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地方の救急医療を支える! 日本初の「トリアージ型応急クリニック」

2015年12月13日 01時05分 JST | 更新 2016年12月10日 19時12分 JST

今年11月、三重県松阪市に日本初のトリアージ型応急クリニックが開設されました。行政と連携し、休日・夜間に特化した形で重症度の判別(トリアージ)を行う「いおうじ応急クリニック」の開設に至った背景を、代表の良雪雅先生にお伺いしました。

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―良雪先生はこれまでも松阪市における休日・夜間の医師不足問題に取り組んでこられましたが、今回「いおうじ応急クリニック」を立ち上げることになった経緯を教えてください。

医師不足に悩んでいた松阪市で医師を集める活動を始めたのは、2014年4月です。休日や夜間に市内で1施設しか開かない休日夜間応急診療所への医師の派遣を行ってきましたが、三重県全体が医師不足の状態にあったため県内の医師を確保するのは難しく、県外の先生方を中心にご協力いただいてきました。1年以上活動を続けてきましたが、地域の医師不足は根本的には解決されておらず、むしろ悪化しています。

松阪市は中規模の都市の中で、人口に比べて救急車出動が最も多い都市です。自力で受診できる人にまで対応しているとパンクしてしまうので、市内の総合病院は、休日と夜間については、紹介状のある人と救急車しか受け入れないルールになりました。その結果、少しおなかが痛いとか、風邪をひいたというような軽症の人まで救急車を利用するようになってしまったのです。病院の先生はその対応に追われ、救急隊員からも限界の声が上がっていました。

臨時で県外の医師に協力してもらうだけでは、市の救急医療体制は改善されないと考え、軽症患者を受け入れるために休日と夜間に特化した応急クリニックを開設することにしました。医療現場の疲弊を防ぐために、軽症者が救急車を利用しなくても、自力で受診する体制をつくろうと考えました。

―「いおうじ応急クリニック」が目指しているのは、どのようなことですか?

第一段階の目標は、休日・夜間に急病になった患者さんを拾い上げることです。患者さんをトリアージし大病院や救急隊員の負担を減らすことで、地域の現在以上の医療崩壊を防ぎたいと考えています。

第二段階として、この応急クリニックの仕組みを他の先生も参加できる形にしていきたいと思っています。私たちだけで365日対応するのは難しいのですが、他の先生方と役割分担することで地域住民がどの時間でも救急車を使わずに受診できる仕組みを整えたいと考えています。それぞれの既存の施設で診療できるような役割分担を進めていきたいところです。

第三段階としては、今後5年ぐらいで、この仕組みを他の地域にも広げていくことを想定しています。コンビニ受診が多すぎるために、夜間は救急車の受け入れさえできていない地域も多くあります。そのような地域でも、地域の医師が役割分担をすることで負担を分散できるような仕組みをつくっていただければと思っています。

社会に広めていくべき事業は、皆が真似しやすい仕組みであることが大切です。スーパードクターでなくても、志のある人なら誰でも参入できる仕組みを作り上げていきたいと思います。

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(聞き手 / 左舘梨江)

【プロフィール】 良雪 雅 総合診療医

三重大学卒業後、東京都、山梨県などで一般内科医、総合診療医として勤務。医師不足によって救急体制が崩壊し、一部の休日に一次救急に対応する医師が不在になった三重県松阪市で、山中光茂市長の呼びかけを受け、平成26年4月「一般社団法人 i-oh-j(いおうじ)」を設立、代表理事に就任。若手医師を中心とした26名のチームにより、地域での休日救急体制を確保するとともに、救急車の使い方など市民への啓発活動も行っている。