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「眠り」の大切さ

2015年05月21日 15時48分 JST | 更新 2016年05月18日 18時12分 JST

心身のパフォーマンスを高めるためには、眠ることも大切です。睡眠不足はさまざまな影響をもたらします。「眠り」をおろそかにする怖さとは――。

眠りの役割や意義については実はまだわかっていない部分もあります。しかしヒトという動物が眠りをおろそかにするといろいろと厄介なことが起きてくることが最近わかってきています。

世界24カ国の27大学の大学生17465名の調査では、睡眠時間の短さと自己申告による不健康度とが関連していますし、睡眠時間が6.5-7.5時間より短いと寿命が短縮します。睡眠時間が少ないとインフルエンザワクチンの抗体価の上昇が悪くなりますし、風邪をひきやすくなります。眠らないとひらめきが悪くなりますが、このとき理性をつかさどる前頭前野の働きが低下して、情動に関わる扁桃体の働きが強まることもわかっています。これが睡眠不足ではキレやすくなることの背景にある神経機構ではないかと考えられていますし、寝ないと太ることにも関係している(寝不足では食欲が理性に負けて食べてしまう)とされています。

また寝不足では抑うつ状態も高まります。アルツハイマー病では、脳内にアミロイドベータという異常なたんぱく質が蓄積しますが、アミロイドベータは昼間に増え、寝ている夜間に減るようで、「しっかり眠ることで、アルツハイマー病の進展を遅らせる可能性」も指摘されています。

睡眠不足はさまざまな重大事故も引き起こします。スリーマイル島やチェルノブイリの原発事故は深夜から明け方に起き、アメリカ史上最大の原油流出事故となったアラスカ沖でのタンカー、エクソン・ヴァルディーズ号の座礁オイル漏れ事故、スペースシャトルチャレンジャーの事故も深夜作業中に注意力を欠いたことが原因と考えられています。寝不足は高血圧、狭心症、冠動脈性心疾患、心臓発作、糖尿病、高脂血症のリスクを高めます。

2011年国際誌Sleep Medicineの巻頭には「行動せよ;子どもたちに良き夜間の眠りを与えるために」と題した文章が掲載され、「睡眠不足は小児の健康や活動すべてに悪影響を与え、不注意、注意力低下といった認識能力の低下から、低学力、感情制御の困難、問題行動、精神病理にまで及ぶ。不慮の事故や自動車事故の危険性は増し、循環器や免疫、さまざまな代謝システムにも悪影響をきたし、肥満リスクを高める。肥満はさらに閉塞性睡眠時無呼吸や代謝障害のリスクを高める。」と記載されています。

でもなぜか今の社会では「寝る間を惜しんで仕事をする」ことが素晴らしいこととされています。残念でなりません。ヒトは寝て食べて出して初めて心身の活動のパフォーマンスが高まる昼行性の動物なのです。

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医師プロフィール

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神山 潤(こうやま じゅん) 小児科

公益社団法人地域医療振興協会東京ベイ浦安市川医療センター CEO(管理者) 

昭和56年東京医科歯科大学医学部卒、平成12年同大学大学院助教授(小児科)、平成16年東京北社会保険病院副院長、平成20年同院長、平成21年4月現職。公益社団法人地域医療振興協会理事、日本子ども健康科学会理事、日本小児神経学会評議員、日本睡眠学会理事。主な著書「睡眠の生理と臨床」(診断と治療社)、「子どもの睡眠」(芽ばえ社)、「夜ふかしの脳科学」(中公ラクレ新書)、「ねむりのはなし」(共訳、福音館)、「ねむり学入門」(新曜社)、睡眠関連病態(監修、中山書店)、小児科Wisdom Books子どもの睡眠外来(中山書店)「四快(よんかい)のすすめ」(編、新曜社)、「赤ちゃんにもママにも優しい安眠ガイド」(監修、かんき出版)、「イラストでわかる! 赤ちゃんにもママにも優しい安眠ガイド 」(監修、かんき出版)、「しらべよう!実行しよう!よいすいみん1-3」(監修、岩崎書店、こどもくらぶ編集)等。