音楽の力で認知症が改善する!?

認知症患者に昔好きだった音楽(パーソナル・ソング)を聞いてもらう。突然、スイッチが入ったように曲に合わせて歌い始め、音楽について語り、失われていた記憶を次々と呼び起こす。

認知症の人は日本国内で400万人に上るといわれている。完全に治す薬がまだない中、今後も期待したい認知症ケアの手法がある。

認知症患者に昔好きだった音楽(パーソナル・ソング)を聞いてもらう。突然、スイッチが入ったように曲に合わせて歌い始め、音楽について語り、失われていた記憶を次々と呼び起こす。それは奇跡の瞬間。

IT業界出身のソーシャルワーカーがiPodを使って音楽の力で認知症患者の記憶力を回復させたドキュメンタリー映画「パーソナル・ソング」が昨年アメリカで公開され、サンダンス国際映画祭やミラノ国際映画祭など多くの映画祭で賞を受賞しました。12月からは日本国内でも順次公開されています。

アルツハイマー型をはじめとする認知症において、記憶障害や見当識障害などの症状を回復させる治療法はいまだ発見されていません。今使われている認知症の薬は、進行を遅らせることが目的です。

往診をしていると、認知症患者施設では、常に音楽が鳴りカラオケなどを積極的に取り入れているのを見ます。音楽を使って不安やストレスを軽減し穏やかに暮らせる環境を作ることで、薬を減らせることもあります。

認知症に対する音楽療法は新しい話ではありませんが、映画として社会にインパクトを与え、実際に記憶力が回復することを見せたことで、ケアの在り方を制度から見直すことにつながる可能性もあります。認知症ケアにおける音楽の力に、今後も注目です。

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田上 佑輔(腫瘍外科)

やまと在宅診療所院長。1980年、熊本生まれ。2005年東京大学医学部卒。東大病院腫瘍外科勤務を経て2013年より現職。医療を通じて日本を良くしたい、東京と宮城で在宅診療、地域医療を行う。

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