや親が望んでいるのは...

2017年09月05日 11時31分 JST | 更新 2017年09月05日 11時31分 JST
(CC) 2009 Wiiii, File:Diet of Japan Kokkai 2009.jpg - Wikimedia Commons.

蟲愛づる娘の小学校は今年から夏休みが短縮され、8月31日を待たずに二学期が始まりました。ただ、昨年9月1日から起算した不登校生活もめでたく満一周年を迎え、おかげさまで親子共々、もはや何日に学校が始まろうともプレッシャーを感じることはなくなりました。

また今年は世間でも例年と雰囲気が異なり、昨年の鎌倉図書館に続けとばかりに、各所に「逃げてもいい」のメッセージが溢れていました。

www.nhk.or.jp

不登校になった娘を持つ身としても、こうした風潮は歓迎すべきことです。しかし一方で、「外野から"逃げてもいい"と呼びかけるのはいいが、その先の責任は誰が取るのか」という問題提起も散見されます。

至極ごもっともな意見です。我が家でも、とりあえず学校から逃げたあとの数カ月間、娘もママも行き場のない罪悪感で押しつぶされる毎日を過ごしていたので、「逃げた先のこと」の重要性は痛いほどわかります。

実際に困っている子どもや親が望んでいるのは、「逃げてもいい」の先の「出口戦略」なのかもしれません。

その一つのモデルケースとして、我が家は最終的に図書館を拠点にしたホームスクーリングという形態に落ち着きましたので、参考にして頂ければ幸いです。


insects.hateblo.jp

ただ、ここでひとつ気になるのは、「ホームスクール」で検索すると、「法律上は問題の有る行為とみなされている」「日本では法律違反です」などとする意見もヒットしてしまうことです。これもまあ「Yahoo知恵袋」や「発言小町」における素人判断という時点でスルーしてもいいんですが、こうしたサイトがスマホ世代の情報源として一定の影響力をもっている以上、看過するわけにも行きません。

というわけで、「逃げてもいい」と呼びかけた側の「責任」として、ちょっと突っ込んで調べてみました。結論から申し上げると、「ホームスクールは違法なのか?」という問いに対する答えは「場合による」のですが、少なくとも不登校の逃げ場所として始めた場合に限って言えば、違法であるとする根拠は見当たりません

以下、どんな場合に違法になり、どんな場合には合法なるのか、私の調べた範囲の結果をシェアさせて頂きます。

学校教育法

「法律違反」であると主張する側は、多くの場合「学校教育法」を引き合いに出します。条文には何と書いてあるのか、ホームスクールに関連しそうな箇所を実際に見ていきましょう。(強調は著者による)

就学させる義務

 第二章 義務教育

第十六条  保護者(略)、次条に定めるところにより、子に九年の普通教育を受けさせる義務を負う

第十七条 保護者は、子の満六歳に達した日の翌日以後における最初の学年の初めから、満十二歳に達した日の属する学年の終わりまで、これを小学校、義務教育学校の前期課程又は特別支援学校の小学部に就学させる義務を負う。(略)

○2  保護者は、(略:子を中学校)に就学させる義務を負う

まず基本的な前提の確認ですが、義務教育の「義務」とは「保護者の義務」であることが 規定されています。子どもに義務はありません。では保護者がこの義務に従わなければどうなるのか。

第百四十四条 第十七条第一項又は第二項の義務の履行の督促を受けなお履行しない者は、十万円以下の罰金に処する。

罰金刑になります。恐らく「ホームスクールは法律違反」と主張する人はここを根拠にしているのでしょう。

しかし、よく条文を読んでみれば分かるように、これには二段階の条件が付いています。

第一に、就学義務を履行するように督促を受ける場合。第二に、その督促にも応じず、なおも就学義務を果たさない場合。この2つの条件を満たして初めて、処罰の対象になるというのです。

この点に言及せず、「ホームスクールは一律に法令違反」と主張するのであれば、それこそ正確さに欠ける発言だということになります。

義務の猶予又は免除

さらに、この「督促」も、就学させる義務を果たさないからといって、直ちに出されるものではありません。

第十八条 前条第一項又は第二項の規定によつて、保護者が就学させなければならない子(略)で、病弱、発育不完全その他やむを得ない事由のため、就学困難と認められる者の保護者に対しては、市町村の教育委員会は、文部科学大臣の定めるところにより、同条第一項又は第二項の義務を猶予又は免除することができる

発達障害にともなう学校への適応障害や、いじめによる深刻な心的外傷などは、この「病弱、発育不完全その他やむを得ない事由」の典型でしょう。少なくとも不登校の逃げ場所としてホームスクールを選択した場合、就学させる「義務を猶予又は免除」される余地が十分にあります。

参考までに判例データベースで検索してみると、実際に保護者が督促に応じずに学校教育法違反の罪で罰金刑に処せられた事件は、あることはありますが、「満十五歳に満たない少女を中学校に就学させないで、バーの女給として引き渡し、客に酒を酌ましめる等の行為をさせた事例」(福島家裁、昭和34年)など、いずれも不登校からのホームスクールとは無関係な判例でした。*1

(後編に続く)

*1:他に「男女共学反対事件」(最高裁、昭和32年)「小学校入学時から一年三ヶ月余にわたり一日も登校させなかった事件」(岐阜家裁、昭和51年)の判例がある。

(2017年9月4日 AS Loves Insects - 小包中納言物語「ホームスクールは「逃げてもいい」の先の出口戦略になり得るか」より転載)